Post on 17-Jun-2020
2013/5/31
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北海道の広葉樹資源の現状と
ウダイカンバ大径木の生産技術
(地独)北海道立総合研究機構
林業試験場 大野泰之
日本木材学会北海道支部第4回研究会 2013. 5. 24
北海道の森林資源
森林の蓄積
約7億m3
ナラ類
カンバ類
シナノキ
カエデ類
その他
広葉樹
ブナ
ニレ
ハリギリ
タモ類
カツラ
針葉樹
・落葉広葉樹の蓄積の97%は天然林に存在
・多様な樹種によって構成
天然林:380万ha
人工林:150万ha
その他: 20万ha
森林の面積:約550万ha
2013/5/31
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1.北海道の天然林に対する攪乱の歴史
2.天然林の現状
・林分構造
・主要な森林のタイプ
・主要樹種の出現パターン
3.ウダイカンバ二次林における大径材の生産技術
・樹冠の大きさからの検討
・樹冠長・枝下高を指標とした管理技術
・食葉性昆虫の大発生と枯死
本日の話題
天然林に対する攪乱の歴史
北海道への入植
第二次世界大戦
1900
1920
1940
1960
1980
(年)
高度経済成長期
・ 開拓
・ 火入れに伴う山火事の多発
・大面積にわたる皆伐や択伐
洞爺丸台風
20世紀初頭の被害面積
約100万ha
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天然林の伐採量
伐
採
量
西暦(年)
(千m3
)
1947 1957 1967 1977 1987 1997
0
4000
8000
12000
天然林から伐採された樹木の径級
1952 1985
0
20
40
60
80
100
≧DBH 40cm < DBH 40cm
割合
(%
)
西暦
胸高直径(DBH)が40cm以上の割合が減少
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林分の蓄積と大径木の本数との関係
林分材積 (m3
ha-1
)
(ha-1)
EEE EE
EE EE EE EEEE E
EEEEEEE EEEEEE EE E
E
E EE EEE E
EE EE
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E
EE E EEEEE EEE
EEEEE E EE
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E EEE EE
EE EEE EEE EE
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E
E
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E E
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E
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E E
E
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E
EE
E
E
E
E
EEE
E
EE
E
E
E
EE
E0
4 0
8 0
1 2 0
1 6 0
2 0 0
0 2 0 0 4 0 0 6 0 0
大径
木の
密度
(≥
DB
H 4
0cm
)
低蓄積の林分ほど大径木が少ない
315林分
050
0010
000
2000
030
000
①②
小径木グループ:20cm以下の樹木が優占
中径木グループ:38cm以下 〃
大径木グループ:40cm以上 〃
③
距離
樹木の径級別分布をもとにした林分のグループ分け
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小径木グループ小径木グループ小径木グループ小径木グループ中径木グループ中径木グループ中径木グループ中径木グループ 大径木グループ大径木グループ大径木グループ大径木グループ
0 500 0 400
ミズナラ –
カエデ類
ハンノキ類 -
ヤチダモ
イタヤ –
ミズナラ
シナノキ - イタヤ
ウダイカンバ –
シラカンバ
ミズナラ –
イタヤ
シラカンバ -
ミズナラ
その他 - ハルニレ
イタヤ –
シナノキ
ハンノキ類 –
シラカンバ
ウダイカンバ –
ミズナラ
シナノキ –
イタヤ
ミズナラ –
シラカンバ
ダケカンバ
トドマツ –
ミズナラ
43263539
50
47
53
2756
28463
36
1338593022
4045
2
475
37
89
2034
1718141925231510246
163212334849
52
29444258
545557
Clu
ste
r D
en
dro
gra
m
エゾマツ -
シナノキ
シナノキ –
イタヤ
イタヤカエデ
- シナノキ
ミズナラ - シナノキ
トドマツ –
エゾマツ
0 600
グループごとの主要な森林タイプ
エゾマツ林
トドマツ林 トドマツ林
ダケカンバ林
ハンノキ林 ハンノキ林
ウダイカンバ林 ウダイカンバ林
シラカンバ林
ミズナラ林 ミズナラ林 ミズナラ林
シナノキ林 シナノキ林 シナノキ林
イタヤカエデ林 イタヤカエデ林 イタヤカエデ林
小径木グループ小径木グループ小径木グループ小径木グループ 中径木グループ中径木グループ中径木グループ中径木グループ大径木グループ大径木グループ大径木グループ大径木グループ
グループと森林タイプの対応(要約)
大大大大 攪乱の影響攪乱の影響攪乱の影響攪乱の影響 小小小小
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EE
E
E E
EE
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
トドマツ
E E E
E
E
EE
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
エゾマツ
E E EE E
E
E
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
ダケカンバ
E E EE
EE
E0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
シラカンバ
E E EE
E
E
E
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
ナナカマド
E EE E E E
E
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
ホオノキ
E E E E
E EE
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
ハンノキ類**
E E EE E
E
E
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
ミズナラ
E E E E EE
E
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
ヤチダモ**
EE
EE
E E
E
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
E E EE E E
E
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
シナノキ
E E EE
EE E
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
シウリザクラ
EE E E E
E E
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
キハダ
E EE
E
E E
E
0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
イタヤカエデ
E E
EE E E
E0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
ウダイカンバ
ハリギリ
E E E E EE E0
20
40
60
80
100
0 200 400 600 800
カツラ**
主要樹種の出現のしやすさ(出現率)
大径木グループ 小径木グループ グループに非依存
標高 (m)
出現
率(%
)
まとめ:天然林の現状
・林分構造
蓄積量が少ない林分ほど大径木の本数が少
→ 過去の攪乱の影響を反映している可能性が大
・標高などの環境傾度だけでなく、攪乱にともなう林分構造
の変化を通して森林のタイプと樹木の種組成に影響
・林分構造の違いが森林タイプと樹種ごとの出現パターンに影響
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山火事跡に成立した
ウダイカンバ二次林
将来の優良広葉樹林
として期待
0
5
10
15
20
25
0 20 40 60 80 100
平均
樹高
(m
)
林齢(年)
樹高成長曲線
本数(/ha)
500
100
0
100 1000 10000
密度管理図
林分
材積
(m
3
/h
a)
ウダイカンバ二次林における大径材の生産技術
ウダイカンバ二次林のこれまでの施業体系
林齢60年
(約40年前)
育成目標:林齢100年,胸高直径40cm
(三好・新田 1986)
林齢約100年
(現在)
林齢80年
保育間伐開始
第2回保育間伐
主 伐
ところが・・・
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ウダイカンバ大径材生産における課題
1)育成目標に達しない林分も多い。
2)樹冠の枝が部分的に枯れる現象(衰退)が
1990年代の後半から報告
樹冠
樹冠投影面積
1)何が制限要因になっているのか?
2)どのようなウダイカンバが衰退しやすいのか?
目 的
樹冠の大きさ(樹冠面積)
に着目
関連性は?
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林齢約100年の二次林における胸高直径
(DBH)別の相対頻度分布
0
25
50
4 20 36 52
0
25
50
4 20 36 52
4 20 36 52
0
25
50
4 20 36 52
南富良野A 南富良野B南富良野C
南富良野D 初山別興部1
興部2倶知安
同程度の林齢でもDBH別の頻度分布は林分間で大きな違い!
相対
頻度
(%
)
DBH(cm)
10
100
200
10 100
興部
倶知安
初山別
南富良野
大径材生産において樹冠の発達が鍵!
林齢100年の二次林における平均胸高直径
(DBH)と樹冠面積(CA)の関係
平均
CA
(m
2
)
平均DBH(cm)
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樹高成長曲線からみた保育間伐の
開始期(林齢60年)の位置づけ
(壮齢林)
大
(若齢林)
0
5
10
15
20
25
0 20 40 60 80 100
平均
樹高
(m
)
林齢(年)
保育間伐開始期60年:伸びしろが小
5
10
100
150
10 50
a) 南富良野
CA
(m
2
)
DBH(cm)
CA
(m
)
樹冠の発達に対する間伐の効果:若齢林 >壮齢林
72年生から間伐
胸高直径(DBH)と樹冠面積(CA)との関係
間伐林分 無間伐林分
1
10
100
1 10 50
b) 美唄
CA
(m
2)
DBH(cm)
24年生から間伐
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11
0
2
4
6
8
10
12
14
10 20 30 40
72年生時のDBH(cm)
DB
H成
長量
(cm
/18年
)
a) 南富良野
間伐の効果: 両林分で認められるが・・・
効果の程度: 若齢林 >壮齢林
72年生から間伐
期首の胸高直径(DBH)とDBH成長量との関係
間伐林分
無間伐林分
40
0
2
4
6
8
10
12
14
0 5 10 15 20
DB
H成
長量
(cm
/16年
)
24年生時のDBH(cm)
b) 美唄
24年生から間伐
1
10
100
10 40
健全木・衰退木別の胸高直径(DBH)と
樹冠面積(CA)との関係
60年生時のDBH(cm)
60年
生時
のC
A(m
2
)
●健全木
●衰退木
樹冠の小さな個体ほど衰退木になりやすい
南富良野
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12
1
10
100
1000
1 10 100
1000
胸高直径 樹冠面積 立木密度
(cm) (㎡) (本/ha)
30 51.5 194
40 87.9 114
50 133.2 75
健全木の胸高直径(DBH)と樹冠面積(CA)との
関係を指標とした本数管理の目安
DBH(cm)
CA
(m
2
) 87.9m2
40
猪瀬ほか(1991)に加筆
0100 1000 10000
本数(/ha)
目安となる混み合い密度:Ry = 0.5(超疎仕立て)
500
100
密度管理図
林分
材積
(m
3
/h
a)
32cm36cm
40cm
一般的な森林管理:Ry=0.7~0.8
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まとめ
・ウダイカンバの大径木の育成において樹冠の
発達が鍵
・樹冠の発達は衰退の回避にも有効
・大径木を仕立てるためには、「疎仕立て」に
よる管理が有効
・樹冠の発達には若齢時からの間伐が有効
樹冠
樹冠投影面積
樹高
樹冠
長枝
下高
育成目標を達成するための保育間伐の開始時期は?
-樹冠長・枝下高を指標として-
平均
樹冠
面積
(m
2
)
平均樹冠長 (m)
樹冠長:樹冠面積と同様に樹冠の発達程度の指標
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14
0
10
20
30
40
50
0 20 40 60 80 100 120
林齢 (年)
平均
DB
H(
cm
)
0
10
20
30
40
50
0 2 4 6 8 10 12 14
平均
DB
H (cm
)
平均樹冠長(m)
平均
DB
H(
cm
)
林齢と平均樹冠長から平均胸高直径(DBH)を推定
林齢
平均DBH
樹冠長
推定
0
10
20
30
40
50
0 10 20 30 40 50
予測の精度は、まずまず
推定精度と育成目標に必要な樹冠長
予測
値(
cm
)
観測値(cm)
育成目標に
必要な樹冠長
例)林齢100年の場合
平均樹冠長
(m)平均胸高
直径(cm)6 27.0 7 29.2 8 31.4 9 33.6 10 35.7 11 37.9 12 40.1 13 42.3
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15
0
5
10
15
20
25
0 20 40 60 80 100
樹高曲線
(地位指数20)
平均
樹高
・枝
下高
(m
)
林齢(年)
樹高
22.3m
12m
10.3m
育成目標を達成するための間伐の開始時期
-育成目標:林齢100年、DBH40cmの場合-
育成目標
40cm
35年
遅くとも35年生までに間伐を開始を
平均的な枝下高
の推移曲線
【結 論】
樹冠
樹高
樹冠
長枝
下高
育成目標を達成するための保育間伐の開始時期の目安
目標経級
必要な
樹冠長
間伐遅れとなる
林齢
(cm) (m) (年)
36 10.1 52
38 11.0 42
40 12.0 35
42 12.8 29
44 13.7 24
林齢100年、地位指数20の場合
目標径級が大きいほど、大きな樹冠長が必要であり、
早い時期から間伐を開始する必要がある。
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Plant-insect responses to global environmental changes: from physiology to evolution
Hokkaido Forestry Research Institute
OHNO Yasuyuki
ウダイカンバ大径木生産における懸念事項
-食葉性昆虫の大発生と枯死-
ウダイカンバ二次林におけるクスサンの大発生
Emperor-moth larva(Herbivores insect)
クスサン(蛾)の幼虫
好んで食べる樹種
クリ、トチノキ
ウダイカンバ 新たに好まれようになった樹種
北海道における自然分布域
(倉田 1971)
1991年に厚田村で
はじめて観察
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クスサンの食害が活発になる時期
- フユシャクとの比較-
真夏の激しい食害はウダイカンバにとってはじめての経験かも!
フユシャク
クスサン
種類 5月 6月 7月
フユシャク
春 夏
?2.5
枯死率 (%)
(原ら 1997)
どのような影響をもたらすのか?
個体ごとの食害状況
激しい食害:2006 – 2008年
2006 2007 2008 2009 2010
0
20
40
60
80
100
(46個体)
食害
によ
る失
葉率
(%
)
奈井江町
林齢約
100年
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ウダイカンバの死亡率
ウダイカンバの死亡は2009年から発生し、2012年
までに24%の個体が死亡
激しい食害
胸高直径(DBH)別の死亡状況
0
10
20
30
0
10
20
30
個 体
数
生存木枯死木
<28 28-36 36<
0
10
20
30
DBH (cm)
2009年6月
2010年6月
2011年6月
DBHが小さい個体ほど死亡しやすい。
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・すべての個体が食害後に一様に枯死するわけでは
ない
・食害後のウダイカンバの枯死はサイズ依存
(DBHの小さな個体ほど枯死しやすい)
・食害を受けてから死亡に至るまでにはタイムラグ
が存在
まとめ
メジロからマカバへ・・・
<59 60 80 100 120 140 160 180 200 220-
清水 (1996)
年輪数(年)
本数
0
20
40
・樹齢120年以上:マカバの頻度が多
・樹齢が同じであれば、直径が小さいものがマカバに
メジロ
マカバ
0
20
40
60
80
100
0 100 200 300
樹齢(年)
直径
(cm
)
小池(2013)
メジロ
マカバ