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[AP4303]
MS1497-J-00 - 1 -
概 要
AP4303は、1セル・リチウムイオン電池用の充電制御 IC です。 AP4303で充電制御に関わる機能(定電
流・定電圧制御、各種異常停止等)を実現します。USBの規格に準拠するための入力電流制限回路を内蔵し、
高速に充電できるようスイッチング方式の電圧、電流制御を備えています。USB接続時、 D+/D-端子の状態
から接続した充電アダプタを識別します。 また、NTCサーミスタによりリチウムイオン電池温度を監視し、温度に応じた充電電流、充電電圧の制御が
可能で、リチウムイオン電池の安全規格に対応しています。 AP4303は、ポータブル機器のリチウムイオン電池の充電制御に 適です。
特 長 電源電圧範囲 4.25 ~ 5.75V
・絶対 大定格12V 使用温度範囲 -30 ~ 85C 定電圧充電電圧精度 ±2.0% (TA=-30 ~ 85C) 入力電流制限精度 ±5% 急速充電電流精度 ±10% 大充電電流 1A スイッチング周波数 1.5MHz 充電アダプタ識別機能 (USB Battery Charging Specification Revision 1.2 対応) 1次側電源の供給能力内で充電を行うように、電源電圧を監視しながら、入力電流制限を自動調整 リチウムイオン電池に 適な充電動作
・スイッチングDC / DC コンバータによる定電流充電、定電圧充電 ・3段階定電流充電、外付け抵抗で充電電流を設定可能
過放電充電(トリクル充電1) 予備充電(トリクル充電2) フル定電流充電(急速充電)
NTCサーミスタによる電池温度監視、制御機能内蔵(JEITA対応) 保護機能 : 入出力過電圧保護、低入力停止機能、セーフティタイマー、過熱保護、カレントリミット 少ない外付け部品 : 上下パワーMOSFET 内蔵で省スペースを実現 小型薄型パッケージ : WLCSP24ピン(2.04mm 2.04mm) アプリケーション : 1セル・リチウムイオン電池搭載ポータブル機器
USB入力対応1A Li-ionバッテリーチャージャIC(充電アダプタ識別機能内蔵)
AP4303
[AP4303]
MS1497-J-00 - 2 -
ブロック図 及び 接続回路例
ControlLogic
VBUSD+D-
GND
ChargingPort
Detection
SystemLoad
Input CurrentControl
Input VoltageControl
0.01μF
GND
0.01μF
2.2μH (注1)
10μF
Battery Pack
1μF
VUSB
ILSET
DP
DM
USB_S
CEB
STAT
TEST[1, 2]
VR
BT
SW
VOUT
PGND
TEMP
TREF
1μF
4.7μF
ICSET
Charge Control
Battery Monitor
Internal RegulatorInput Voltage
Sense
USB_ON
USBコネクタ
PWMControl
μP
10kΩ
10kΩ
10kΩ10kΩ
PHY
図 1 マイクロ・プロセッサーを使用する場合の接続例
(入力電流制限、充電電流制限 1000mA 設定)
[AP4303]
MS1497-J-00 - 3 -
ControlLogic
VBUSD+D-
GND
ChargingPort
Detection
SystemLoad
Input CurrentControl
Input VoltageControl
0.01μF
GND
0.01μF
2.2μH (注1)
10μF
Battery Pack
1μF
VUSB
ILSET
DP
DM
USB_S
CEB
STAT
TEST[1, 2]
VR
BT
SW
VOUT
PGND
TEMP
TREF
1μF
4.7μF
ICSET
Charge Control
Battery Monitor
Internal RegulatorInput Voltage
Sense
USB_ON
PWMControl
10kΩ
10kΩ
10kΩ10kΩ
USBコネクタ
図 2 AP4303 のみで使用する場合の接続例
(入力電流制限、充電電流制限 1000mA 設定)
[AP4303]
MS1497-J-00 - 4 -
ControlLogic
VBUSD+D-
GND
ChargingPort
Detection
SystemLoad
Input CurrentControl
Input VoltageControl
0.01μF
GND
0.01μF
2.2μH (注1)
10μF
Battery Pack
1μF
VUSB
ILSET
DP
DM
USB_S
CEB
STAT
TEST[1, 2]
VR
BT
SW
VOUT
PGND
TEMP
TREF
1μF
4.7μF
ICSET
Charge Control
Battery Monitor
Internal RegulatorInput Voltage
Sense
USB_ON
PWMControl
30V耐圧用オプションUSBコネクタ
DP,DM,CEB,STAT端子において、マイクロ・プロセッサーを使用する場合、AP4303のみで使用する場合の接続例は、
図1,2と同じ。
10kΩ
10kΩ
10kΩ10kΩ
図 3 入力 VUSB 30V 対応の接続例
(入力電流制限、充電電流制限 1000mA 設定) (注1)推奨型番 DFE252010C/12C 2R2(TOKO), TFM201610G 2R2(TDK), VLS252012MN 2R2(TDK)
[AP4303]
MS1497-J-00 - 5 -
ピン配置
図 4 ピン配置 (Top View)
USB_S USB_ON VR GND TEMP
VUSB VUSB DM TREF
SW SW CEB DP ICSET
PGND PGND VOUT TEST1 ILSET
BT BT VOUT TEST2 STAT E
D
C
B
A
1 2 3 4 5
[AP4303]
MS1497-J-00 - 6 -
入出力端子・機能
表 1 端子機能説明
PIN位置 端子名称 タイプ
(注1)
I/O
(注2)
端子機能説明 備考
B4,B5 VUSB PWR I USB電源端子
A4 USB_ON A O USB電源過電圧保護ゲート出力 オプション
A5 USB_S A I USB検出端子
C3 CEB D I 充電イネーブル端子 内部でVRの電位に
プルアップ
D1 ILSET A I 入力電流制限調整端子
C1 ICSET A I 充電電流制限調整端子
C2 DP A I/O USB D+端子
B2 DM A I/O USB D-端子
E1 STAT D O ステータス出力端子
(注3)
Nchオープンドレイン
出力
A2 GND GND - グランド端子
B1 TREF A O NTCサーミスタバイアス電圧
A1 TEMP A I 電池温度検出用接続端子
D3,E3 VOUT A I/O DC/DC出力端子
D4,D5 PGND GND - グランド端子
C4,C5 SW A O コイル接続端子
E4,E5 BT A I ブートストラップ端子
A3 VR PWR O 内部参照電源端子
D2 TEST1 - - テスト用端子 (注4)
E2 TEST2 - - テスト用端子 (注4)
内部でプルダウン
(注1) A(アナログ端子)、D(デジタル端子)、GND(グランド端子)、PWR(パワー端子) (注2) I(入力端子)、O(出力端子)、IO(入出力端子) (注3) ステータス出力結果は、後述の5.1項を参照して下さい。 (注4) 実使用時、必ずGNDに接続して下さい。
[AP4303]
MS1497-J-00 - 7 -
絶対最大定格
表 2 絶対 大定格
項目 記号 Min Max 端子 備考 単位
端子電圧 VUSB S -0.3 30.0 VUSB_S - V
VVUSB
VUSB ON
-0.3 12.0 VUSB
USB_ON
-
VBT
VSW
BT
SW
VR
VCEB
VDP
VDM
VSTAT
VVOUT
-0.3 5.5 VR
CEB
DP
DM
STAT
VOUT
-
VTREF
VTEMP
VILSET
VICSET
-0.3 1.98 TREF
TEMP
ILSET
ICSET
-
接合温度 TJ - 150 - - C
保存温度範囲 TSTG -40 150 - - C
許容損失 PD - 1.5(注) - - W
(注) TA(IC周囲温度)=25C以上では、19mW/Cで減衰します。 パッケージ熱抵抗 : θJA=55C/W、基板 : 76.2x76.2mm t=1.6mm FR-4 4層基板に実装時のデー
タです。
[AP4303]
MS1497-J-00 - 8 -
推奨動作条件
表 3 推奨動作条件
項目 記号 条件 Min Typ Max 単位
電源電圧 VVUSB 4.25(注) - 5.75 V
動作温度 TA -30 - 85 C
(注) 起動時に必要な 低電圧値。入力電流制限値を越えない範囲で、充電中に設定通りの急速充電電
流を得るためには、定電圧充電電圧+0.55V 以上のVUSB端子電圧が必要です。
外付け部品は、ブロック図 及び 接続回路例の項に記載の接続位置と定数を推奨します。推奨しない条件
で使用したICは、動作保証対象外となります。
電気的特性
表 4 電気的特性 特に指定が無い限りTA = 25C, VVUSB = 5.0V
項目 記号 条件 Min Typ Max 単位
VUSB端子機能
VUSB端子入力電流制限値 IILIM 100mA設定 (RILSET=100 kΩ)
500mA設定 (RILSET=100 kΩ)
1000mA設定 (RILSET=100 kΩ)
80
450
900
95
475
950
100
500
1000
mA
VUSB端子低電圧誤動作保護 解除電圧
VIUVLO_REL 保護状態からの解除電
圧 3.65 3.95 4.25 V
VUSB端子低電圧誤動作保護 検出電圧
VIUVLO 通常動作状態から保護
への電圧 VIUVLO_REL
-0.3
VIUVLO_REL
-0.2
VIUVLO_REL
-0.1
V
VUSB端子低下検出電圧 VILVD 通常動作状態から検出
への電圧 - VIUVLO_REL
+0.05
- V
VUSB端子過電圧保護検出電圧 VIOVP 5.75 6.25 6.75 V
VUSB端子過電圧保護解除電圧 VIOVP_REL 保護状態からの解除電
圧 VIOVP
-0.3 VIOVP
-0.2 VIOVP
-0.1 V
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項目 記号 条件 Min Typ Max 単位
DC/DC降圧コンバータ
トップ側オン抵抗 (VUSB-SW端子間)
RONT IILIM=1000mA設定
IILIM=100, 500mA設定
-
-
244
551
485
970 mΩ
ボトム側オン抵抗 (SW-PGND端子間)
RONB - - 450 mΩ
スイッチング周波数 fOSC - 1.5 - MHz
サイクル毎電流制限値 CILIM IILIM=1000mA 設定
IILIM=100, 500mA 設定
1.8
1.1
2.4
1.6
3.2
2.3 A
充電制御 注:充電制御の機能は、3.1 項を参照
定電圧充電電圧 (VOUT端子)
VCV 4.150 4.175 4.200
V TA=-30 85C (全数検査対象外)
4.091
4.175
4.259
トリクル充電電流 1, 2 ITRKL1, 2 100mA設定 67 84 100 mA
急速充電電流 IFCHG 1000mA設定 800 900 1000 mA
急速充電ソフトアップ電流 ICSSW - 0.1*IFCHG - mA/ms
満充電検出電流 (IEOC=0.1*IFCHG)
IEOC IEOC=100mA
IEOC<100mA
-10
-15
-
-
10
15 %
再充電開始電圧 VRECH VCV-0.3 VCV-0.2 VCV-0.1 V
急速充電開始電圧 VCC 2.9 3.0 3.1 V
トリクル充電閾値電圧 VTRKL 1.7 1.8 1.9 V
VOUT過電圧検出電圧 VOOVP VCV+0.25 VCV+0.4 VCV+0.55 V
充電タイマー精度 dTCHG -10 0 10 %
電池接続端子リーク電流 IBATQ 電源未接続 - - 5 μA
電池接続検出 注:電池接続の機能は、3.1 項を参照
電池接続検出下限電圧 (TEMP端子電圧をモニター)
VTEMP_BOT VTREFとの比率 2.5 5.0 7.5 %
電池接続検出上限電圧 (TEMP端子電圧をモニター)
V TEMP_TOP VTREFとの比率 92.5 95 97.5 %
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項目 記号 条件 Min Typ Max 単位
NTC温度モニター
注:温度値は、B常数がB25/50=3370K,B25/85=3413Kのサーミスタ(10kΩ) 使用時
注:電池温度領域の定義は、5.5 項を参照
TREF出力電圧 VTREF 1.62 1.80 1.98 V
低温領域下限閾値 TLOW 低下時 -2 0 2 C
低温領域下限閾値ヒステリシス TLOW_HYS 上昇時 - 3 - C
常温領域下限閾値 TCOLD 低下時 10 12 14 C
常温領域下限閾値ヒステリシス TCOLD_HYS 上昇時 - 3 - C
常温領域上限閾値 TWARM 上昇時 41 43 45 C
常温領域上限閾値ヒステリシス TWARM_HYS 低下時 - 3 - C
高温 1 領域上限閾値 THOT 上昇時 46 48 50 C
高温 1 領域上限閾値ヒステリシス THOT_HYS 低下時 - 3 - C
高温 2 領域下限閾値 THIGH 上昇時 56 58 60 C
高温 2 領域下限閾値ヒステリシス THIGH_HYS 低下時 - 3 - C
サーマルシャットダウン 注:サーマルシャットダウンの機能は、4.2 項を参照
サーマルシャットダウン動作温度 TSD
TJの温度で判断
110 130 150 C
サーマルシャットダウン
ヒステリシス TSD_HYS - 20 - C
充電アダプタ識別 注:充電アダプタ識別の定義は、5.1 項を参照
D+/D-接触検出電流 IDP_SRC 7 10 13 μA
D-プルダウン抵抗 RDM_DWN 14.25 19.5 24.8 kΩ
充電アダプタ識別ソース電圧 VDP_SRC 0.5 0.6 0.7 V
充電アダプタ識別シンク電流 IDM_SINK 50 100 150 μA
充電アダプタ識別下限閾値 VDAT_REF 0.26 0.3 0.38 V
接触、充電アダプタ識別 上限閾値
VLGC 0.8 0.9 1.0 V
非識別時リーク電流 ILDPM DP=1.8V 時 - - 5 μA
充電アダプタ識別時間 TTDET 90 - 760 ms
デジタル入出力
入力ハイレベル電圧 VIH 1.5 - - V
入力ローレベル電圧 VIL - - 0.5 V
STAT端子 出力ローレベル電圧 VOL 電流 4mA 時 - - 0.4 V
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動作説明 1. 動作状態 1.1. 1 次側電源有
電源電圧が適正な状態 (VIUVLO_REL以上 かつ VIOVP以下)。 電池の状態等により、以下の2つの状態 (充電状態 / 充電停止状態) があります。
1) 充電状態 電池接続がある場合 (VTEMP_BOT < TEMP端子電圧(VTEMP) < VTEMP_TOP)、VOUT端子に接続された電
池を充電します。 電池に供給する電力は、入力側の電流制限回路で制限されます。
2) 充電停止状態 CEB端子をHIGH、充電完了、電池未接続(VTEMP_BOT ≥ VTEMP 、VTEMP_TOP ≤ VTEMP)、保護機能等によ
り、充電を停止している状態です。 この状態に至った条件によって、解除条件が異なります。(詳細は保護機能の項に記載)
2. 起動
AP4303は、電源電圧がVIUVLO_REL以上で起動します。
2.1. 1次側電源による起動
1次側電源接続によって起動した場合の動作シーケンスを以下に示します。
1) VUSB 端子電源電圧検出 2) USB パワースイッチ(内部 FET)を ON 3) 内部回路用電源起動 4) 充電アダプタ識別 5) 電池接続検出、電池温度判定。 6) トリクル充電開始 7) 急速充電開始(詳細な充電フローは、充電機能の項に記載)
[AP4303]
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3. 充電機能 3.1. 充電制御 充電制御動作の流れを以下に示します。 3.1.1. 電池接続チェック
TEMP端子電圧値から、電池の接続監視を行います。TEMP端子電圧が所定の範囲内(VTEMP_BOT < VTEMP < VTEMP_TOP)にあるときに “電池接続“、範囲外にある場合を ”電池未接続“ と判定します。電池未接続と判定
されている間は充電を開始しません。 3.1.2. 電池温度チェック
電池内にあるNTCサーミスタから、電池温度を確認します。電池温度が充電禁止領域ではない場合(TLOW < 電池温度 < THIGH)は、“トリクル充電1“ に遷移し、トリクル充電を開始します。電池温度が充電禁止領域にあ
ると判定された場合(TLOW ≥ 電池温度、THIGH ≤ 電池温度)は、トリクル充電1に遷移せず “電池温度チェック
“ を繰り返します。 3.1.3. トリクル充電 1
電池が過放電状態の場合を想定し、電池へのダメージを抑えるために低電流で定電流充電を開始します。
同時に内部タイマーのカウントを開始します。定期的にVOUT端子電圧(電池電圧)をモニターし、トリクル充電
閾値電圧(VTRKL)以上で “トリクル充電2“ に遷移します。トリクル充電1タイムアウト時間を越えても電池電圧が
VTRKL以上にならない場合は、電池異常と判定し “電池異常“ へ遷移します。 3.1.4. トリクル充電 2
電池が急速充電開始電圧(VCC)に達するまで、低電流での定電流充電を継続します。内部タイマーはリセッ
トされ再度カウントを開始します。定期的に電池電圧をモニターし、VCC以上で “急速充電” に遷移します。トリ
クル充電2タイムアウト時間を越えても電池電圧がVCC以上にならない場合は、電池異常と判定し “電池異常” へ遷移します。 3.1.5. 急速充電
定電流充電と定電圧充電の二つの状態で充電します。ステート遷移直後に急速充電タイマーのカウントを開
始し、定電流充電を開始します。定電流充電で電池電圧が上昇し定電圧充電電圧(VCV)に達すると、定電圧充
電に移行します。通常、定電圧充電では満充電に近づくとともに充電電流が減少します。充電電流が満充電検
出電流(IEOC)以下まで減少した時点で、電池電圧が再充電開始電圧(VRECH)以上であれば満充電と判定し、急
速充電を停止します。状態は “満充電電圧チェック“ に遷移します。充電中に急速充電タイムアウト時間が経
過した場合も充電を停止し、“満充電電圧チェック“ に遷移します。 充電中に電池電圧がVTRKL未満に低下した場合は、電池が外された可能性があると判断し、“電池異常” へ
遷移します。 3.1.6. 満充電電圧チェック
急速充電完了で充電を停止した後、1秒後に電池電圧をチェックします。これは電池異常により電池電圧が
極端に低下していないか監視するためです。電池電圧がVTRKL未満の時は、電池異常と判定し “電池異常“ に
遷移します。それ以外の場合は、”充電終了“ に遷移します。 3.1.7. 充電終了 充電終了後も電池電圧を定期的にモニターし、電池電圧がVRECH以下になった場合、“再充電“ へ遷移しま
す。 3.1.8. 再充電
急速充電と同様の充電動作を繰り返します。
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3.1.9. 電池異常 充電動作を直ちに停止します。充電停止後、常時監視動作によって電池未接続が検出された場合は、充電
停止から ”電池接続チェック” へ遷移します。それ以外の場合は、CEB端子による充電停止、または電源電圧
がVUSB端子低電圧誤動作保護検出電圧(VIUVLO)以下になるまで、この状態を保持します。
以下に代表的な充電プロファイルを示します。
起動時に電池電圧がVCC以下の場合:
図 5 充電プロファイル
トリクル充電 急速充電
定電圧充電定電流充電
充電終了
時間
充電電流
VOUT電圧
VCV
VCC
VTRKL
IFCHG
IEOC ITRKL 1, 2
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図 6 充電フローチャート
電池接続チェック接続なし
接続あり
充電停止
電池温度チェックTLOW ≥ 電池温度 または
THIGH ≤ 電池温度
トリクル充電1
VTRKL ≤ 電池電圧
電池異常
トリクル充電1タイムアウト
トリクル充電2トリクル充電2タイムアウト
急速充電
満充電電圧
チェック
充電終了
充電停止保護検出
・サーマルシャットダウン
・電池温度異常
・電池未接続
電池未接続
TLOW < 電池温度 < THIGH
VCC ≤ 電池電圧
VTRKL > 電池電圧
VRECH ≥ 電池電圧
充電停止条件解除
充電イネーブルチェックCEB端子=HIGH
CEB端子=LOW
電源電圧検出
CEB端子=HIGH
充電イネーブル
チェックへ
充電禁止
CEB端子=HIGH
VOUT過電圧検出
ICSETショート検出
電池電圧>VRECHでVCV低下 充電アダプタ
識別
満充電検出 ・「VRECH ≤ 電池電圧、IEOC ≥ 充電電流」または、 「タイムアウト」で満充電電圧チェックへ。
VTRKL ≤ 電池電圧
VTRKL > 電池電圧
VTRKL > 電池電圧
再充電
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4. 保護機能 4.1. 常時監視
充電動作と並行して、周期的(120ms Typ)に以下の監視動作を行います。エラー状態により、“充電停止“、“電池異常“、または “充電禁止“ のいずれかに遷移します。
充電停止: 停止となった条件が解除されれば充電を再開 電池異常: 電池の抜き差し、CEB端子による充電停止、または電源電圧がVIUVLO以下で解除 充電禁止: CEB端子による充電停止、または電源電圧がVIUVLO以下で解除
表 5 監視動作
監視項目 判定条件 エラー処理
電池接続 TEMP端子電圧がVTEMP_BOT以下または VTEMP_TOP以上を3回連続
で検出 充電停止
電池温度 8回平均の値がTLOW以下またはTHIGH以上
電池電圧 急速充電開始後に電池電圧が VTRKL 未満を2回連続で検出 電池異常
VOUT電圧 VOUT端子の電圧がVOOVP以上を2回連続で検出 充電禁止
ICSET端子ショート ICSET端子の電圧が0.4V以下で検出
4.2. サーマルシャットダウン
AP4303はIC本体の熱暴走防止のために、ICのジャンクション温度を監視します。内部温度が上昇しサーマ
ルシャットダウン動作温度(TSD)を超えた場合に自動的に充電を停止します。充電停止後に内部温度が検出温
度のヒステリシス(TSD_HYS)を下回ると、サーマルシャットダウンが解除され充電を再開します。解除時は、トリク
ル充電から充電を再開します。 4.3. 安全タイマー (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載)
充電動作中に、下記の安全タイマーがタイムアウトすると、電池異常と判定し充電動作を停止します。
表 6 タイマー値
項目 記号 時間
トリクル充電 1 安全タイマー TTRKL1 0.5時間
トリクル充電 2 安全タイマー TTRKL2
急速充電安全タイマー TFCHG 3時間
再充電安全タイマー TRECHG
精度については、表4 電気的特性の項目[dTCHG]を参照して下さい。
[AP4303]
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5. 充電パラメータ
AP4303は、充電に関する入力電流制限値と充電電流制限値を外部入力端子に接続する抵抗値で設定可
能です。 5.1. 入力電流制限値 (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載)
電源電圧がVIUVLO_REL以上で起動してから充電アダプタ識別時間(TTDET)以内に、DP/DM端子の状態から接
続した充電アダプタを識別し、以下の表に示すような入力電流制限を行います。また、識別結果をSTAT端子
に出力します。 接続した充電アダプタに対しStandard Downstream Port と識別した場合、マイクロ・プロセッサー等を使っ
てSTAT端子での監視とCEB端子の操作を行うことにより、充電を開始する前にUSBホストへエニュメレーショ
ンすることも可能です。 充電アダプタの識別が終わると、DP/DM端子はAP4303の内部回路から切断します。 充電アダプタを識別し入力電流制限値が1000mAの設定になった時、VOUT電圧がVRECH以上の条件で起
動すると、入力電流制限値は500mAになります。
表 7 充電アダプタ識別結果
充電アダプタの識別 入力電流制限値 STAT端子
Dedicated Charging Port(*1) 1000mA Open Drain
Charging Downstream Port(*1)
Standard Downstream Port(*1) 500mA Low
BCS規格外1: “VLGC < DP” かつ “VLGC < DM” 500mA
Open Drain BCS規格外2:
“VLGC > DP” かつ “VLGC < DM” または
“VLGC < DP” かつ “VLGC > DM”
充電開始しない(*2)
(*1) ”Battery Charging Specification Revision 1.2” で定義されたポート名 (*2) VUSB端子電圧VIUVLO以下で解除
入力電流制限値(IILIM)は、ILSET端子に接続する外付け抵抗の値(RILSET)によって設定できます。
Dedicated Charging Port 識別時の入力電流制限値は以下の式に従って設定できます。
IILIM = 9900 / RILSET
IILIMの標準的な設定例を以下に示します。
表 8 IILIM の設定例
入力電流制限値 = IILIM (mA) 990
ILSET端子の外付け抵抗値(kΩ) 10
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電源電圧低下時の自動入力電流制限機能
1次側電源の供給能力が充電アダプタ識別で選択された入力電流制限値を下回っていた場合、電源電圧が
VUSB端子低下検出電圧以下(VVUSB ≤ VILVD)へ低下すると、下表に示すような入力電流制限値の変更を自動
で行います。
表 9 電源電圧低下時の入力電流制限値の自動変更
電源電圧低下検出前の値 電源電圧低下検出後の値
ILSET端子で設定された値(IILIM) IILIM * 0.5
IILIM * 0.5 IILIM * 0.1
IILIM * 0.1 充電禁止
電源電圧低下検出により自動的に適用された入力電流制限値は、CEB端子による充電停止、または電源
電圧がVIUVLO以下になるまで、この状態を保持します。
図 7 自動入力電流制限
電池電圧の上昇により、1次側電源の供給能力不足となり 電源電圧低下が検出(VVUSB ≤ VILVD)され、入力電流制限値が 1000mAから500mAに切り替わる。
電池電圧の上昇に伴い、充電電流が低下。
時間
電流
1000mA
800mA 1次側電源の供給能力値
1次側電源の供給能力が800mAで、自動入力電流制限が適用された場合
500mA 入力電流制限値
充電電流制限値
急速充電電流のソフトスタート (1mS毎に急速充電電流設定の
1/10のステップで上昇)
充電電流
[AP4303]
MS1497-J-00 - 18 -
5.2. 定電圧充電電圧値 (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載)
定電圧充電電圧値は、電池温度の領域により、以下の値となります。
表 10 定電圧充電電圧値(常温領域)
項目 記号 電圧
定電圧充電電圧(常温領域) VCV 4.175V
表 11 定電圧充電電圧値(低温、高温領域)
項目 記号 電圧
定電圧充電電圧(低温領域) VCVL VCV
定電圧充電電圧(高温 1 領域) VCVW VCV – 0.15V
定電圧充電電圧(高温 2 領域) VCVH VCV – 0.15V
5.3. 充電電流値 (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載)
充電電流制限値(IFCHG(Max))は、ICSET端子に接続する外付け抵抗の値(RICSET)によって設定できます。充
電電流制限値と電池温度が常温領域の急速充電電流値を同一とすると、充電電流制限値は以下の式に従っ
て設定できます。 ICSET端子がGNDにショートした場合は、“充電禁止状態“へ遷移します。
IFCHG = 9900 / RICSET
IFCHGの標準的な設定例を以下に示します。 IFCHGの使用下限値は、500mAです。(下限値以上の設定値で使用して下さい。)
表 12 IFCHG の設定例(常温領域)
充電電流制限値(急速充電電流) = IFCHG (mA) 762 990
ICSET端子の外付け抵抗値(kΩ) 13 10
表 13 急速充電電流値(低温、高温領域)
項目 記号 電流
急速充電電流(低温領域) IFCHGL IFCHG*0.5
急速充電電流(高温 1・2 領域) IFCHGW, IFCHGH IFCHG
表 14 トリクル充電電流値
項目 記号 電流
トリクル充電電流 1, 2 ITRKL1, 2 IFCHG*0.1
[AP4303]
MS1497-J-00 - 19 -
表 15 再充電電流値
項目 記号 電流
再充電電流(低温領域) IRECHGL IFCHGL
再充電電流(常温領域) IRECHG IFCHG
再充電電流(高温 1 領域) IRECHGW IFCHGW
再充電電流(高温 2 領域) IRECHGH IFCHGH
表 16 満充電検出電流値
項目 記号 電流
満充電検出電流 IEOC IFCHG*0.1
5.4. 満充電検出 (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載)
電池電圧VRECH以上かつ充電電流がIEOC以下であれば満充電と判定し、“満充電電圧チェック“ へ遷移しま
す。 または、急速充電中にタイムアウトが発生した場合も “満充電電圧チェック“ へ遷移します。
[AP4303]
MS1497-J-00 - 20 -
5.5. 電池温度領域閾値 (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載)
AP4303は外部NTCサーミスタにより電池温度をモニターし、充電動作を適切にコントロールします。電池温
度は6つの温度領域に分かれており、安全に充電を行うために電池温度に応じて急速充電モードでの充電電
流、定電圧充電電圧を自動で制御します。
各温度領域での制御を以下に示します。各温度閾値は3C相当のヒステリシスがあります。(B常数が
B25/50=3370K,B25/85=3413Kで抵抗値10kΩのサーミスタを使用した場合)
表 17 充電温度領域
温度領域 下限温度 上限温度 急速充電電流 定電圧充電電圧
低温充電禁止領域 - TLOW 充電停止 充電停止
低温度領域 TLOW TCOLD IFCHGL VCVL
常温領域 TCOLD TWARM IFCHG VCV
高温 1 領域 TWARM THOT IFCHGW VCVW
高温 2 領域 THOT THIGH IFCHGH VCVH
高温充電禁止領域 THIGH - 充電停止 充電停止
以下に、急速充電電流および定電圧充電電圧の温度プロファイルを示します。
図 8 急速充電電流・電圧の温度プロファイル
IFCHGL
温度
電圧
TLOW (0C)
電流
(注)
電池電圧が VRECH を超えた状態で、電池
温度の変化によりVCV設定が低下した場合、
“充電禁止“ へ遷移します。
充電禁止からの復帰条件は、「4.1常時監視」
の項を参照して下さい。
IFCHG IFCHGHIFCHGW
VCVL VCV
VCVHVCVW
TCOLD
(12C) TWARM
(43C)THOT
(48C)THIGH
(58C)
[AP4303]
MS1497-J-00 - 21 -
パッケージ 外形寸法図
図 9 外形寸法図
[AP4303]
MS1497-J-00 - 22 -
マーキング
YWWA
( 1 ) A1 ピン表示
( 2 ) 製品型番 : "4303"
( 3 ) 製造年 (西暦年の下一桁 (例 "2012 年" ? "2") )
( 4 ) 製造週
( 5 ) 管理番号
(1)
XXXX
(3)
(2)
(4) (5)
[AP4303]
MS1497-J-00 - 23 -
参考(トリムオプション)
トリムオプションとして、以下へ調整可能です。 (*1)表記の設定 : AP4303としての設定
安全タイマー
表 18 タイマー設定
項目 記号 設定 1(*1) 設定 2 設定 3 設定 4 設定 5 設定 6 設定 7 設定 8
トリクル充電 1 安全タイマー TTRKL1 0.5時間 1時間 2時間 4時間
トリクル充電 2 安全タイマー TTRKL2
急速充電安全タイマー TFCHG 3時間 6時間 6時間 12時間 12時間 24時間 12時間 24時間
再充電安全タイマー TRECHG
入力電流制限値
表 19 充電アダプタ識別結果
充電アダプタの識別 入力電流制限値 STAT端子
Dedicated Charging Port(*1) 1000mA Open Drain
Charging Downstream Port(*1)
Standard Downstream Port(*1) 500mA Low
BCS規格外1: “VLGC < DP” かつ “VLGC < DM”
下表のオプションから選択可能 Open Drain BCS規格外2:
“VLGC > DP” かつ “VLGC < DM” または
“VLGC < DP” かつ “VLGC > DM” (*1) ”Battery Charging Specification V1.2” で定義されたポート名
BCS規格外識別時の電流制限に関しては、下記設定があります。
充電アダプタの識別 設定1(*1) 設定2 設定3 設定4
BCS規格外1 500mA 充電開始しない
(*2) 500mA 1000mA BCS規格外2 充電開始しない(*2)
(*2) VUSB端子電圧VIUVLO以下で解除
[AP4303]
MS1497-J-00 - 24 -
定電圧充電電圧値
表 20 定電圧充電電圧設定(常温領域)
項目 記号 設定 1 設定 2(*1) 設定 3 設定 4 設定 5
定電圧充電電圧(常温領域) VCV 4.115V 4.175V 4.215V 4.265V 4.310V
表 21 定電圧充電電圧設定(低温、高温領域)
項目 記号 設定1(*1) 設定 2
定電圧充電電圧(低温領域) VCVL VCV VCV – 0.15V
定電圧充電電圧(高温 1 領域) VCVW VCV – 0.15V VCV – 0.15V
定電圧充電電圧(高温 2 領域) VCVH VCV – 0.15V VCV – 0.15V
充電電流値
表 22 急速充電電流設定(低温領域)
項目 記号 設定 1 設定 2(*1)
急速充電電流(低温領域) IFCHGL IFCHG IFCHG*0.5
表 23 急速充電電流設定(高温領域)
項目 記号 設定 1(*1) 設定 2
急速充電電流(高温 1・2 領域) IFCHGW, IFCHGH IFCHG IFCHG*0.5
以下に、定電圧充電電圧および急速充電電流の温度プロファイルを示します。
図 10 急速充電電流・電圧の温度プロファイル
IFCHGL
温度
電圧
TLOW (0C)
電流
IFCHG
IFCHGH
IFCHGW
VCVL VCV
VCVHVCVW
TCOLD
(12C) TWARM
(43C)THOT
(48C)THIGH
(58C)
(注)
電池電圧が VRECH を超えた状態で、電池
温度の変化によりVCV設定が低下した場合、
“充電禁止“へ遷移します。
充電禁止からの復帰条件は、「4.1常時監視」
の項を参照して下さい。
[AP4303]
MS1497-J-00 - 25 -
満充電検出 ・満充電検出を行う設定:(*1)
電池電圧VRECH以上かつ充電電流がIEOC以下であれば満充電と判定し、“満充電電圧チェック“ へ遷移しま
す。 または、急速充電中にタイムアウトが発生した場合も “満充電電圧チェック“ へ遷移します。
・満充電検出を行わない設定:
タイムアウトが発生した時のみ “満充電電圧チェック“ へ遷移します。
図 11 充電プロファイル
トリクル充電 急速充電
定電圧充電定電流充電
時間
充電電流
VOUT電圧
満充電検出しない設定の場合
充電終了
急速充電タイムアウトVCV
VCC
VTRKL
IFCHG
ITRKL 1, 2
[AP4303]
MS1497-J-00 - 26 -
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