プールで感染するおそれのある 感染症について
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プールで感染するおそれのある
感染症について
多摩小平保健所
保健対策課 感染症対策係長
平成26年度 小規模プール衛生管理講習会
平成26年7月2日@ルネ小平
感染症成立の3要素
感染源がある
感染源から感染経路を通じて伝播する
感受性のある人(宿主)が存在する
※どの要素が欠けていても感染症は成立しない ※発症すると「炎症」が起きる(発熱、腫れ、痛み)
2
感染経路の種類
1.空気感染
2.飛沫感染
3.接触感染(直接的・間接的)
4.経口感染( 糞口感染)
文部科学省「学校において予防すべき感染症の解説」 厚生労働省「2012年改訂版保育所における感染症対策ガイドライン」
「プール等で公衆に水泳する」時に…
• 肌の露出
• 粘膜の間接的接触
(プール水、共用タオル、ビート板等)
• 集団行動
• 体力の消耗
• 体温差
感染経路が成立しやすい
感染源が宿主と接触する機会が増える
宿主が発症しやすくなる
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標準予防策と感染経路別予防策
方法 背景にある考え方 対象 内容
標準予防策 汗を除くすべての体液、血液、分泌物、排泄物は感染の危険性がある
すべての患者 手洗い、生体物質に対する手袋、マスク、エプロンなどの着用、針刺し防止
感染経路別予防策
感染対策の基本は感染経路の遮断である
各種病原体の感染者及び保菌者
空気感染予防策、飛沫感染予防策、接触感染予防策のいずれかを上記に加える
「東京都感染症マニュアル2009」
手指衛生
感染性があるもの(血液・体液、分泌物、排泄物) 粘膜や傷がある皮膚などに接触したら、 必ず以下の①②いずれかの手指衛生を行う。
①目に見える汚れがある場合は、石鹸あるいは手指洗浄消毒薬と流水でていねいに手洗いを行う。
②目に見える汚れがない場合は、速乾性アルコール手指消毒薬を十分に手に擦り込む。
「東京都感染症マニュアル2009」
標準予防策
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• プール水は塩素消毒0.4mg/L以上で管理 (水道水は0.1mg/L以上)
• 大腸菌は100ml中に検出されてはならない
• 一般細菌は200 CFU/mℓを超えないこと
• ウイルスに関しては明確な基準はない
• (加温装置で温水利用)
レジオネラ属菌は検出されないこと
プールの水の基準
東京都福祉保健局「プールの安全・衛生の管理」平成20年5月
「プール等取締条例」
• 日常の施設・設備の維持管理
• 適正な塩素剤等による消毒
• 伝染性疾患にかかっている者を入場させない
• 利用者に対して水泳前後の適正な手洗い,うがい、洗眼、その他身体の洗浄を徹底させる
• 日常の健康観察
東京都福祉保健局「プールの安全・衛生の管理」平成20年5月
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「伝染性疾患にかかっている者」?
• 感染性があると診断されている人
• 症状のある人
(発熱・下痢・発疹・咳・鼻水など)
→「感染拡大防止」だけでなく,本人の体調にも配慮するという観点で説明し, プールを自粛してもらう
• 潜伏期間中の人
→完全な対策は難しい
(参考)学校において予防すべき感染症の考え方
感染症の拡大を防ぐためには、患者は、
・他人に容易に感染させる状態の期間は集団の場を避けるようにすること
・健康が回復するまで治療や休養の時間を確保すること
文部科学省「学校において予防すべき感染症の解説」
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プールで感染するおそれのある
「伝染性疾患」
感染症法の類型 一類感染症
出血熱類, ペスト, マールブルグ病, ラッサ熱他
二類感染症
結核,ポリオ, ジフテリア, SARS, 鳥インフルエンザ(H5N1)
三類感染症
コレラ, 細菌性赤痢, 腸管出血性大腸菌感染症 , 腸チフス他
四類感染症(人から人への伝染はない)
黄熱, 狂犬病, つつが虫病, 日本脳炎 ボツリヌス症, マラリア, レジオネラ症 他
五類感染症(国が感染症発生動向調査)
麻疹, 風疹, ウイルス性肝炎, クリプトスポリジウム症, HIV/AIDS, 梅毒, 破傷風, MRSA他
「東京都感染症マニュアル2009」
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学校保健安全法上の種別
第一種 感染症法の一類・二類(結核以外)
第二種 飛沫感染、児童生徒のり患が多い、
学校で流行を広げる可能性が高い
咽頭結膜熱(プール熱)
第三種 学校で流行を広げる可能性がある
腸管出血性大腸菌感染症, 流行性角結膜炎,
急性出血性結膜炎, その他の感染症
[手足口病, ヘルパンギーナ, 伝染性膿痂疹(とびひ),
伝染性軟属腫(水いぼ),アタマジラミ etc.]
「東京都感染症マニュアル2009」
病原体 アデノウィルス(主に3型)
感染経路 飛沫感染、接触感染
潜伏期 2~14日
主症状 咽頭炎(のどの腫れと痛み、リンパ節の腫れ)
結膜炎(目の充血、痛み、目やに)
高熱(39-40℃、変動あり、4-5日間)
学校保健安全法 第2種
「出席停止」主要症状が消退した後2日を経過するまで
咽頭結膜熱(プール熱)
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病原体 アデノウィルス(8型、19型、37型etc.)
感染経路 飛沫感染、接触感染
潜伏期 2~14日
主症状 角膜と結膜の炎症。まぶたの腫れ、目やに、流涙
完治まで2-3週間
学校保健安全法 第3種
「出席停止」医師において感染のおそれがないと認められるまで
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流行性角結膜炎(はやり目)
病原体 エンテロウィルス、 コクサッキーウイルス
感染経路 飛沫感染、接触感染
潜伏期 1~3日
主症状 急性の結膜炎、出血。まぶたの腫脹、流涙、目やに
学校保健安全法 第3種
「出席停止」医師において感染のおそれがないと認められるまで
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急性出血性結膜炎
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咽頭結膜熱のうつり方 プールに行かない人もうつる「プール熱」
咽頭結膜熱にかかった人
アデノウィルス
(かかった人ののど、目に潜む。便の中にもいる)
せきや目をこすった手で触れたり、トイレのあと手を洗わない
うつる 〔症状が出ない潜伏期5~7日〕
症状が出る=発症
プール利用にあたり、
感染拡大を予防するためには?
1. 残留塩素を保持すること
2. 以下を周知すること
- 発症しているものはプールに入らない
- 水泳直後のうがい・手洗い・シャワー
(目の病気では洗眼も有効)
- タオルなど(目の病気では目薬も注意)
を他人と共有しない
- 更衣室の清潔と乾燥
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出席停止について
(学校保健安全法)
第一種 治癒するまで
第二種 咽頭結膜熱:症状の消退後2日を経過
第三種 病状により, 学校医その他の医師に
おいて伝染のおそれがないと認めるまで
「東京都感染症マニュアル2009」
出席停止の期間の考え方
○感染様式と疾患の特性を考慮し、感染が成立しやすい程度に病原体が排泄されている期間を基準としている。
○微量の病原体が存在していても、他人に感染するおそれがない程度であれば、出席停止の措置を講じる必要はない。
○便中に病原体が排泄される疾患では、手洗いの励行やプール前後のシャワーの使用などにより、他人への感染のおそれは低くなるので、出席は可能。
「東京都感染症マニュアル2009」
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保育園における感染症の届出
医師の意見書が望ましい感染症
麻疹,インフルエンザ,風疹,
水痘,流行性耳下腺炎,結核,
百日咳,髄膜炎菌性髄膜炎
咽頭結膜熱,流行性角結膜炎,急性出血性結膜炎,
腸管出血性大腸菌感染症
保護者の届出が望ましい感染症
溶連菌感染症,マイコプラズマ肺炎, 伝染性紅斑,ウイルス性胃腸炎,手足口病,
ヘルパンギーナ,RSウイルス感染症,帯状疱疹,突発性発疹
厚生労働省「2012年改訂版保育所における感染症対策ガイドライン」
特に届出を必要としない
伝染性軟属腫,伝染性膿痂疹,アタマジラミ
病原体 コクサッキーウィルス、エンテロウイルス
感染経路 飛沫感染、接触感染、経口(糞口)感染
潜伏期 3~6日
主症状 手、足、臀部に痛みを伴う水泡。高熱はまれ
学校保健安全法 第3種
「出席停止」医師において感染のおそれがないと認められるまで
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手足口病
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病原体 コクサッキーウィルス
感染経路 飛沫感染、接触感染、経口(糞口)感染 潜伏期 3~6日 主症状 突然の高熱(39℃以上)、咽頭痛、 口腔の奥に小水疱疹→破れて潰瘍に。不機嫌。
学校保健安全法 第3種
「出席停止」医師において感染のおそれがないと認められるまで
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ヘルパンギーナ
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腸管出血性大腸菌感染症(O157,O26,O111等)
病原体 腸管出血性大腸菌(ベロ毒素を産生)
感染経路 経口感染
潜伏期 10時間~6日
主症状 初期は、かぜ様症状
激しい腹痛と下痢(水様性→血便)
予防 症状を有する人をプールに入れない
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平成25年度 小規模プール講習会 アンケート結果より
プール遊びを制限する疾病などはありますか (複数回答 n=81)
10088.9 86.4
29.6 34.6
0
20
40
60
80
100
発熱 下痢 とびひ 水いぼ アタマ
ジラミ
(%)
病原体 黄色ブドウ球菌
感染経路 接触感染
潜伏期間 1-数日
主症状 1-2mmの水疱が1-2
日後に指頭大に増大
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伝染性膿痂疹(とびひ)
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の見解
滲出液、水疱内容などで次々にうつる。プールの水ではうつらないが、触れることで症状を悪化させたり、ほかの人にうつす恐れがある。
→プールや水泳は治るまで禁止。
日本小児皮膚科学会ホームページ「皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解」平成25年5月
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病原体 ポックスウィルス
感染経路 接触感染
潜伏期 2週間以上?
主症状 光沢のある1-10mmの丘疹
皮膚に中央部にくぼみ
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伝染性軟属腫(みずいぼ)
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の見解
プールの水ではうつらないので、プールに入っても構わない。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを介してうつることがあるので、これらの共用は避ける。プール後はシャワーで肌を洗う。
日本小児皮膚科学会ホームページ「皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解」平成25年5月
アタマジラミ
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の見解
アタマジラミが感染しても、治療を始めればプールに入って構わない。タオル、ヘアブラシ、水泳帽などの貸し借りはやめる。
日本小児皮膚科学会ホームページ「皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解」平成25年5月
病原体 アタマジラミ
感染経路 接触感染
主症状 頭皮のかゆみ
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アタマジラミはプールの中で広がる? Do head lice spread in swimming pools?
(D Canyon. International Journal of Dermatology 2007, 46, 1211-1213)
オーストラリアの研究。
1. 各25℃のイオン交換水、海水、食塩水、塩素水(0.2,2,5mg/L)中で、頭髪にしがみついた状態のアタマジラミを20分間×10回観察。
→どの水中でも、アタマジラミは頭髪に強くしがみついたまま、全く動かない状態だった。
2. 元々アタマジラミのいる子ども4名(年齢5-19歳)を選び、一旦全ての成虫を除去して、改めて成虫10匹を頭皮に戻し、30分間プールで泳いでもらう。お互いは触れ合わないように、また通常やるように髪の毛を触ってもらう。3セット実施。
→実験後も全てのアタマジラミが頭皮に残っていた。
とはいえ,状況に応じた判断を・・・
• 疾患に関わらず、
–症状がある(体調が悪い, おなかの調子が悪い, 鼻水や咳, 熱っぽい, など)
–皮膚病変の範囲が広い, 出血・化膿している
などはプールを避ける。
• 子ども個々人の経過に応じた, 主治医の判断は重要。
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その他の対策
• 感染症の情報を定期的に把握しておく
• 平常時より、対象者の健康づくりに配慮する
日常生活で心がけてもらうこと
バランスのよい食事
体調を整える適度な運動
十分な休養・睡眠
感染症の情報を定期的に確認しましょう
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参考文献
• 文部科学省,学校において予防すべき感染症の解説, 平成25年3月
• 厚生労働省, 2012年改訂版保育所における感染症対策ガイドライン, 平成24年11月
• 東京都福祉保健局, 東京都感染症マニュアル2009,平成21年3月
• 東京都福祉保健局, プールの安全・衛生の管理,
平成20年5月