JR東日本 GV-E400系電気式気動車(量産先行車)...Mc車:2.54(空調装置1.2)...

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2018- 9「車両技術 256 号」64

JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車)※渡

わた

邊なべ

 龍りゅう

太た

郎ろう

 

写真 1 外観

要旨東日本旅客鉄道(JR 東日本)では、旧日本国有鉄道(国鉄)時代に製造されたキハ 40 系車両の置換えとして、

GV-E400 系電気式気動車を新造することとした。電気式気動車は、ディーゼル機関及び発電機によって発生した電力で主電動機を駆動させて走行する方式で、JR 東日本としては新方式となる車両である。JR 東日本で数多く所有する電車で培ってきた技術、メンテナンス方法をフィードバックさせることで、安全安定輸送及び質の高いサービスの提供を目指した車両である。

今回の車両新造にあたっては公募調達を実施し、高品質で安価、かつ十分なアフターケアが行われる製品を広く国内外に求めることを基本方針として、車体や各機器の調達を行った。本稿では、新潟地区にて性能評価を実施する GV-E400 系量産先行車について紹介する。

1 はじめにJR 東日本では、国鉄時代に製造されたキハ 40 系車両の

老朽化が進んでいる事から、キハ 40 系車両の置換えとして電気式気動車を新造することとした。

電気式気動車は、JR 東日本としては新方式となる車両であり、JR 東日本が数多く所有する電車で培ってきた技術、メンテナンス方法をフィードバックさせるとともに、推進軸などの機械的駆動部分の減少、電車と共通部品の採用及び VVVF インバータ制御による細やかな空転制御などによって、安全安定輸送と質の高いサービスの提供を目指して新造した車両である。

車両称号は、機関で発電して主電動機を駆動するという意味が伝わるものとするため、GV(Generating Vehicle)とし、百位の数字は液体式気動車の 100、ディーゼルハイブリット車の 200・300 の次世代車両として 400 を選定し、GV-E400 系としている。

2 編成及び車両性能と主な特徴GV-E400 系量産先行車の車両形式は、便所付き両運転

※ 東日本旅客鉄道㈱ 運輸車両部 車両技術センター

写真 2 室内

JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車) 65

図1 

編成

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会社・車両形式 東日本旅客鉄道㈱・GV-E400 系(量産先行車)使用線区・用途 羽越本線、信越本線、米坂線、磐越西線、津

軽線、五能線、奥羽本線など用途 一般形

基本編成両数 2 両 軌間(㎜) 1 067車体製作会社 川崎重工業㈱ 使用線区の最急勾配台車製作会社 川崎重工業㈱ 製造初年 2018 年機関製作会社 ㈱小松製作所 製作両数 3 両主回路装置製作会社 三菱電機㈱ 車両技術の掲載号 256

基本編成及び主な機器配置

凡例 ●:駆動軸 ○:付随軸 PP:発電装置 CI:主変換装置 SIV:補助電源装置   CP:空気圧縮機 BT:蓄電池 ◎:車椅子スペース ◆:車椅子対応便所   連結器 ▽:密着 -:半永久編成質量(t) 80(Mc+Mc') 編成定員(人) 232(Mc+Mc')

個別の車種形式 GV-E400 GV-E401 GV-E402車種記号(略号) cMc Mc Mc'空車質量(t) 42.2 40.3 39.7定員(人) 99 111 121うち座席定員(人) 36 40 51特記事項 補助電源装置は、主変換装置と一体構造

車両性能

最高運転速度(㎞/h) 100

加速度(m/s2)0.64(2.3 ㎞/h/s)、0.50(1.8 ㎞/h/s)に切換え可能

減速度(m/s2)

常用 0.97 m/s2(3.5 ㎞/h/s)非常 0.97 m/s2(3.5 ㎞/h/s)

編成当りの定格

編成構成 0.5M0.5T出力(kW) 210引張力(kN) 31

ブレーキ制御方式

電気指令式空気ブレーキ(応荷重)、直通予備ブレーキ、耐雪ブレーキ、抑速ブレーキ(機関、排気ブレーキ併用)

制御回路電圧(V) 直流 100抑速制御 あり非常時運転条件その他の運転条件

保安設備

運転保安装置統合形 ATS 車上装置(Ps形)、EB・TE 装置

列車無線 デジタル列車無線、防護無線

駆動系主要設備

主変換装置

形式 / 質量(㎏) CI27

整流部2 レベル変調三相電圧形PWM インバータ

インバータ部2 レベル変調三相電圧形PWM インバータ

制御容量(kW)

表 1 JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車) 車両諸元

駆動系主要設備

主電動機

形式 / 質量(㎏) MT81方式 三相かご形誘導電動機1 時間定格(kW) 105回転数(min-1) 2 121特記事項 全閉形

主回路最大限流値

力行(A/MM)ブレーキ(A/MM)

電気ブレーキの方式 なし

発電装置

機関

形式/質量(㎏) DMF15HZD-G / 1 940総排気量 / 方式 15.24㍑ / 直列 6 気筒ディーゼル燃料噴射方式 コモンレール式出力(kW) 331

主発電機

形式/質量(㎏) DM115方式 三相かご形誘導発電機出力(kVA) 305

冷却装置 強制風冷式燃料タンク容量(㍑) 800

補助電源設備

補助電源装置

形式/質量(㎏) CI27

方式2 レ ベ ル 変 調 三 相 電 圧 形PWM インバータ

交流出力三相交流 440 V 63 kVA、単相交流 100 V 7 kVA、

直流出力 直流 100 V 10 kW

蓄電池種類/質量(㎏) アルカリ蓄電池容量(Ah) 50(5 時間率)主な用途 制御用

JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車) 67

その他の主要設備

主幹制御器形式/質量(㎏) MEC18方式 左手操作ワンハンドル

速度計装置 直動式指示計(アナログメータ)車両情報制御システム

モニタ装置 MON28モニタ表示器 カラー LCD

標識灯前部標識灯 白色 LED後部標識灯 赤色 LEDその他

その他 ワンマン運転設備

空気ブレーキ設備

電動空気圧縮機

形式/質量(㎏) MH3138-C400EF-D4MH / 270圧縮機容量 464 ㍑ / min圧縮機方式 オイルフリー・スクロール式

空気タンク元空気タンク 165 ㍑供給空気タンク 165 ㍑

ブレーキ制御装置 形式/質量(㎏) C250(cMc)、C251(Mc・Mc') / 171

   車

形式動台車 DT87付随台車 TR270

車体支持装置 ボルスタレス方式けん引装置 一本リンク式枕ばね方式 空気ばね上下枕ばね定数 /台車片側(N/㎜)

動台車 -付随台車 -

軸箱支持方式 軸ばり式軸ばね方式 コイルばね

上下軸ばね定数 / 軸箱(空車時)(N/㎜)

コイルばね動台車 1 527付随台車 1 527

ゴムばね動台車 450付随台車 450

総合動台車 -付随台車 -

軸距(㎜) 2 100台車最大長さ(㎜) 3 419車輪径(㎜) 新製時:860 計算用:820

基礎ブレーキ

動台車 踏面片押し式ユニットブレーキ

付随台車踏面片押し式ユニットブレーキ、ディスクブレーキ

ブレーキ倍率3.2(DT87・TR270 踏面)、2.4(TR270 ディスク)

制輪子動台車 焼結合金制輪子(MS523)付随台車 焼結合金制輪子(MS523)、NN46

ブレーキシリンダの数

動台車 4付随台車 4

駆動方式 平行カルダン歯数比(減速比) 7.07継手 TD 継手軸受 円すいころ軸受

質量(㎏)動台車 6 498(Mc・Mc' 車は 6 398)付随台車 4 893

車両間連結装置先頭部 密着連結器中間部 半永久連結器

記事

車体の構造・主要寸法・特性

構体材料 ステンレス鋼構造・工法 溶接組立・レーザ溶接

車両の前面材料 FRP 製前面カバー形状 貫通形

客室の内装材

天井メラミン化粧板など

側・妻床 塩化ビニル樹脂系床敷物

長さ(㎜)先頭車 19 500中間車 -

連結面間距離(㎜)

先頭車 20 000中間車 -

心皿間距離(㎜) 13 800車体幅(㎜) 2 800

高さ(㎜)屋根高さ 3 635屋根取付品上面 4 031.5(空調装置上面高さ)

床面高さ(㎜) 1 150相当曲げ剛性(MN・m2)相当ねじり剛性(MN・m2/rad)固有振動数(Hz) 曲げ: ねじり:

主な旅客設備

側窓 固定式、上部内倒れ式

側扉構造 片引戸片側数 2

戸閉め装置形式 TK121A方式 直動空気式

妻引戸 片引戸腰掛 クロスシート、ロングシート

空調換気システム

空調装置

形式 / 質量(㎏) AU741 搭載方式 屋根上集中式ユニット形特徴 ON/OFF 制御、全自動モード付き容量(kW/ 両) 38.4

暖房装置

方式 腰掛下シーズ線ヒータ(つり下げ式)など

容量(kW/ 両)cMc 車:2.64(空調装置 1.2)Mc 車:2.54(空調装置 1.2)Mc' 車:2.81(空調装置 1.2)

換気方式 自然換気送風方式 天井ダクト:ラインフロー吹出し

室内灯照明方式 直接照明灯具方式 LED

非常通報装置 通話機能付き非常通報装置車内案内表示 LCD 式

放送設備車内向け スピーカ 8台(自動放送付き)車外向け スピーカ 4 台

行先表示器前面 LED 式側面 LED 式

主な移動等円滑化対応設備

電動車椅子対応大形洋式便所、車椅子・ベビーカースペース、ドア開閉予告チャイム

便所主な設備 車椅子対応大形洋式便所汚物処理 真空式

その他

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図2-

1 形

式図

 G

V-E

400(

cMc)

JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車) 69

図 2-3 形式図 GV-E402(Mc’)

図 2-2 形式図 GV-E401(Mc)

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台車両を GV-E400、便所付き片運転台車両を GV-E401、便所なし片運転台車両を GV-E402 とし、GV-E401 及びGV-E402は 2両 1編成である。定員はGV-E400が 99名(座席定員 36 名)、GV-E401 が 111 名(座席定員 40 名)、GV-E402 が 121 名(座席定員 51 名)である。

車両性能は、最高運転速度は 100 ㎞/h、起動加速度は0.64 m/s2(2.3 ㎞/h/s)と 0.50 m/s2(1.8 ㎞/h/s)とを切換可能としている。また、減速度は 0.97 m/s2(3.5 ㎞/h/s)としている。

3 デザイン3.1 エクステリアデザイン

エクステリアデザインは、長年に渡り沿線の日常を支える公共交通としての信頼感、安定感を感じていただけるような力強さ、時代が移り変わっても風化しないシンプルさ

を兼ね備えた外観を目指している。先頭部は大きなガラス面及びエッジの立った面構成によって、金属の塊から削り出したような印象とし、先頭部から側面へ繋がる面構成と稜線の工夫によって、全体の一体感を高めることで力強い立体構成としている。

色彩については、安定感を感じられるよう E129 系と同様に、秋の稲穂をイメージした黄金イエロー色と佐渡・新潟に生息している朱

鷺き

の体色をイメージした朱鷺ピンク色との 2 色を採用し、従来のラインとは異なるドットによって表現することで、シンプルかつ先進性を感じられるデザインとしている。(編集部注:E129 系は本誌 250 号 2015年 9 月参照)3.2 インテリアデザイン

インテリアデザインは、お客さまを包み込むことで安心していただける空間とするために、全体を温かみのある朱

図 3 車体断面

JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車) 71

鷺ピンクを基調としたくつろげる色彩に統一した。視線の中心にくる袖仕切りの出入口側は明るい色彩とし、シートを落ち着いた色彩とすることで、奥行及び立体感を感じられるデザインとしている。

4 車体構造4.1 主要寸法

車体は、軽量ステンレス構体のストレート車体とし、車体幅を 2 800 ㎜、連結面間距離を 20 000 ㎜、車体長さを19 500 ㎜とし、台車中心間距離を 13 800 ㎜とした。台枠上面高さは 1 105 ㎜とし、断熱性及び遮音性を考慮して床仕上げ材の厚さを 45 ㎜としたため、床面高さは 1 150 ㎜とした。側面 2 箇所の出入台については、共用プラットホーム高さ 920 ㎜とのギャップを少なくするため 970 ㎜の高さのステップを設けている。4.2 構体

構体は、209 系以降の新系列電車と同様に、特に強度を要する台枠の一部を除いて、ステンレス材によって構成する軽量ステンレス構体を踏襲し、前頭部は踏切事故対策として強化した。側面からの衝撃に対する安全性向上のため、可能な範囲にて台枠横ばり、側柱及び屋根垂木の位置を合わせたリング構造とし、衝撃を受けた際の構体の変形量抑制を図っている。

5 客室5.1 客室構造

室内の内張りは、側、天井、妻、仕切りともユニットパネルを採用し、取付ねじなどを極力少なくすることによって見付の向上を図っている。

天井厚さは車体中心部で 235 ㎜とし、客室天井高さは2 250 ㎜としている。側天井部は、室内側に傾斜させた形状としており、戸閉め装置をかもい内に設置している。

中央天井板及び側天井板は、アルミニウム樹脂積層複合板を採用し、従来の骨皮構造のパネルと比較して軽量化を図っている。中央天井板は、中央部のレール方向にデザイン上のラインを入れた化粧シートで構成している。

戸袋、吹寄せ、腰板及び運客仕切板(運転室と客室との仕切板)は、メラミン樹脂化粧板を内張りとし、骨組みで裏補強したユニットパネル構造としている。また、機器室、便所仕切り及び点検ふた類は、メラミン樹脂化粧板を内張りとし、塩化ビニル発泡製芯材とで構成したサンドイッチパネル構造を採用している。5.2 室内設備

座席配置はセミクロスシートとし、クロスシートは片側2 列及び 1 列とした。つり手高さはロングシート部の標準高さを 1 630 ㎜、車端部を 1 580 ㎜としている。ロングシート部には中間にスタンションポールを設け、お客さまのつかみ棒、立ち座りの手がかり及び着席区分の明確化を図っている。出入台横の袖仕切りについては、冬季の寒さ対策として大形の袖仕切りを採用している。

各車両の前位寄りロングシート端部には、各種機器を配置する機器室を設置し、機器室正面きせには、非常灯、消火器及び戸閉め一斉開放コックを配置している。5.3 窓及び扉

側窓は、上部内倒れ・下部固定窓を採用することで開口

部面積を確保している。側窓ガラスには、可視光線、日射熱線及び紫外線の透過率が小さいグリーン色の強化ガラスを採用することで、窓カーテンを省略している。このガラスは、直射日光による“ジリジリ感”を緩和するため、紫外線を 100%カットする IR カット合わせガラスを採用している。

側引戸は、車内・車外ともステンレス鋼板を使用し、ペーパーハニカム芯材を用いた軽量構造としている。ガラスについては、押え面を用いずにダイレクトグレージング方式(ボンディング方式)で室内側から固定し、ガラスと引戸内板との段差を極力少なくしている。戸先ゴムは下部を中実断面とすることで、万一ベビーカーが挟まった際にも検知できるようにしている。

妻貫通引戸及び運転室背面仕切引戸は、外板にステンレス鋼板、内板にメラミン化粧板を使用したペーパーハニカムの芯材を用いた軽量構造とし、窓ガラスには防火ガラスをステンレス製の押え金でサポートすることによって、万一の延焼時においてもガラスが溶融・落下しにくいよう配慮している。また、妻貫通引戸及び運転室背面仕切引戸では、ドアクローザによる自然閉機能を有している。5.4 バリアフリー・ユニバーサルデザイン対応設備

バリアフリー機能としては、お客さまが扉の開閉を確認できるように開閉表示灯を設けているほか、引戸にチャイムを設けている。また、優先席部は、壁面及び袖仕切りを朱鷺ピンク色としたほか、腰掛表地、内張板、床敷物及び

写真 3 優先席

写真 4 車椅子スペース

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図4 

運転

室機

器配

写真

5 運

転台

JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車) 73

a) 

床下

機器

配置

 G

V-E

400(

cMc)

b) 

床下

機器

配置

 G

V-E

401(

Mc)

図5 

床下

機器

配置

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c) 

床下

機器

配置

 G

V-E

402(

Mc’

図5 

床下

機器

配置(

続き

写真

6 デ

ィー

ゼル

機関

写真

7 主

発電

機写

真8 

主変

換装

JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車) 75

つり手の色を一般部と変えることによって違いを明確にしている。

車椅子ご利用のお客さまだけでなく、ベビーカーご利用のお客さまにもご利用いただけるスペースを各車両に 1 箇所設置し、壁面の標記のほか床敷物に大きく車椅子マークとベビーカーマークとを表示している。また、車椅子に着

座した状態で使用可能な高さに通話可能な非常通報装置を設けている。5.5 便所・洗面所設備 

GV-E400 及び GV-E401 の車椅子スペースの向かい側には、JIS 規格に適合する電動・手動車椅子で使用可能な大形洋式便所を設け、汚物処理装置は真空式、手洗いは自動水洗を採用している。

大形洋式便所のスペース及び引戸の有効開口幅は、電動・手動車椅子での出入りを考慮したものとしている。壁面などには手すりを設け、手洗い器も便器で座ったまま使える位置とし、呼出し用の非常ブザースイッチを設置している。引戸は電気式自動ドアとし、便所内のドアロックボタンは側壁の開閉ボタンの上部及び便器に着座した状態でも扱えるよう便器脇の側壁に設置した。便所内外の開閉押しボタン及びドアロックボタンは、立った状態でも車椅子に着座した状態でも扱いやすい位置に設置している。なお、便所内の“閉”ボタンを押してドアを閉じたあと、その“閉”ボタン直上に配置したドアロックボタンを操作することによって、扉を施錠可能な回路構成としている。また、便所入口付近には手荷物が置けるようにテーブルを設けている。

写真 9 大形洋式便所

図 6-3 屋根上機器配置 GV-E402(Mc’)

図 6-2 屋根上機器配置 GV-E401(Mc)

図 6-1 屋根上機器配置 GV-E400(cMc)

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6 運転室設備運転室は半室構造とし、非貫通時は客室との間に設けた

引戸によって、運転室及び助士席側の空間を客室と完全に仕切れる構造としている。貫通時の運転室は、引戸によって仕切ることが可能で、助士席側も開戸で完全に仕切ることが可能な構造としている。

ワンマン運転時は、運賃箱の上部を仕切ることによって、乗務員の安全などを図れる構造としており、運賃箱は助士席側背面に完全に収納できる構造としている。

運転台の機器配置については、既存の液体式気動車を基本に電気式気動車特有の機器を追設している。また、運転台計器盤内機器の大形化を図ったが、既存車と同一の前方視認性を確保している。

7 機器配置7.1 床下機器配置

GV-E400 の床下機器配置は、前位寄りから、電動空気圧縮機、発電装置(ディーゼル機関及び主発電機)、放熱器(ラジエータ)、ブレーキ制御装置、車体中央から後位寄りに燃料タンク、主変換装置などを配置している。また、台車と台枠下部覆いとの間に ATS-P 車上子を配置し、手歯止めは 1 位の前位台車付近と 4 位の主変換装置付近に配置可能としている。

GV-E401 は、GV-E400 と同様の配置とし、GV-E402 はGV-E401 の点対称として配置している。7.2 屋根上機器配置

屋根上中央部には、冷房能力 38.4 kW(33 000 kcal/h)のAU741 空調装置を 1 台搭載している。そのほか、運転室上部に AW-2 空気笛、電子笛及び信号炎管装置を配置し、運転室上部及び車体中央上部に広帯域空中線を配置している。また、GPS/ 準天頂衛星アンテナ、次世代閉そくアンテナの取付台を準備工事としている。7.3 車両間設備

車両間の設備としては、車外に転落防止ほろを設置し、プラットホームにいるお客さまの転落防止を図っている。また、車両間には貫通ほろ、さん板及び手すりを設置し、安全に通行できるようにしている。

8 主要機器8.1 主回路システム

主回路システムは、主発電機から得た電力を主変換装置で変換し、補助回路機器及び主電動機へ電力を供給するシステムである。本システムの作動は大まかに分けて“機関始動モード”、“定電圧制御モード”、“抑速制御モード”の3 種に分類される。

(1) 機関始動モード主変換装置内に内蔵したシステム起動用蓄電池を用いて

主発電機を駆動し、機関を始動するモードで、システム起動用蓄電池からの電力供給によって、主変換装置を介して主発電機にトルクを与えるとともに、機関に指令を送って、機関が自立回転を行うまで主発電機にトルクを与え続けるモードである。

(2) 定電圧制御モード機関自立回転後に負荷となる補助回路機器及び主電動機

に安定した電力を供給するため、中間リンク電圧を一定に

制御し、ディーゼル機関及び主発電機で発電した電力を主電動機と補助回路機器とで分け合うモードである。

(3) 抑速制御モード抑速制御時に主電動機で発電した電力を、補助回路機器

の電力及びディーゼル機関を主発電機で回す電力にて消費するモードである。8.2 発電装置

主発電機は、開放形強制通風方式の DM115 を採用し、機関に直結駆動して発電を行っている。

ディーゼル機関は、キハ E120 系・キハ E130 系から採用している DMF15HZ を基本とした DMF15HZD-G を採用した。総排気量 15.24㍑の 4 サイクル直列 6 気筒横形直接噴射式のターボチャージャ及びアフタークーラ付き機関で、定格出力は 331 kW(450 PS) / 2 000 min-1 である。燃料噴射系には、高圧電子制御システムのコモンレール・高圧フュエルサプライポンプを採用することで、クリーンな排出ガス性能と低騒音とを実現している。8.3 主変換装置

主変換装置は、主発電機からの三相交流を直流に変換するコンバータ部、直流から三相一定電圧一定周波数交流を発生する補助電源装置部、また直流から三相可変電圧可変周波数交流を発生させて主電動機 2 台を制御するインバータ部で構成する CI27 を搭載している。主回路半導体としては、ダイオード側に SiC(Silicon Carbide)素子を用い、主回路方式として 2 レベル PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)方式を採用している。8.4 主電動機

電動台車には、全閉形自己通風方式の MT81 主電動機を 1 両につき 2 台搭載した 2 軸駆動としている。主電動機は、全閉構造を採用することで、内部清掃を不要としている。8.5 ブレーキ装置

ブレーキ方式は、電気指令式空気ブレーキ方式を採用している。ブレーキの種類は、常用ブレーキ、非常ブレーキ、直通予備ブレーキ及び耐雪ブレーキの 4 系統を有し、ブレーキ指令は引通し線による電気指令によって行う。

常用ブレーキは、ブレーキ制御装置内のブレーキ制御器で制御する。ブレーキ制御器は、ノッチに応じた指令空気圧を制御し、指令空気圧は応荷重機能付きの中継弁に送ら

写真 10 主電動機

JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車) 77

図7 

動台

車(D

T87)

写真

11

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図8 

付随

台車(

TR27

0)

写真

12 

JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車) 79

図9 

主回

路つ

なぎ

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図10

-1 

力行

性能

曲線(

SIV

出力

80kV

A)

図10

-2 

力行

性能

曲線(

SIV

出力

25kV

A)

JR 東日本 GV-E400 系電気式気動車(量産先行車) 81

れて、所定の BC 圧を出力する。また、コンプレッサの制御については、ブレーキ制御器によって制御する。8.6 電動空気圧縮機

電動空気圧縮機装置は、スクロール式で潤滑油が不要なオイルフリータイプを各車両に 1 台搭載している。空気圧縮機については、吸入フィルタから空気(大気圧)を吸入し、780 kPa まで昇圧して圧縮空気を吐出している。電動機、空気圧縮機本体及びリード弁箱は、防振ゴム支持の制振構造としたベースプレート上に設置している。

除湿装置は、空気圧縮機によって圧縮・加熱された後、アフタークーラで冷却して湿った圧縮空気を除湿し、2 次側へ供給する。除湿作用によって除去された水分は、パージ空気とともに水蒸気として排出される。8.7 補助電源装置

補助電源装置は主変換装置に搭載し、中間リンク電圧の直流 750 V を変換し、三相交流 440 V の各補助回路(補助

変圧器(TR2)、空気圧縮機、空調装置、ラジエータなど)に電力を供給する。

また、コンセント・サービス機器などの交流 100 V 回路は、三相交流 440 V を補助電源装置に内蔵している補助変圧器(TR2)で単相交流 100 V に変圧し、制御電源の直流100 V 回路は、TR2 と整流ユニットとによって、三相交流440 V を直流 100 V に整流している。8.8 蓄電池

制御用蓄電池は、公称電圧 7.2 V の単位電池(モノブロック蓄電池)を接続導体で直列に接続している。単位電池は、単電池 6 セルで構成し、正極板、負極板、セパレータ、モノブロック電槽及びふた、液口栓ふた、電池カバー、電解液、極柱、座金、ボルトなどで構成し、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して内部に貯えておき、使用時に直流電力を供給するものである。8.9 空調装置及び暖房装置

空調装置は、38.4 kW(33 000 kcal/h)の屋根上集中式空調装置 AU741 を搭載しており、室内の天井中央部に CAダクト(冷風ダクト)、側天井部に固定式のフィルタを取付けている。なお、十分な風量と容量が確保できているため、横流ファンは設置していない。

耐寒耐雪仕様としては、室外機上面カバーの板厚向上及び補強追加によって強化している。

空調制御は年間を通じて冷房・暖房を自動で選択する全自動制御としている。カレンダー機能による季節認識、車内温度・湿度・車外温度及び乗車率を検知することによって“冷房”、“暖房”、“除湿”、“送風”モードを決定して最適温度設定を行う。冷房装置は、2 段階に風速制御可能な室内送風機、内蔵ヒータ(急速暖房、除湿)などによって、快適制御を行う。

暖房はシート下部のつり下げ式ヒータ、空調装置内蔵の電気ヒータ、デッキ部の壁設置ヒータなどによって行う。また、空調制御に用いた各種データを、空調制御器に蓄積できるデータロガー機能を有している。

図 11 ブレーキ指令曲線

写真 13 電動空気圧縮機

2018- 9「車両技術 256 号」82

8.10 戸閉め装置戸閉め装置は、半自動機能付き直動空気式を採用してい

る。ドアが閉まった後に、一旦、戸閉め力を弱める戸閉め力弱め機構を設けることによって、万一ドアに挟まった際でも容易に脱出できるように配慮している。8.11 車両情報制御システム

モ ニ タ 装 置 は、 基 幹 伝 送 を 従 来 の 標 準 で あ っ たARCNET 方式からイーサネット方式に向上させ、機器間伝送については RS-485、編成間伝送は ARCNET を採用している。

モニタ装置については、運転状況記録装置機能をもったMON29A を搭載している。また、両運転台車両の GV-E400 では、一方の運転台が破損してしまった場合にも運転状況を記録するために、反対側の運転台に運転状況記録装置のバックアップ用として MON29B を搭載している。また、各機器との入出力機能をもつインタフェースユニット MON29C を各車両に搭載している。

運転台には、7.5 インチのタッチパネル式表示設定器を搭載し、モニタ装置に接続した主回路、ブレーキ制御装置、空調制御器、ワンマン制御装置及びディーゼル機関などの状態情報を乗務員及び検修員が把握できるようにしている。

乗務員支援機能に関しては、従来のワンマン設定器の機能をモニタ装置に移管することで、ワンマン設定器の設置を省略している。ワンマン及びツーマン運転時の系統番号設定については、モニタ装置の表示設定器から行い、従来の操作盤に設けていた“駅送り”、“駅戻し”などの押ボタン操作は、表示設定器でのタッチ操作としている。また、自動放送、案内表示器などの“一括入”、“切指令”に関しても表示設定器からの操作を可能としている。

検修支援機能としては、自己診断機能及び各種記録機能を有している。自己診断機能は自動放送装置及び前面・側面表示器に対するテスト指令の送信、モニタ装置の作動チェック用機能を有している。記録機能は、運転状況記録、故障記録、状態監視記録を全てのモニタ装置内に記録している。8.12 運転保安装置

保安装置は、統合形 ATS 車上装置(Ps 形)を搭載している。この装置は ATS-P 及び ATS-Ps の機能を 1 台に集約し、さらにブレーキ出力を非常ブレーキのみとすることで、装置自体の小形化及びぎ装配線の削減を実現している。

運転台の動作表示器は、E129 系と同様に P・Ps 統合形動作表示器を採用しており、従来の P 表示灯、Ps 表示灯及びパターン速度インジケータを一つのユニットに集約したほか、ATS ブレーキの作動要因及び装置の故障要因を表示できる機能を追加している。

さ ら に 乗 務 員 支 援 の た め の 音 声 機 能 を 強 化 し、ATS-P、ATS-Ps いずれの区間でも音声メッセージの出力を行うようにしており、ATS-P で用いている単打ベルも音声機能による電子音としている。

車上装置は、送受信制御部、継電器盤及び P・Ps 切換器で構成し、P・Ps 切換器にエンド交換用のリレー類を内

蔵することによって、運転台選択スイッチの設定に応じて関係機器類が自動的に切り換わるようにしている。なお、EB・TE 装置についても搭載している。8.13 車内案内表示装置

車内案内表示は、運客仕切板運転室背面仕切り戸上部に取り付けた LCD の運賃表示器にて、現在駅、次駅、行先、次駅のドア開方向などの表示を行い、ワンマン運転時には先頭車の表示器だけ運賃表を併せて表示する。運賃表示器の表示の“切”、“入”については、モニタ装置の表示設定器から設定可能としている。8.14 行先表示器

行先表示器は、3 色 LED 式で列車名、列車種別、行先駅名などを表示できる。前面行先表示器は 5 文字 2 段タイプ、側面行先表示器は 8 文字 2 段タイプである。表示内容はワンマン制御装置から文字コードとして伝送する。前面行先表示器及び側面行先表示器の表示の“切”、“入”はモニタ装置の表示設定器から設定可能としている。8.15 放送装置及び非常通報装置

放送装置は、通常の車内外放送及び連絡通話の機能を有し、車内外の切り替えは 5 ㎞/h 未満で車内外放送を行い、5 ㎞/h 以上では車内放送を行う。車内放送の“切”、“入”についてはモニタ装置画面から設定可能としている。

非常通話装置は、ブザー音だけでなく乗務員と相互に通話可能なタイプとしており、どの車両から非常通報が扱われているかを、モニタ装置の表示設定器で確認可能である。8.16 ワンマン運転設備 

ワンマン機器は、前位寄りの仕切妻面に運賃箱及び車内案内表示器を設置し、整理券発行機を後位寄り出入台に設けている。ワンマン運転時の後方確認のため、仕切り開戸の助士席側上部にワンマンミラーを設置している。

9 台車台車形式は、動台車(M 台車)が DT87、付随台車(T 台

車)が TR270 である。車輪形状は、M 台車用が B 形波打車輪、T 台車用が N-A 形波打車輪を採用し、車輪径は860 ㎜である。車軸軸受は、円すいころ軸受 JT12H を採用した。

軸箱支持装置は、動台車、付随台車とも軸ばり式を採用し、GV-E400 の 第 1 軸・ 第 4 軸 及 び GV-E401・GV-E402の第 1 軸に増粘着装置(商品名:ミュージェット)を取り付けている。また、歯車装置は、歯数比 7.07 である。

10 おわりに2018 年 1 月 に、GV-E400 系 量 産 先 行 車 で あ る、GV-

E400、GV-E401、GV-E402 の 3 両が落成して新津運輸区に配属となり、現在、各機器の基本性能を評価・検証するため新潟地区で走行試験を実施している。量産車については、新潟地区に 2019 年度までに、秋田地区に 2020 年度までに導入の予定である。

JR 東日本が培ってきた電車の技術及びメンテナンス方法をフィードバックさせ、今後の気動車置換えのベーシックな車両となる GV-E400 系電気式気動車にご注目いただければ幸いである。