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粒子シャワーシミュレーションの簡略・高速化(紹介)
高エネルギー物理学 III
神戸大理学研究科
山崎祐司山崎祐司
2008/7/8 1高エネルギー物理学III
シャワーシミュレーション
• 高エネルギーGeant4 シミュレーションには時間がかかることが多い
1. シャワーの粒子数が多いことによる物理的理由
複雑なジオ ト2. 複雑なジオメトリ
3. プログラムのオーバーヘッド– いくらでも時間がかかるように書けてしまう– いくらでも時間がかかるように書けてしまう
• ゆえに,カロリメータのシミュレーションが重い
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時間が長くなる物理的理由
• 藏重先生の授業でやった通り,たくさんの粒子が生成– 最終的には約Nc = E(incoming)/E(critical) 個の粒子が生成( g)/ ( )
– 中間の粒子も入れると 2Nc 個の粒子のシミュレーション
例:100GeV e ⁻ , E(critical) ~ 1 MeV → 1×10⁵ 個
ハドロンの場合は 中性子がいつまでも飛び続けるので• ハドロンの場合は,中性子がいつまでも飛び続けるのでさらにやっかい(ステップ数が多くなる)– 速い中性子は,陽子でしか吸収できない
重たい核ではほぼ弾性散乱してしまう(玉突き vs 壁への衝突)水素の多い物質(プラスチック,パラフィン,水…)
– 熱中性子は,特殊な核でしか吸収できない普通は遠距離を飛び続け,まじめに追っていくと時間がかかる
• 最後まで追わなければ速くなるか– 精度との兼ね合い精度との兼ね合い
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正確なモデリングと精度
• 電磁シャワーの場合は,プロセスがよくわかっている– 細かく追えば,精度があがる
– よくある threshold: 10 keV まで追う
– 今の Geant はもっと細かく追えるらしい(スライド参照)
ただし 物質量が間違ってはいけない!(スライド参照)– ただし,物質量が間違ってはいけない!(スライド参照)
• ハドロンは,そうとは限らない– 低エネルギー核分裂,Spallation に大きな不定性
– 中性子捕獲の確率の不定性
– 中性子が絡むと,モデリングのための実験データも不足
• 適切な実験(ビームテストなど)データのパラメータ化により精度と速度の両立が可能な場合もある可能な場合もある
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Gamma and Electron TransportGamma and Electron Transport• Photon processes:p
- e+e- 対生成
- コンプトン散乱ンプトン散乱
- 光電効果
• Electron and positron processes:Electron and positron processes:- Ionization- クーロン散乱 多重散乱- ク ロン散乱、多重散乱
- 制動放射
• Positron annihilation• Positron annihilation “Geant4 Physics (EM / Hadron)”KEK 歳藤利行 さんより2008/7/8 5高エネルギー物理学III
• Low energy 領域への拡張– ~250 eV / 100 eV 電子、photonに対して– ハドロン、イオンに対しては、ほぼ物質中のイオン化ポテンシャルと同じ程度まで
上限は 100 G V くらい– 上限は 100 GeV くらい
• モデルが詳細積 論 実験 デ を併– ガンマ線、電子断面積は理論式・実験式とデータ ベースを併用
• EADL (Evaluated Atomic Data Library) • EEDL (Evaluated Electrons Data Library)• EPDL97 (Evaluated Photons Data Library)
– dE/dxの計算モデルが豊富dE/dxの計算モデルが豊富• Ziegler1977p,Ziegler1985,ICRU_R49,SRIM2000
– 原子の殻構造を考慮– 角度分布が精密– 蛍光X線、Auger効果、Rayleigh散乱なども取り扱い可能蛍光 線、 g 効果、 y g 散 扱
• “standard” electromagnetic packageに対して 相補的な役割
医療 宇宙分野 の応用• 医療、宇宙分野への応用
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例:ATLAS TileCal Resolution はモデルによってかなり異なる。
2008/7/8 7高エネルギー物理学III
カロリメータ前面の物質(Atlas)
• 検出器自体はともかく,ケーブルや冷却パイプなどの記述はとても難しい述はとても難しい– 正確な形状がわからないから
• 記述漏れ,記述間違いを生みやすい記述漏れ,記述間違 を生みやす
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複雑なジオメトリ いかにも遅そうである。
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高速化,かつ精度維持(向上)の手法
• プログラムの最適化– 聞くところによると,Atlas G4 も結構まだ改良の余地が
• ジオメトリの簡略化
等方的な ポ を持 検出器は 実効的 「合金 置き– 等方的なレスポンスを持つ検出器は,実効的に「合金」に置き換えられる (Porridge = オートミール状のたべもの)
• シャワーのパラメータ化:いろんな方法あり1. シャワーの末端をパラメータ化,
または local energy deposit に置き換えるgy p 置 換
2. 入射粒子ごと
3. ジェット全体(ものすごくいい加減な方法)
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ジオメトリの簡略化
• Porridge は Geant でサポートされている
• 例 (ZEUS の場合): サンドイッチカロリメータ– ウラン(2.6mm) とプラスチックシンチレータ (2.6mm) の混合
– 出力=(落としたエネルギー)×(サンプリング比)
– ウランがたくさんの中性子を出すが,シンチレータ中の水素が吸収するため,中性子が突如ある場所に漏れ出すことが少ない
• 信号の集め方は別に考慮しないといけないZEUS UCAL 光の左右読みだし– ZEUS UCAL: 光の左右読みだし左右の光量はパラメータ化
– ATLAS Lar (やると仮定して): 位置信号のぶれ方が η方向とφ方向とで違う(らしい)で違う(らしい)
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シャワーの終端処理
• 普通は O(10keV) まで粒子を追っている
• 終端処理:シャワーがあるエネルギーを下回ったら,終端処理 シャワ があるエネルギ を下回ったら,パラメータ化したエネルギー分布に置き換える– その場に落とす (killing, terminating)
Threshold: O(10 MeV)Threshold: O(10 MeV)
– ある分布に従って落とす (parameterisation)あるいは適当に「ばらまく」Threshold: O(10 MeV)Threshold: O(10 MeV)
– あらかじめ用意していたシャワーのテンプレートに置き換える(frozen shower)Threshold: O(1 GeV)Threshold: O(1 GeV)
• Threshold, ばらまきかた(parameterisation), 落とすエネルギーのウェイト等は,実験を再現するようにチューン
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ZEUSの場合(ハドロン)
• 中性子以外は (G3 で)シミュレートする
• 中性子は,あるエネルギー以下になったら
5個 分割し 等方的
Geant 3.21Geant 3.13
+ data– 5個に分割し,等方的にばらまく(跳ね返りもする)半径約 7 cm
+ data
半径約 7 cm
• 中性子に対するエネルギー重みをチューニング
• Gheisha, FLUKA, GCALOR よりも実験データをよく再現する再現する
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ATLAS Fast G4 with Frozen with Frozen
Showers(EM粒子のみ)(EM粒子のみ)
• 途中 (1GeV) までは G4 を使う
• 1GeV以下は あらかじめ生成しておいた 1000個ほどの• 1GeV 以下は,あらかじめ生成しておいた 1000 個ほどのシャワーの中から選んで置き換える– エネルギー等は適宜内挿する
• 置き換えたシャワーの粒子の 10 MeV 以下は “killing”
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ATLAS Fast G4 の結果
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Shower のパラメータ化(1): Fast G4• ATLAS Fast G4 の例 (based on: Grindhammer, Peters, hep‐ex/0001020)
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解析的なパラメータ化
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Shower のパラメータ化(1): ATLFast II• 各入射粒子パラメータ
化する– EM particle は電子,
Hadron は全て πとする
• シャワーの energy• シャワ の energy deposit とふらつき,縦方向のシャワーの大きさ大きさ– Fraction of energy / layer
vs depth の,2次元のLookup table を用いて実現している
– Energy fraction のcorrelation もこれで実現
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横方向のシャワー形状
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2008/7/8 高エネルギー物理学III 23一見そう悪くないように見えるが…
2008/7/8 高エネルギー物理学III 24やはりefficiencyまでは再現できない
2008/7/8 高エネルギー物理学III 25Jetは,高エネルギーになれば結構よろしい
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Missing Et のような global variable も,
高エネルギーになれば結構よろしい
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まとめ
• 高エネルギー実験のシミュレーションではカロリメータでのシャワーが時間を食っている
• シャワーのシミュレーションの簡略化によって– 2‐10 倍くらいの速度向上が見込める
ド シ 場合 は シ シ 結果を– ハドロンシャワーの場合には,シミュレーションの結果をチューニングする枠組みとしても用いられる
• 思い切った簡略化には弊害もある(当たり前)
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