がん臨床試験のエンドポンント(大橋靖雄) 第21回 … follow-up : 3 yrs 3-year...

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がん臨床試験のエンドポンント (大橋靖雄) 第21回がん臨床試験セミナー 使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 1 がん臨床試験のエンドポイント 特徴的なエンドポイント解説 (財)パブリックヘルスリサーチセンター乳がん臨床研究支援事業 CSPOR-BC)運営委員長 スタットコム(株)取締役会長 NPO日本臨床研究支援ユニット理事長 NPO日本メディカルライター協会理事長 東京大学医学系研究科 生物統計学/疫学・予防保健学 (社)日本臨床研究会代表理事 大橋靖雄 2010AUG07 CSPOR CRCセミナー はじめに エンドポイント? 評価のための変数(通常は有効性) 必ずしも「時点」を意味しない CSPOR-BCの初めての術後補助療法(adjuvant)試験 NSAS-BC02プライマリエンドポイントはDFSDisease Free Survival問1 心筋梗塞による死亡はどう扱われますか? イベント? 打ち切り? 問2 起点はどこですか? 治療開始日? 手術日? 登録割り付け日? それでは交通事故は? 内容 エンドポイントの要件 抗がん剤承認に用いられてきたエンドポイント Time-to-… 代替エンドポイント さらに・・・QALY 臨床研究(試験)のエンドポイント に求められる性質 妥当性 Validity 信頼性 Reliability 再現性 Reproducibility 評価者内信頼性 Intra-rater reliability 評価者間信頼性 Inter-rater reliability 感度 Sensitivity 実施可能性 Feasibility 前立腺肥大の判定スケール IPSS κ=0.08 κ=0.54 吉村,新美 . 日本泌尿器科学会誌 1997;88:1013-20. 前立腺肥大の判定スケール IPSS問2

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がん臨床試験のエンドポンント (大橋靖雄) 第21回がん臨床試験セミナー

使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 1

がん臨床試験のエンドポイント特徴的なエンドポイント解説

(財)パブリックヘルスリサーチセンター乳がん臨床研究支援事業

(CSPOR-BC)運営委員長

スタットコム(株)取締役会長

NPO日本臨床研究支援ユニット理事長

NPO日本メディカルライター協会理事長

東京大学医学系研究科 生物統計学/疫学・予防保健学

(社)日本臨床研究会代表理事

大橋靖雄

2010AUG07CSPOR CRCセミナー はじめに

エンドポイント? 評価のための変数(通常は有効性)

必ずしも「時点」を意味しない

CSPOR-BCの初めての術後補助療法(adjuvant)試験

NSAS-BC02のプライマリエンドポイントはDFS(Disease Free Survival)

問1 心筋梗塞による死亡はどう扱われますか?イベント? 打ち切り?

問2 起点はどこですか?治療開始日? 手術日? 登録割り付け日?

それでは交通事故は?

内容

エンドポイントの要件

抗がん剤承認に用いられてきたエンドポイント

Time-to-…

代替エンドポイント

さらに・・・QALY

臨床研究(試験)のエンドポイントに求められる性質

妥当性 Validity

信頼性 Reliability

再現性 Reproducibility

評価者内信頼性 Intra-rater reliability

評価者間信頼性 Inter-rater reliability

感度 Sensitivity

実施可能性 Feasibility

前立腺肥大の判定スケール IPSS

κ=0.08

κ=0.54

吉村,新美 他. 日本泌尿器科学会誌 1997;88:1013-20.

前立腺肥大の判定スケール IPSS: 問2

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がん臨床試験のエンドポンント (大橋靖雄) 第21回がん臨床試験セミナー

使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 2

前立腺肥大の判定スケール IPSS: 問7

DCCT研究(血糖コントロールと網膜症)

DCCT研究(血糖コントロールと網膜症) 網膜症の判定は信頼できるか?

網膜症の判定は信頼できるか?網膜症の判定は信頼できるか?

Provided by Dr. John Lachin

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がん臨床試験のエンドポンント (大橋靖雄) 第21回がん臨床試験セミナー

使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 3

死亡はvalidなエンドポイントか?

進行がんではOS(Overall Survival)が従来はプライマリエ

ンドポイントであったが・・

後治療の影響

QOLの考慮は?

極端な事例:ALSではソフトなエンドポイント

内容

エンドポイントの要件

抗がん剤承認に用いられてきたエンドポイント

Time-to-…PFSかOSか FDAの 近の承認事例

Bevacizumab(Avastin)の波紋 PFSでは差しかしOSでは差なし

代替エンドポイント

さらに・・・QALY

参考:USA FDA. Guidance for industry clinical trial endpoints for

the approval of cancer drugs and biologics. 2007May

Time-to-event型のエンドポイント

定義 (通常の)定義イベント

進行・再発癌

OS Overall Survival すべての死亡

TTP Time to Progression 初のPD、PDのない死亡はセンサー

PFS Progression Free Survival 初のPDか死亡

TTF Time to Treatment Failure すべての理由による治療打ち切り

補助療法

DFS Disease Free Survival 通常は再発、すべての死亡、2次がん

RFS Recurrence Free Survival 通常は再発、すべての死亡

RFI Recurrence Free Interval 通常は再発、当該のがん死

16

PFS とOS

治験でも研究者主導研究でもPFSが採用される例が増加

FDAがPFSに基づいて 近承認した事例gemcitabine in ovarian cancer

sorafenib in advanced renal cancer

bevacizumab in metastatic breast cancer

rituximab in Non-Hodgkin’s lymphoma

・・・・

Guidance for Industry: Clinical Trial Endpoints for the Approval of Cancer Drugs and Biologics, May 2007

17

Increasing Acceptance of PFS as a Basis for FDA Approval

1995 2000 2005 2010

Erlotinib(NSCLC)Approval based on PFS/TTP

Sorafenib(RCC)

Sunitinib(RCC)

Bevacizumab(RCC)

Gemcitabine(Ovarian)

Docetaxel(NSCLC)

Lapatinib(Breast)

Trastuzumab(Breast)

Ixabepilone(Breast)

Pemetrexed(NSCLC)

Gemcitabine(Pancreatic)

Bevacizumab(CRC)

Irinotecan(CRC)

Oxaliplatin(CRC)

Bevacizumab(Breast)

Approval based on OS

Bortezomib(MM)

Bevacizumab(NSCLC)

17

Everolimus(RCC)

Erlotinib(Pancreatic)

Panitumumab(CRC)

Sorafenib(HCC)

www.cancer.gov/cancertopics/druginfo

Bortezomib(MCL)

18

Trial E21001,2

(n=722)AVADO3

(n=736)

RIBBON-14

Cape cohort(n=615)

RIBBON-14

A/T cohort(n=622)

Placebocontrolled

No Yes Yes Yes

Chemoweekly

PaclitaxelQ3w

DocetaxelCapecitabine

Anthracyclineor Taxane

Dose of Avastin

10mg/kg q2w7.5 or

15mg/kg q3w15mg/kg q3w 15mg/kg q3w

Primary Endpoint

PFS PFS PFS PFS

IRF* review

Retrospective Yes Yes Yes

*IRF:Independent Review Facility

1 Robert Gray et al. J Clin Oncol 2009; 27:4966-4972. 2Kathy Miller et al. N Engl J Med 2007; 357:2666-763 Miles D et al. SABCS2009 abstr#41.

4N. J. Robert et al. ASCO2009 abstr#1005.

Avastin in 1st line setting for MBC

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がん臨床試験のエンドポンント (大橋靖雄) 第21回がん臨床試験セミナー

使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 4

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試験 E21001,2

(n=722)AVADO3

(n=736)

RIBBON-14

Cape cohort(n=615)

RIBBON-14

A/Tcohort(n=622)

arm PaclitaxelPaclitaxel

+BV

Docetaxel+

PL

Docetaxel+

BV*

Cape+

PL

Cape+

BV

A/T+

PL

A/T+ BV

PFS(m)

5.8 11.3 8.2 10.1 5.7 8.6 8.0 9.2

HR0.48

P<0.00010.77

P=0.00610.69

P=0.00020.64

P<0.0001

RR 22% 49% 46% 64% 24% 35% 38% 51%

P<0.0001 P=0.0003 P=0.0097 P=0.0054

OS(m)

25.2 26.7 31.9 30.2 21.2 29.0 23.8 25.2

HR 0.88 1.03 0.85 1.03

*Bevacizumab15mg/kg q3w

1 Robert Gray et al. J Clin Oncol 2009; 27:4966-4972. 2Kathy Miller et al. N Engl J Med 2007; 357:2666-763 Miles D et al. SABCS2009 abstr#41.

4N. J. Robert et al. ASCO2009 abstr#1005.

Avastin in 1st line setting for MBC<Efficacy>

20

ASCO2010 LBA1(卵巣がんに対するGOG研究)

21

ry

peritoneal

cancer

(PPC), o

ry

peritoneal

cancer

(PPC), o

LBA1

22

LBA1

23

LBA1

24

LBA1

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使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 5

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LBA1

26

LBA1:Discussion BevacizumabではPFSとOSの相関低い

27

LBA1:DiscussionそれではPFS(Progresson Free Survival)はreliabileか?

進行・再発の乳癌、卵巣癌、NSCLC、大腸癌*では次第にPFSがプライマリエンドポイントになりつつあるが・・

どこを「時点」とするのか? 検査オーダー日、診断日?

測定間隔はどう設定するか?

測定手段はどこまでを必須とするか? 臨床症状は?

予定していない(患者の訴え等による)検査の扱いは?

主治医判定と中央判定、判定のQCは?

*Yothers JCO 2007; 25: 5153-4. 進行大腸癌に対する薬物療法の目的は治癒、患者負

担の軽減、症状の安定化と進行の抑制であり、単なる生存の延長は二義的な意味しか持たない。よってPFSはOSの代替エンドポイントというより、それ自体で臨床的意義を有するプライマリエンドポイントになりうる。OSの測定は明確かつ信頼性は高いものの、セカンダリー以降の治療の影響を被る。一方、PFSの測定には、画像評価の時期設定と判定など、バイアスや誤差の入りうる余地がOSより大きい。その一方で(同じ時点で比較すれば)情報量は多く、かつセカンダリー以降の治療の影響を受けることはない。今後PFSをプライマリエンドポイントに採用する試験が増えることを予想。

29

PFSに対する感度解析Sensitivity analysisBhattacharya et al. JCO 2009; 27: 5958-64

PFSに曖昧さが伴うことは避けられない

データの取り扱いを何通りかに変更し結論のrobustnessを検討

解析方法についてはプロトコルあるいは解析計画書に規定

PFSに差がないという仮定のもとで判定時期の違いがどう影響

するかシミュレーションを行う

両群を対等に扱う

試験群は保守的に、対照群はliberalに扱う

予定していない判定時期、不完全情報なら遡らせる

臨床情報に基づくPD判定を除く

中央委員会で確認されなかったPD判定を打ち切り扱い

盲検化されていない場合のPFS測定の問題と提案Freidlin et al. JCO 2007; 25: 2122-6

報告バイアス評価を行う医師が患者を試験治療にスイッチしたいと思う気持ちから、画像評価を過大

に行い、対照群でより早くPFSを宣言してしまう(主観による評価バイアス)

試験治療を受けたいと思う患者が対照治療群でより早く症状の進行を医師に報告し、その確認のための画像評価が早めになされてしまい、その結果早めにPFSが報告され

ることもありうる(評価時期のバイアス)。逆に毒性の強い試験治療で来院と画像評価が早めになり、試験治療群で早めにPFSが報告されることも起こりうる

患者脱落attritionバイアス対照治療に割り付けられた患者に、新しい治療を受けたいという希望から脱落が多くなり、

これがバイアスを引き起こす

正式の評価時点を2回に!対照(標準)治療でのメディアンPFSとその2倍

途中でのPD判定はその後の正式な時点で

検出力はすべての時点を用いる方法と比べそれほど低下しない

負担の軽減とバイアスの軽減

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使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 6

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PFSのブラインド下での中央判定は必要か?Dodd et al. JCO 2008; 3791-6

32

PFSのブラインド下での中央判定は必要か?結論

PFSが望ましいエンドポイントである場合、2重盲検試験がバイアス 小化

のための 良の方法

これが不可能な場合、バイアス軽減の一般的な戦略としてはブラインド中央判定を推奨できない

施設での進行判定後の追加画像撮影はinformative censoringの問題を軽減する点で推奨できるが、実装は難しいであろう。BICRを測定バラツキ軽減の手段とすることも考えられるが、informative censoringバイアスとのバ

ランスを考慮すべき

BICRを 終的な解析手法として推奨しないものの、施設判定のバイアスをチェック(audit)する仕組みとしては有効であり、臨床的有効性の観点か

らはぎりぎりの試験結果の信憑性を高めることにはつながる

そもそもPFSをエンドポイントとする臨床試験は、臨床的にも重要な意義の

ある、大きな治療効果を目指すべきである。このような状況下では、本稿で議論したようなバイアスに対し結論は頑健であろう

Informative censoring:ローカルで進行と判断され中央で進行せずとされた例を打ち切り扱いにすると、生存率を上げる方にバイアス

Overall survivalOverall survival(All randomized)

0 1 2 3 4 50

50

100

Ove

rall

surv

iva

l (%

)

529530

518508

390372

207176

5553

(years)No. at risk

S-1Surgery alone

HR = 0.68 [0.52-0.87]p = 0.0024 (stratified log-rank test)

Median follow-up : 3 yrs

3-year OS- S-1 80.5%- Surgery alone 70.1%

Gastrointestinal Cancers Symposium (ASCO-GI), Jan. 19-21, 2007, Orlando, FL

Time-to-event型のエンドポイントを

どう統計的に処理するか?

(累積)生存関数をKaplan-Meier法で推定

稀にハザード(イベント発生率)を直接推定

要約統計量としては*年発生率(非発生率) 5年生存率など

中央値 MST(Median Survival Time)

ハザード比 (2群比較) 比例ハザード性が前提

Kaplan-Meier法:product-limit法

death1 death1 censor1 death1

10 9 8 7 6

1 1×(1-1/10) 1×(1-1/10)×(1-1/9) 1×(1-1/10)×(1-1/9)×(1-1/7)

打ち切りなければ何人生存しているかと同じ

打ち切り

表在性膀胱癌の再発

Hinotsu, Akaza, Ohashiand Kotake(1999), Cancer 86:1818-26

複数モードの再発経尿道手術による播種時間・空間的に独立な発生

術後の抗がん剤注入ではLate-phaseには効果無し

アンソラサイクリン膀胱内注入

観察のみ

カーネル関数で平滑化

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使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 7

FDA承認にみる抗がん剤評価のエンドポイント

(Johnson et al. JCO 21:1404-11, 2003 1990年1月から2002年11月)

近の71適用の、現審査官によるレビュー

日本での申請の遅れと柔軟性の欠如

FDAは生存データを必ずしも要求しない生存時間の延長、QOLの向上、あるいは確立されたエンドポイント

加速承認制度(1992年)

エンドポイントの分類と認可薬剤奏効率RRとTTPDFSTTF

症状緩和と臨床検査値

複合エンドポイント

QOL

腫瘍マーカー

通常承認されたエンドポイントの集計結果

(Johnson et al. JCO 21:1404-11, 2003 1990年1月から2002年11月)

合計 57

生存 18

RR 26

RRのみ 10

RR+がん特異的な症状緩和 9

RR+TTP 7

症状緩和 4

DFS 2

TTP 1

悪性胸水再発予防 2

乳癌予防 2

腎毒性軽減(CCR) 1

口内乾燥症軽減 1

生存・RR以外で通常承認されたエンドポイント

(Johnson et al. JCO 21:1404-11, 2003 1990年1月から2002年11月)

症状緩和: 骨転移症状SRE(ビスホスホン酸3適用Pamidronate,Zoledronate)

ホルモン不応前立腺癌の痛み(Mitoxantrone*)

DFS: CMLに対する幹細胞移植後(Busulfan)

乳癌リンパ節転移陰性の術後補助療法(Tamoxifen)

TTP: 乳癌セカンドライン(Paclitaxel)

悪性胸水再発予防: Bleomycin、Talc*

乳癌予防: ハイリスク者1次予防(Tamoxifen*)、DCIS後の予防(Tamoxifen)

CDDP腎毒性軽減、放射線療法口内乾燥症軽減:Amifostine*

より患者の立場にたったエンドポイント、柔軟な態度

Time-to-event型のエンドポイント

実は・・・

進行癌ではOSからPFS、補助療法ではDFSが標準では

あるが・・

細かなところでバリエーション

標準化の必要性と提案

新しい問題の発生

乳癌補助療法Hudis et al. JCO 2007; 25: 2127-32

試験による定義の違い、とくにDCIS、対側乳癌の扱い

試験間の比較、統合解析はしばしば困難

乳癌補助療法Hudis et al. JCO 2007; 25: 2127-32

専門家パネルによる標準的な定義の提案

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大腸癌補助療法Punt et al. JNCI 2007; 99:998-1003

52 の補助療法試験の論文のレビューOS以外に8個のエンドポイントが採用

定義だけではなく時間の測定開始時点も論文毎に異なる

大腸癌補助療法Punt et al. JNCI 2007; 99:998-1003

専門家パネルのコンセンサスランダム化時点を起点再発と全ての死亡をエンドポイントとするDFSが も情報量が多く

臨床的に意義のあるエンドポイント

進行・再発大腸癌評価の新たな問題Allegra et al. JCO 2007; 25: 3572-5

Time to Failure of Strategy ?

Oxaliplatinの神経毒性に対処するために生ずる一過性進行を薬剤評価時にどう評価するかが問題

大腸癌臨床試験では世界的に著名な研究者パネルによるレビューと提案PFSに替わるTme to Failure of Strategy(TFS) の提案

イベントは、死亡、もともとの治療ストラテジーに含まれていない薬剤の(患者による)投与希望、治療ストラテジーに含まれている薬剤投与中の進行、治療ストラテジーの(一部)中断中の進行で1ヶ月以内に治療ストラテジーが再開されない場合

治療再開によって病勢のコントロールが可能となった場合には、これを進行とみなさないTFSは探索的なエンドポイントであり検証結果によっては将来プライマリエンドポイント?

内容

エンドポイントの要件

抗がん剤承認に用いられてきたエンドポイント

Time-to-…

代替エンドポイントPFSのOSに対する代替性

大腸癌の事例 進行癌ではOSからPFSに、補助療法では3年DFSに

さらに・・・QALY

代替エンドポイント surrogate endpoint

本来のエンドポイントの測定には長期間必要

より早く評価できる、かつ後治療の影響を受けないエンドポイントを

それ自体の意義(QOLを考慮した場合にはOSよりPFS)

代替性をいかに統計的に評価するか*

進行癌ではOSからPFSへ (ただし測定の信頼性とバイアスの問題)

補助療法ではOSから短期時点でのDFSへ(大腸癌そして胃癌?)

前立腺癌のPSA*Buyseらの提案

Burzykowski et al. Evaluation of Surrogate Endpoints, Springer, 2005.

48

Broglio and Berry, JNCI 2009; 101: 1642-9

PFSのOSに対する代替性乳癌ではすでに弱く、そろそろ大腸癌でも弱く

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使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 9

49

CONTEXT AND CAVEATSPrior knowledgeIt is still controversial as to whether progression-free survival (PFS) or overall survival (OS) is the most appropriate endpoint in clinical trials of metastatic cancer.まだまだ議論の余地ありStudy designClinical trials with two arms having respective medians for PFS of 6 and 9 months were simulated. OS was the sum of PFS and survival postprogression (SPP).Probabilities of a benefit in OS were determined for various median SPP, by assuming no treatment related difference in SPP, and for observed P values for PFS. Sample sizes required for various PFS and OS values were determined.進行後の生存(SPP)

PFSのOSに対する代替性Broglio and Berry, JNCI 2009; 101: 1642-9

50

CONTEXT AND CAVEATSContributionOS was a reasonable primary endpoint when median SPP was short but was too high a bar when median SPP was long (eg, longer than 12 months).ImplicationsAs therapies for metastatic cancer improve, SPP would be expected to increase, which may decrease the utility of OS as a clinical endpoint.LimitationsSimulations considered a specific difference in median PFS, accrual rate, and follow-up time. PFS and SPP were assumed to follow exponential distributions. The assumption that there was no difference in SPP may not be correct in a particular circumstance.SPPが短い場合にはOSは妥当なエンドポイント、しかしこれが長くなると(メディアンで12月以上)ハードルが高くなりすぎる進行癌に対する治療が改善するほどSPPは長くなり、エンドポイントとしてのOSの有効性は減少するだろう

PFSのOSに対する代替性Broglio and Berry, JNCI 2009; 101: 1642-9

51

SPP(survival postprogression)=0 median PFS= 2:3 OS=PFS+SPP6months 12months 18months

Ex.1

Ex.2

Ex.3

SPP大ほどOSのKM曲線重なる

52

SPP(survival postprogression)が大きくなると必要サンプルサイズが増加

N=280 (検出力80%)N=350(SPP=2), 2440(SPP=24)

median PFS= 2:3 OS=PFS+SPP

Three Month Change in PSA as a Surrogate Endpoint for Mortality in Advanced

Hormone-Refractory Prostate Cancer: Data From Southwest Oncology Group Study 99-16

Daniel P. Petrylak, M.D.1, Donna Ankerst, Catherine M. Tangen, Dr.PH.2, Maha A. Hussain, M.D.3, Primo N. Lara Jr.,

M.D.4, Jeffrey A. Jones, M.D.5, Mary Ellen Taplin, M.D.6, Patrick A. Burch, M.D.7, Graham F. Greene, M.D.8, Mitchell C.

Benson, M.D.,1

Eric J. Small, M.D.9, Derek Raghavan, M.D., Ph.D,10 E. David Crawford, M.D.11

1Columbia University, New York, NY 2Southwest Oncology Group Statistical Center, Seattle, WA 3University of Michigan Comprehensive Cancer Center, Ann Arbor,

MI 4University of California, Davis, Sacramento, CA 5Baylor College of Medicine, Houston, TX 6University of Massachusetts Medical Center, Worcester, MA

7Mayo Clinic, Rochester, MN 8University of Arkansas for Medical Science, Little Rock, AR 9University of California San Francisco Cancer Center, San Francisco, CA 10Cleveland Clinic Foundation, Cleveland, OH 11University of Colorado Health

Science Center, Denver, CO

Prostate cancer endpoints workshopFDA July 21, 2004 Schema

R

D/E*Docetaxel 60 mg/m2 IV D2 every 21 days

Estramustine 280 mg po TID, D1-5Premedication: Dexamethasone 20 mg PO TID starting evening of D1

M/PMitoxantrone 12 mg/m2 IV every 21 daysPrednisone 5 mg po BID continuously

*Per protocol amendment January 15, 2001: Coumadin 2 mg PO daily + ASA 325 mg PO daily was added

Docetaxel and mitoxantrone doses could be increased to 70 mg/m2 and 14 mg/m2, respectively, if no grade 3 or 4 toxicities were seen in cycle 1

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がん臨床試験のエンドポンント (大橋靖雄) 第21回がん臨床試験セミナー

使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 10

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0 12 24 36 48Months After Registration

D + EM + P

At Risk261268

Deaths162182

Medianin Months

1816

P = .02

Criterion 1a: Survival by Treatment

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0 12 24 36 48Months After Registration

D + EM + P

At Risk261268

Deaths162182

Medianin Months

1816

P = .02

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0 12 24 36 48Months After Registration

no 50% dec50% dec

At Risk291238

Deaths214130

Medianin Months

1421

P < .0001

Criterion 1b: Survival by Surrogate

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0 12 24 36 48Months After Registration

D + E, no 50% decD + E, 50% decM + P, no 50% decM + P, 50% dec

At Risk99

16219276

Deaths7191

14339

Medianin Months

15211421

P < .0001

Criterion 1c: Survival by Treatment and Surrogate

転移性大腸癌1次治療(39試験の文献メタアナリシス)Tang et al. JCO 2007; 25: 4562-8.

ハザード比についてOSを説明変数、PFSを説明変数としたときの回帰係数は0.54(0.34-0.74)、すなわちPFSのリスク減少が20%みられたとき、のOSのリスク減少は11%(7-15%)であり、PFSとOSとの相

関は高い

転移性大腸癌1次治療(10試験の個票メタアナリシスから新しい3試験結果を予測)

Buyse et al. JCO 2007; 25: 5218-24.

OSのハザード比をPFSのハザード比で

予測

対数ハザード比の相関は0.99(0.94-1.00)、二つの影響の強い臨床試験を除いても0.74(0.44-1.00)

PFSについては6ヶ月、OSについては12ヶ月に限定して解析しても相関は0.94(0.87-1.00)と高い

3試験のいずれにおいても予測の信頼

区間の中に実測値が含まれた

6ヶ月時点でのPFSイベント数は全症例数の57%、12ヶ月時点でのOSに対しては52%とほぼ同等

大腸癌補助療法(18試験の個票メタアナリシス)Sargent et al. JCO 2007; 25: 4569-74.

補助療法において3年無再発生存(DFS)が5年生存

の良い代替エンドポイントであることを立証したSargent et al.(JCO 2005)の再解析

18の臨床試験が個票に基づいてメタアナリシスされ(20898患者)、メディアンあるいは 短追跡3年時点のDFSだけではなく、メディアン追跡2年時点のDFSも5年生存のよい代替エンドポイントであること、3年メディアン追跡のDFSと5年OSのハザード比の相関はステージIIIでは0.92(0.85-0.95),ステージIIでは0.70(0.44-0.80)と前者がより強いことも示されている

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がん臨床試験のエンドポンント (大橋靖雄) 第21回がん臨床試験セミナー

使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 11

内容

エンドポイントの要件

抗がん剤承認に用いられてきたエンドポイント

Time-to-…

代替エンドポイント

さらに・・・QALY

AZTのAIDS発症予防効果Volberding, et al. NEJM 1990;322:941-9

Time to clinical AIDS では有意な抑制効果

AZTは患者にとって有益か:QOLからの検討Lenderking, et al. NEJM 1994;330:738-43

しかしQOL考慮すると実薬の有意性は疑わしい

QOL adjusted-life year QALY

QALYによればAZTは必ずしも有益ではない

患者の希望をどう治療選択に反映させるか

66

高騰する抗がん剤費用:誰が誰のために支払うのか?

1年の余命延長を米国550000万人のがん死患者(1年あたり)に一人80万ドルで提供すれば1年に4400億ドル必要

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がん臨床試験のエンドポンント (大橋靖雄) 第21回がん臨床試験セミナー

使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる 12

まとめ

有効性のエンドポイントに望まれる性質

信頼性と妥当性、実施可能性、感度

Time-to-event型のエンドポイント

Kaplan-Meierプロットの見方

進行癌のOSとPFS OSからPFSへの動き、しかし議論は続く

PFSに伴う種々の問題(ホットな問題)

そもそもの定義(臨床症状)

測定時期・間隔の違いによるバイアス

予定しない検査

中央判定は必要か

感度解析の必要性

補助療法のDFS 定義の微妙な違い、プロトコルでの規定

誰のためのエンドポイントか QOLと経済評価