地理的表示の保護 中嶋 0806
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地理的表示保護制度について平成 24 年度農林水産知財対応委員会 副委員長
中嶋 和昭
発表内容
• 地理的表示とは• 農水省の知財政策と地理的表示• 内外の法制度の現状
– 表示規制法– 商標制度– 独自の(登録)保護制度
• 新たな保護制度創設の動き• 弁理士業務との関連
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 2
地理的表示とは
• TRIPs 協定第 22 条 (1)– 地理的表示( Geographical Indications: GI )– ある商品に関し、その確立した品質、社会的
評価その他の特性が当該商品の地理的原産地に主として帰せられる場合において、当該商品が加盟国の領域、又はその領域内の地域若しくは地方を原産地とすることを特定する表示
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 3
地理的表示とは• 製品の原産地を表示すると同時に、原産地に依
存する製品の特性および原産地と特性との結びつき(製品と土地の間に存在するつながり)を特定– 農林水産品に限定されない
• 「スイスウォッチ」「ボヘミアングラス」• 「鬼怒川温泉」(地域団体商標)
• 市場において価値あるブランド名として機能• 消費者に、出所(地理的原産地)および品質を
知らせる機能を果たすようになっている。 2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 4
表示• 名称 (appellation) のみに限定されない• 文字のみならず、図形、記号等、あるいは
それらの結合を含む広い意味で用いられているものと解される– 地名のみ– 図形のみ– 地名+商品の普通名称– 地名を含まないが特定産地の商品であることが
周知・著名な表示• どのような表示が保護対象となるかは、国、
法制度等により異なる
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地理的表示の例
• 地名のみ– 各種欧州産チーズの名称
• Roquefort, Stilton, Gorgonzola,…
• 地名(旧称、略称)+普通名称– 神戸牛、鹿児島黒酢、鳥取砂丘らっきょう– 八丁味噌、関あじ・関さば
• 地名を含まないもの– しょっつる、いぶりがっこ
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図形を含む地理的表示の例
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
地理的表示:保護の必要性
• 伝統的産品:消費者に好まれることから、他の産地の製品よりも高い価格で販売できるようになる。
• 農山漁村地域の振興や地域ブランド創出の観点から注目されている
• 無関係な第三者によるフリーライド、消費者を欺瞞する不正競争行為、普通名称化→法による保護が必要とされる。
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国際通商と地理的表示• EPA,FTA 等との関連
– 特恵税率の適用を受けるための原産国証明書(表示の保護とは無関係)
– 欧州、米国• 保護制度についての考え方の相違• 協定の相手国に GI 保護制度の「輸出」を図る
• 日本の地名を含む商標の外国での登録• 本国での保護を保護の前提とする国の存在
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商標との異同
• 類似点–識別機能、出所表示機能、品質保証機能を果
たし、財産的価値を有しうる標識• 相違点
– GI の集団的権利としての性格– 地名は商標では保護されない場合が多い – GI :私的独占に適しない、公益性が高い
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農水省の知財政策と GI
• 価格競争を回避し、高付加価値食材としての日本産農林水産品の認知度向上
• 内外の消費者に対し、高い品質、安全性、生産に対するこだわりを伝え、理解してもらう→表示の充実
• 2004 年頃から、原産地表示、地理的表示に関する調査研究を実施
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農水省の知財政策と GI• 「食料・農業・農村基本計画」 (2010.3)
– 決められた産地で生産され、指定された品種、生産方法、生産期間等が適切に管理された農林水産物に対する表示である地理的表示を支える仕組みについて検討
• 「知的財産推進計画2011」– 短期の実施項目:農林水産物・食品に係る地理的表
示の保護制度導入に向けた検討を行い、結論を得る• 「『我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画』に関する取組方針」– 平成23年度中に有識者等による研究会を発足
• 平成 24 年 3月〜 「地理的表示保護制度研究会」 2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 12
経済産業省の GI 関連政策
• 知的財産研究所、 AIPPI 等を通じて、商標制度(団体商標、証明商標)での GI の保護の可能性を検討している
• 知的財産推進計画 2012– 商標の保護対象の拡大に向けた検討の加速
•需要者に提供される商品や役務の品質などを証明する標識を保護するための商標制度の在り方について検討を行う (短期 )
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内外の法制度の現状• 各国における地理的表示の保護態様
– 消費者保護法による規制–不正競争行為やパッシングオフ(詐称通用)
として規制– 商標制度の枠組の中での保護
• 証明商標制度• 団体商標制度
– 商標制度とは別個の登録制度–不正に地理的表示が使用されているものの販
売を承認しない(酒等) 2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 14
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我が国が加盟している条約
• パリ条約• TRIPs 協定• 虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示
の防止に関するマドリッド協定• 原産地名称の保護及び国際登録に関する
リスボン協定(未加盟)
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
パリ条約• 第 10 条 原産地等の虚偽表示の取締
– 産品の原産地又は生産者、製造者、販売人に関し直接又は間接に虚偽の表示が行われた産品:当該表示について法律上の保護を受ける権利が認められている同盟国の水際、国内において差し押さえ、禁輸等の対象となる
– 原産地として偽って表示されている土地等に住所を有する当該産品の生産者、製造者または販売者:自然人であるか法人であるかを問わず利害関係人と認められる。
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パリ条約• 第 10 条の 2 不正競争行為の禁止
– 各同盟国:同盟国民を不正競争から有効に保護–工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は不正競争行為を構成
– 特に禁止される主張、表示、行為• 競争者の営業所,産品又は工業上若しくは商業上
の活動との混同を生じさせるようなすべての行為• 競争者の信用を害するような取引上の虚偽の主張• 産品の性質等について公衆を誤らせるような取引上の表示及び主張
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パリ条約• 第 10 条の 3 商標・商号の不正付着,原
産地等の虚偽表示,不正競争行為を防止するための法律上の措置–上記行為を有効に防止するための適当な法律上の救済手段を他の同盟国の国民に与えることを約束
–利害関係を有する生産者、製造者、販売人を代表する組合又は団体が上記行為を防止するため司法的手段に訴え、行政機関に申立てをすることを可能にする
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
TRIPs 協定: 22 条、 23 条• 下記の行為を禁止するための法的手段を利害関係人に対し確保
• 22 条–公衆を誤認させるような方法で、真正の原産地以外の地域を原産地として表示• ×日本産ハムに「パルマハム」• ○「日本産ハム パルマ風」
– 原産地を真正に示すが、他の領域を原産地と公衆に誤認させる表示• ×大分県宇佐市の製品に「 made in U.S.A. 」
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TRIPs 協定: 22 条、 23 条• 23 条:追加的保護
– ぶどう酒、蒸留酒:公衆の誤認の有無を問わず、真正の地域を表示しない表示を禁止するための手段を確保
–翻訳、「〜 type 」等の表示を伴うものも認めない• ×日本産ボルドー風ワイン
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マドリッド協定– 協定が適用される国又はその中にある場所を原産
国又は原産地として直接又は間接に虚偽の表示が行われた産品:当該国の水際、国内において差し押さえ、禁輸等の対象となる
– 販売地と異なる国を原産国とする産品:真正の原産国を誤認させない限りにおいて販売者の住所、氏名を表記することを妨げない
– 各国裁判所:いかなる表示が、その通有性のため本協定の適用対象外となるかを決定• ぶどう生産物の原産地は当該留保の対象外
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我が国の法制度:表示規制に関するもの
• 原産地誤認惹起行為の規制–不競法2条1項13号– 商品、役務、それらの広告等にその商品の原産
地等について誤認させるような表示をし、またはその表示をした商品を譲渡し等する行為を不正競争行為と規定
• 水際措置– 関税法71条1項– 原産地について偽った表示をされた外国貨物の輸入を禁止
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我が国の法制度:表示規制に関するもの
• 商品の原産国に関する不当表示の禁止–不当景品類及び不当表示防止法4条3号– 商品又は役務の取引に関する事項について一般
消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するものを、商品・役務の取引時に使用することを禁止
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我が国の法制度:表示規制に関するもの
• 商品の原産国に関する不当表示の禁止– 商品の原産国に関する不当な表示( S48 .10 .16 公正取引委員会告示第34号)• 原産国以外の国の国名、地名、国旗、紋章その
他これらに類するものの表示• 原産国以外の国の事業者又はデザイナーの氏名、
名称又は商標の表示• 文字による表示の全部又は主要部分が外国の文
字(国産品)または和文(外国製品)で示されている表示
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我が国の法制度:表示規制に関するもの
• 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律( JAS 法)– 一般消費者の選択に資するため、原産地表示を含
む品質表示基準を制定する( 19 条の 13 )• 生鮮食品品質表示基準(農水省)
– 原産地の表示を義務づけ– 原則:国産品→都道府県名、輸入品→原産国名
• 加工食品品質表示基準(消費者庁)– 輸入品の場合、原産国名表示を義務づけ– 原材料に占める重量が大きいものから少なくとも2つ
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表示規制に関する法制度:補足• 最新の動き
– 消費者庁:食品表示の一元化を検討中• 複数の法規により規定• 所轄官庁も複数• 各法の食品表示に関する規定を一元化した新法
制定の準備中• 検討会:すでに 11回開催
–http://www.caa.go.jp/foods/index12.html• 次期通常国会に法案提出を目指す(新聞報道)
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我が国の法制度
• 商標制度– 農林水産物とその原産地に周知性がある場合に権利を与えて保護• 3条2項、7条の2(地域団体商標)等
– 地名や地名と商品名等の結合に関しては権利保護を与えない• 3 条 1項 3 号、同 6 号、 4 条 1項 16 号、同 17
号等
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我が国の保護制度• 独自の保護制度:酒団法• 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律
– 地理的表示に関する表示基準– 指定を受けた酒類の産地表示をその産地以外に表
示(翻訳、「型」等の表示を伴う場合を含む)することを禁止• 国税庁長官が指定する日本国のぶどう酒、蒸留酒の産地
• WTO 加盟国において当該産地以外のものへの表示が禁止されているぶどう酒、蒸留酒の産地
• 国税庁長官が指定する清酒の産地
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商標制度の枠組みでの保護
• アメリカ等の新大陸諸国– 独自の保護制度制定に消極的– 商標制度、慣習法で十分との立場–ヨーロッパと同一の地名が多い– 名声にあやかろうとしてヨーロッパ等の地名
を商品表示に使用、紛争多発–カリフォルニアワインに「ボルドー」の標記– バドワイザー(チェコの地名 České
Budějovice (ドイツ語: Böhmisch Budweis )にちなんだもの)
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GI 保護における商標制度の課題
• 特定の者が表示を独占的に使用できる知的財産権である– 集団的権利の保護には適しない
• 産品の品質を証明していない– 地域団体商標:基準の有無は審査対象でない
• 基本的に産地名を保護対象にしていない– 識別力がない– 特定の者に独占的な使用を認めるのは適切でな
い• 商標権の自由譲渡可能性• 先願主義2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 30
商標制度の枠組みでの保護
• 普通の商標– 自らの出所標識として自己の商品、サービス
に使用• (地域)団体商標
– 業界団体等が、構成員に使用させる目的で取得
– 地理的表示を含むものに関し、識別力に関する要件を緩和
– 商品等の品質:登録の要件ではない
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証明商標(証明標章)制度
• 証明商標(証明標章)– 商品・サービスの保証(産地、品質等)を行
う団体等が、一定の基準を満たしている当該商品・サービスの出所に対して使用を許可するための商標
–典型例:ウールマーク(日本では通常の商標権として登録)
– 出願時に使用基準の添付が義務づけられ、その内容が公開されるが、内容について審査はされない(アメリカの場合)
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
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証明商標(標章)制度
• 米国の証明商標制度• 商品・役務の地理的出所を示す表示から
なる商標– 原則「主として地理的に記述的」として拒絶
( 1052 条 (e)(2) :15 U.S.C. §1052(e)(2) )
– 団体商標又は証明商標として登録される地域的出所表示はその例外( 1054 条)
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
米国の証明商標制度
• 「証明商標」 (1127 条 )– その所有者以外の者により使用され、又は– その所有者が、所有者以外の者が市場におい
て使用することを許可する真正な意思を有する…もので
– 商品や役務の地域的その他の出所…他の特徴、又は商品・役務に係る作業又は労働が、ある連合体又は団体の構成員によりなされていることを証明するもの
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米国の証明商標制度• 出願手続:下記の書類を提出
– その証明商標が証明する内容を詳細に説明した供述書
– 当該商標の使用許可基準のコピー• 閲覧に供される、審査対象にはならない
– 出願人が当該商標の使用について合法的なコントロールをしていることの主張
– 出願人自身が当該証明商標に係る商品や役務の生産や販売を業としていないことを主張する供述書
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登録が取り消される場合
• 商標の使用に関し出願人がコントロールをしていない、あるいはその権限を有していない
• 出願人自身が、当該証明商標に係る商品・役務の生産・販売を行っている
• 当該証明商標を証明以外の目的で使用• (出願人が)基準や条件を満たしている
第三者の商品・役務について差別的に証明を拒絶
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欧州諸国• 団体商標・証明商標制度による保護
– フランス:団体商標/団体証明商標– ドイツ:団体商標制度– イギリス:証明商標制度– EU :共同体団体商標
• 独自の登録保護制度– フランス: AOC– イタリア: DOC, DOCG– EU : PDO, PGI
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
EU の登録制度
• 農産物及び食品に係る地理的表示及び原産地呼称の保護に関する 2006 年 3月 20日の理事会規則 (EC)No.510/2006
• 目的– 各国の制度の補完(併存)– EU全域における伝統や地域に根ざした特有の食品などの品質認証
–多様な農業生産を奨励– 原産地名称を誤用や盗用から保護し消費者に正しい情報を提供
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 38
保護対象
• 対象産品– EU 設立条約の付属書 I に列挙された人間による
消費を予定している農作物– 本規則の付属書 I に列挙された食品– 本規則の付属書 II に列挙された農産物– ワインビネガー以外のぶどう酒、蒸留酒は適用除外
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 39
保護対象
• 地方、特定の場所、例外的には国の名称で、次に該当する農産物、食品を表現するために使用されているもの– 品質と産地との結びつきの強さ等に応じて、原
産地名称、地理的表示の2つに大別(条件は後述)
• 農産物、食品を表す伝統的な地理的/非地理的表示:上記条件を満たすものは、原産地名称または地理的表示とみなす( 2 条 (2) )
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 40
保護対象• 原産地名称( Designation of Origin )( 2 条
(1)(a) )– 当該の地方、特定の場所又は国を原産地としてい
る– その品質又は特徴が、固有の自然的及び人的要因
を備えた特定の地理的環境に基本的に又は排他的に起因している
– 生産・加工・調整の全てが当該の定義された地理的地域において行われている
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 41
保護対象
• 原産地名称の例外規定( 2 条 (3) )• 産物の原材料がその加工地域より広いか又は
それとは異なる地理的地域から供給されている場合:次のことを条件として、一定の地理的名称を原産地名称として取り扱うものとする。– 原材料の生産地域が定義されている– 原材料に関し特別な生産条件が存在– 上記条件を遵守させるための検査制度が存在– 2004 年 5月 1日より前に原産国において原産
地表示と認められていること2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 42
保護対象• 地理的表示( Geographical Indication )( 2 条(1)(b) )– 当該の地方、特定の場所又は国を原産地としている– 当該の地理的原産地に起因する固有の品質、評判そ
の他の特徴を有している– 生産、加工および調整の少なくとも1つが当該の定義された地理的地域において行われている
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 43
名称についての登録要件• 第 3 条
–既に一般化している名称:登録不可• 生産、販売が最初に行われた場所に関するが EU
において当該産物の普通の名称となっているもの
– 動植物の品種名に抵触し、真の原産地について消費者に誤認を招くおそれがあるもの:登録不可
–既登録名称と全部または一部が同音異義:地域的且つ伝統的慣行および実際の混同のおそれに考慮を払って登録
– 商標との関係:商標の名声・評判、その使用期間の長さに照らして産物の真の識別に関して消費者に誤認を招くおそれがある場合:登録不可
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名称についての登録要件
• 委員会規則 1898/2006–前文 (4) : Only a name that is in use in
commerce or in common language, or which has been used historically to refer to the specific agricultural product or foodstuff, may be registered.
– 当該産物を表示するために使用されていない新規名称は登録不可
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
出願および審査
• 生産者団体による原産地の属する加盟国への登録申請– 生産地域、生産基準等を定めた明細書を添付
• 加盟国による精査(審査)– 要件に適合するものについて、加盟国から EU
委員会に対する書類の提出• EU 委員会による精査
– 申請内容の公開、異議申立• 名称の登録および公報への登載
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明細書の記載事項
• 農産物又は食品の名称• 農産物又は食品についての説明、物理的、化学的、微生物学的又は感覚的に認知することができる主要な特徴
• 地理的地域の定義• 定義された地理的地域を原産地としてい
ることの証拠
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
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明細書の記載事項
• 取得方法(該当する場合はその土地での真正かつ一定不変の方法)の説明
• 次のことを証明する詳細事項– 農産物又は食品の品質又は特徴と地理的環境
との間の関連、又は– 農産物又は食品の特定の品質,評判その他の
特徴と地理的原産地との間の関連
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
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明細書の記載事項
• 明細書の規定の遵守を検証する当局又は機関の名称及び宛先並びにこれらの特定の責務
• 当該の農産物又は食品に係る特定のラベル表示の原則
• EU 又は各国の規定によって定められているその他の要件
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
審査
• 名称– 特定産物を表すために用いられている名称– 新規名称は不可–一般名称でないこと、有名な商標と同一でない
こと– 動物名の品種名と同一でないこと
• 特性:特異な産物であることの説明– できるだけデータで
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審査
• 生産地域– 特別な産物の生産に相応しい特徴を有する地域
であること• 特性と地域との結びつき• 管理体制
–管理計画、頻度– 独立した第三者機関(検査機関)によるチェック
– (公的管理当局による検査機関のチェック)
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 51
登録の効果
• 基準に合致する産品について当該表示の使用が可能– 独占権を付与するのではなく表示の(非独占
的)使用を許諾する点で表示規制型に近い• 取り消されない限り永続的に有効
– 普通名称化することはない• 明細書に合致する産品の生産者
–管理団体のチェックを受けることを条件に誰でも登録名称を使用可能
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 52
登録の効果
• 登録対象外の産品に対する登録名称の使用は禁止:誤認混同(の虞)の有無は問わない– 「 style 」「 type 」等の表記を伴う登録名称や
登録名称の翻訳等の使用も禁止される• 正当な理由および権原を有しない者による
登録名称の使用–正当権利者による権利行使(差止請求および損害賠償請求)+行政当局による取締りの対象となる
– 加盟国の国内法に従う: EU 規則に規定なし2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 53
登録名称・表示に関するマーク• PDO または PGI の表示と共に商品のラベ
ルに表示しなければならない
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2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 55
アジア諸国• インド
–ダージリン茶等の原産地由来の独自産品多数– GI 保護法を 1999 年に制定–鉱工業品を含む全ての商品が対象– 登録簿: 2 つのパート
• 表示の所有者を登録: Aパート• 承認された使用者を登録: Bパート
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 56
アジア諸国
• 中国– 商標法:団体商標および証明商標制度– 地理的表示製品保護規定– 農産物地理的表示管理規則
• 韓国– 農産物品品質管理法– 水産物品品質管理法– 商標法:地理的表示団体商標– 不正競争及び営業秘密の保護に関する法律
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アジア諸国• 東南アジア
–マレーシア: 2000 年に GI の保護制度を創設• 登録制度はあるが、登録は保護の要件ではない
–タイ:以前から、 GI の冒用による出所混同惹起行為は刑事罰の対象→ 2004 年: GI 保護法が発効
–ベトナム: 2010 年に発効した改正知的財産権法では、団体商標、証明商標制度に加え、 GI登録制度併設• 登録制度あり:登録が保護の要件
–ワイン、スピリッツを除き、誤認混同が保護の要件
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 58
EU型 GI 保護制度導入の意義•一種の品質保証の仕組み
– 商標法: 51 条、 53 条の審判制度→公的保証ではない
– 地域団体商標:商品の品質に関しては、基準の制定等は保護の要件となっていない
–生産・品質基準の確定・公示:登録の要件–使用許可:第三者機関による産物のチェックが必須
– 消費者にとっても有益
•手厚い保護内容–誤認混同の有無に関わりなく禁止の対象
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 59
EU型 GI 保護制度導入の意義
•特定の個人、団体に独占させるものではない
–集団的権利である地域の財産権を保護する上で、より合理的
•行政の役割が大きい–小規模生産者が大部分を占める地方の農林水産事業者が利用しやすい
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 60
EU型 GI 保護制度導入の意義
• 国際競争力の増大– FTA 等:相手国において我が国 GI の保護を認めさせる前提としての国内法整備は重要
–相手国で地名商標を抜け駆け登録された場合の対抗策としても機能?
–近隣諸国が地理的表示の保護制度の整備を進めている
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 61
制度導入の課題
• 法整備に向けて検討が必要な事項–審査体制および品質確保の体制の整備
• 農水省所管の検査機関を活用?–明細書の記載要件、審査の運用基準の明確化– 商標法や不正競争防止法等との調整規定の制
定• 各国の現状、我が国の事情、事業者・消
費者の利益等を勘案の上検討– 地理的表示保護制度研究会を開催
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル 62
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想定される課題・論点• 表示の周知・著名性あるいは使用の継続期
間について:「一世代程度」の継続使用を要求?
• 表示(構成態様)の定義• 産品の特性と地理的領域とのつながり:ど
の程度のレベル( PDO, PGI )を要求?• 審査・品質管理体制
–検査機関:農水省の外部団体を予定–検査機関のチェック主体は?
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
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想定される課題・論点• 地域団体商標制度、証明商標制度との関係
– 制度の併存がユーザの混乱を招かないか• 同一産品(品質も同一)、同一名称:重複登録可能
– 各制度のメリット・デメリット• GI 保護制度:法人格を必要としない可能性• 商標: GI にはない顧客吸引力を発揮する可能
性–重複登録の可能性およびそのメリット
• 消費者に誤認混同を生じさせないならば、一方の登録のみしか認めない理由はない
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
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想定される課題・論点• 同一産品について複数の生産者団体が存在
する場合の取扱い• 他地域に同一地名が存在する場合の取扱い
– いずれも登録要件を具備する場合:誤認混同のおそれがなければ併存可能?
• 同一名称で製法、品質等が異なる産品がある場合の取扱い
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
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想定される課題・論点• 特許庁との連携
–審査に必要なデータの交換、相互協力– 商標法、不競法等との調整規定– 地域団体商標権者への手続面での優遇
• 特許庁への提出済み書類の援用等
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
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想定される課題・論点• 商標権等との関係
– GI との関係で商標登録出願が拒絶される場合– 商標権との関係で GI の登録が拒絶される場
合–認証マークに関する登録・使用の禁止
• 類似範囲の使用– GI :公的な品質保証が伴う→商標権者が禁止権の範囲でフリーライドを図る可能性
– 登録 GI :類似範囲での使用が商標権者の顧客吸引力にフリーライドする行為を禁止する規定が必要?2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
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想定される課題・論点
• エンフォースメント–行政当局の関与
• 品種登録 Gメンのように情報収集、助言等にとどめるか、捜査権、執行権限を有する機関を設立するか(後者:法的根拠が必要)
2012.8.1 平成 24 年度 研修フェスティバル
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商標権との調整規定: EU の場合
• 基本的考え方– GI の方が商標権よりも公益的性格が高い(当
委員会の見解)–先に GI について登録がなされている場合、同一 or類似の商標について商標登録を受けられない
–先に商標権の設定登録がなされていても、誤認混同のおそれ等のない限り、同一 or類似の表示について GI の登録を受けられる場合がある
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商標権との調整規定: EU の場合
• 地理的名称の使用の禁止に該当する商標の登録:地理的表示が既に登録されている場合においてはできない
• ただし、地理的表示の登録前に善意で取得されていた商標は有効( EU 規則第 14 条(2) 、 TRIPS 協定第 24 条 (5) )
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商標権との調整規定: EU の場合
• 商標が既に存在していたとしても地理的表示の登録は可能である(商標との併存:単純な先願優位ではない)
• 商標権者の許諾なく GI を使用可能• GI が、商標との関連で(評判、名声、使用期間の長さを考慮)真の原産地等に関して公衆を誤認させるような場合は登録不可
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商標権との調整規定: EU の場合
• 真の産地名を示していない商標で公衆を誤認させるような場合は、利害関係者の申し立てにより、その商標登録を拒否したり、無効とする。
• ワインと蒸留酒:公衆を誤認させない場合においても要請によって、拒絶又は無効とする( TRIPS 協定第 22 条 (3) 、第 23 条(2) )
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商標権との調整規定: EU の場合
• GI が先に登録(出願)されている場合– 商標登録出願:原則拒絶( 14 条 (1) )– 原産地が異なる産品、明細書の品質基準を満
たさない産品についての商標登録出願:登録不可
– 同一原産地、明細書の品質基準を満たす産品についての商標登録出願:登録が認められる場合あり
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商標権との調整規定: EU の場合
• 商標が先に登録(出願)されている場合– 商標の名声・評判等から商品の同一性につい
て消費者の誤認混同を招くおそれがある場合: GI 登録を受けられない
–併存する場合• 商標権者の許諾なしに GI使用可能• 商標権の排他的権利は影響を受けない
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弁理士業務への影響
• 商標権との調整規定、商標法への地理的表示との調整規定に関する法改正が予想される– 商標実務への影響– 同制度の活用、商標制度との使い分け– 地域ブランドに関する総合的なコンサルティ
ング• 専権・標榜業務化の可能性
–海外からの出願代理–エンフォースメント、 ADR 等に関する業務
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弁理士業務への影響
• 農山漁村振興等に貢献する契機?– 知的財産の発掘、保護、活用– 商標等に関して蓄積してきた豊富な実務経験
という弁理士の強みの活用
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Appendix
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リスボン協定
• パリ条約の特別取決– 原産地名称の保護及び国際登録に関する協定
• 加盟国: 26カ国• 原産地名称
– ある国、地方又は土地の地理上の名称であって、その国等から生じる生産物を表示するために用いるもの(品質及び特徴が当該国等の環境に専ら又は本質的に由来する場合に限る)
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リスボン協定• 国際登録
– 特別の同盟の国の官庁の請求に応じ、当該国の国内法令に従い当該名称を使用する権利を有する公的又は私的な自然人又は法人の名義において原産地名称を登録
– 同盟国官庁: 1 年以内に保護ができない旨国際事務局に通報しない限り、当該名称について国内法に基づく保護を保証
– 国際登録:原産国における保護されている限り更新不要
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