Goal-Oriented Critical Reasoning and Individual...

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Goal-Oriented Critical Reasoning and Individual Differences

in Critical Reasoning Biases

BBS文献発表 05.6.8Rep. 田中優子

Paul A. Klaczynski, David H. Gordon, and James Fauth

1997 Journal of Educational Psychology, Vol.89, No.3, 470-485

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文献紹介の前に

関心=Critical Thinkingの個人内変動これまで能力・傾向性(長期間持続)は検討されてきている.

• 能力テスト,態度尺度,志向性尺度などが開発

• 個人差を測定

テストや尺度で「できる人」と評価された人• 条件にかかわらず,“常に同じ程度できる”のだろうか?

• そのポテンシャルを持っているだけで,実際のパフォーマンスは条件によって変わるのでは?

とすると...• 実際のパフォーマンスを予測するには,従来のテストや尺

度+αが必要

+α・・・・・個人内変動を予測するモデルでは?

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ここから文献紹介

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問題

生徒が学校で獲得するスキルに教育者たちがますます関心.

効果的な批判的思考

2つの要素からなる1つの機能(Baron, Granato, Spranca, & Teubal, 1993ほか)

基本的能力

• 認知的な作業を行うための基本的能力.

• 例)自分の推論や他者の推論の論理的な欠陥を検出する能力.

メタ認知的な能力

• 生徒は,自分の目的や信念と独立に,証拠を評価しなければならない.

• つまり,生徒は信念と関連する情報が信念と同時に存在しようがしまいが,それに対して相当の処理資源を配分しなければならない.

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問題

効果的な批判的思考の介入への障害も標準化された批判的思考のテストは,批判的推論能力

のみを測定.

信念システムが批判的推論能力の活用に及ぼす影響力を排除.

本研究の目的批判的思考の3つの構成要素(LLN推理,ANCOVA推理,実

験評価)を大学生がどの程度もっているか?

個人的な目的が,3つの能力にどの程度影響を与えるか?

知能の個人差が,3つの能力を用いた推論をする可能性とどの程度関連しているのか?

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問題

個人差変数

批判的思考能力の使用を管理するかもしれない,個人差変数の探求はあまり注目されてこなかった.

個人差変数が明らかになれば,批判的思考教育の重要な鍵を提供するかもしれない.

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問題

批判的思考における目標指向バイアス

成功する教育プログラムの開発

客観的な情報処理プロセスの根底にあるメカニズムを解明することが必要.

しかし,人はその推理方略を自分の目的や信念を保つために適用する(Care, 1986; Kunda, 1990など).

結果として,教育者が望むような「客観的な情報処理プロセス」ではなくなる.

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問題

批判的思考における目標指向バイアス

例1)職業を決めようとしている人自分の知っている唯一の心理学者が財政的に成功し需要が高い

⇒⇒心理学者として職業を決定するかもしれない.

LLN(大数の法則 the law of large numbers)違反

• 母集団についての推論の確からしさは,標本の増加にともない増加.

協力的な条件においてのみこの原則を使用(Fongら,1986)

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問題

例2)経営学教授は歴史学の教授よりも高い生活の満足を

得ていると主張するが,両者の給与や活動の負荷などの違いは無視して,経営学は本質的に歴史学よりも楽しい分野であるという結論を導く人.

職業と生活充足という2つの変数には,第三の変数が根底にあるかもしれない.

ANCOVA方略(認知的に第三変数の効果を制御する)は通常

用いられないが,条件によっては,多変量的な推理が向上する(Schaller & O’Brien, 1992).

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問題

例3)専門的な科学雑誌を読んでいるが,その研究の妥当

性を脅かす欠陥を無視している人

一般に,そのような脅威を検出することは難しいが,状況が整えば科学的な推理は向上(Klaczynski & Gordon, 1996)

データ分析を誤ると,誤った職業選択を導く.

批判的推理に必要な基本的能力を持っていても,限られた文脈的条件しか働かない.

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問題推理バイアスを仲介する個人差変数

知的能力

メタ認知的スキルも知能の中心的な要素

• 自分の思考をモニター,矛盾に対する敏速さを持っていること,

• どのように処理資源を分配するか決定すること.

標準的な知能検査で高得点の人

• より頻繁にメタ認知的プロセスを行うだろうか?

被験者内計画

• 個人が,目的強化問題や目的脅威問題において異なる方略を用いるかどうか

• その時々で推理方略を切り替えるかどうか,・・・検討可能.

知能がメタ認知的傾向性と関連していれば

• 高い知能得点を取る人は,推理方略の切り替えをあまり行わないだろう.

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Studies1a &1b : 目的

推理バイアスに及ぼす「知的能力」の検討

4つの要因の関係を検討

動機づけられた目標

LLN推理

ANCOVA推理

実験評価スキル

個人の推理に及ぼす目標の効果を,被験者内計画で検討

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Studies1a &1b : 目的

Study 1aLLN推理が明らかに適用できる問題を提示

各問題は,被験者の職業的な目標を好ましい(or好ましくな

い)ように表現する議論や証拠で構成されている.

「目標強化問題」:職業が好ましいものとして表現

• LLN推理は,この好ましい証拠を割り引いてみることを被験者に

強いる.

「目標脅威問題」:職業が好ましくないものとして表現.

• LLN推理を使用することによって,それらを疑うことができる.

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Studies1a &1b : 目的

Study 1b学生がANCOVA推理を使用する際の目標の効果

実験計画に含まれているエラーを検出する際の目標の効果

ANCOVAと目標を「強化/脅かす」実験評価問題を提示

次の仮説が検討された.A) LLN推理(1a),ANCOVA推理(1b),実験計画の不備の検出(1b)を

行いながら批判的に分析することのできるデータが提示されるとき,

目標を強化する問題よりも,目標を脅かす問題において被験者はより批判的な推理形式を利用する.

B) もし「知的能力」説が正しければ,能力の高い被験者は,3つの批判的思考能力をとおして,偏った推理を比較的行わないだろう.

C) 全体的な得点において,言語能力の高い人はLLN推理や証拠

評価スキルを比較的頻繁に使用するだろう.

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Studies1a &1b : 方法

被験者

1a:心理学入門の授業を受けている60名(授業要件)

4人以下の少人数で実施.およそ45分

1b;心理学入門の授業を受けている62名(授業要件)

4~10人の小集団で実施.およそ75~90分.

手続き(1a・1b共通)

① 各被験者に職業目標を尋ねる自由解答式の質問.

② 言語能力・帰納的能力の測定

SILS(The Shipley Institute of Living Scale)で測定

言語能力:40項目からなる下位尺度

帰納的能力:20項目からなる抽象的な下位テストから推測

③ 批判的推理問題

1a:LLN問題

1b:ANCOVA問題,実験評価問題

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Studies1a &1b : 方法

LLN問題(計6題 構造3×問題タイプ2)各問題で,仮想の人物は被験者の職業上の目標を「脅かす/強化する」議論を提示される.

強化:被験者の目標と社会的幸福の正の相関を示している.

脅威: 〃 負の相関 〃

被験者は,本質的には同じ問題を提示されている.問題のフォームと問題で議論される職業だけが被験者間で異なる.

各問題について評定説得性:9段階(1:まったく納得できない~9:非常に納得)

証拠の評価:9段階(1:非常に弱い~9:非常に強い)

得点目標強化問題,目標脅威問題独立に得点化

各3-27score.

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LLN problems : structure1-3

ある人が小さな標本や予期すべきことから逸脱した結果から,急いで結論を導く問題.

「性急な一般化の錯誤」と「平均への回帰」を含む.

構造3

2つの仮想議論.

1人は小さな標本と個人的な経験に基づいて結論を導くき,もう1

人はより大きなデータベースから矛盾する結論を導く問題.

構造2

構造1 単一事例や小さな観察標本から結論を導き出す仮想議論.

「性急な一般化の錯誤」を含む問題

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Studies1a &1b : 方法

ANCOVA問題(計8題 構造4×問題タイプ2 )被験者が将来なりたい職業のメリット・デメリットについて仮想人物が議論している現実的な文脈に埋め込まれた問題.

各問題では,被験者の目標と他の特徴との相関に関する,「目標強化/目標脅威」議論が提示.

議論は,観察された偽相関を作る変数を無視するか,考慮するかのいずれか.

各問題について評定

説得性:9段階(1:まったく納得できない~9:非常に納得)

証拠の評価:9段階(1:非常に弱い~9:非常に強い)

得点

目標強化問題,目標脅威問題独立に得点化

各4-36score.

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ANCOVA problems : structure1-4

1人が職業と肯定的/否定的特徴との相関関係に関して,もっともらしいが

データに基づかない理論を主張.もう一人が,その関係の根底にある第三の変数を提案することで主張に反論.

構造4

1人は,強化/脅かすような相関を提示し,職業が因果変数であると論じる

が,もう1人は,職業以外の第三の変数が真の因果変数であると反論.構造3

構造1と類似.その関係は因果関係として扱われ,媒介変数は言及されない.

ANCOVA推理:元々の相関関係では,職業は因果的な変数ではなかった

かもしれないという認識.

構造2

構造1 被験者の職業上の目標と肯定的/否定的特徴との相関関係は実は因果関

係だと主張する人の議論.

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Studies1a &1b : 方法

実験評価問題 (計6題 構造3×問題タイプ2 )心理学や社会学研究の要約をいくつか提示すると教示.

6題のシナリオ(以下の4点を含む)

①参加した仮想の被験者の描写,②彼らの職業(そのうち1つは被験者の希望の職業),③研究方法, ④研究の結論

3種類の構造:内的妥当性の恐れが異なるタイプ

各問題について評定

結論の強さ:9段階(1:非常に弱い~9:非常に強い)

実験の妥当性:9段階(1:非常に妥当でない~9:非常に妥当)

• なぜ「妥当-妥当でない」と思ったか記述.

得点

目標強化問題,目標脅威問題独立に得点化

各3-27score.

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実験評価問題 : structure1-3

独立変数の構成概念妥当性が疑われる問題.構造3

いくつかの関心のある変数で,被験者の職業と他の職業を比較しているが,選択の交絡が含まれている研究について述べたもの.

構造2

構造1 第一の独立変数が他の変数と交絡している擬似実験研究の説明.

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Studies1a &1b : 方法(得点化)

LLN推理

問題のタイプを隠して2名で独立に評定.

20人の被験者(120問題)における評定者間の一致率は88.3%

0点:統計的な概念(標本サイズ,信頼性など)への言及がない

1点:統計的原則への言及はあるが,漠然としていて不十分.

2点:明らかにLLN原則にそって判断している.

ANCOVA自由回答式質問

0点:共分散の可能性に気づかず,職業とその特徴の相関を受けいれている./相関を棄却しているが,相関が誤りであるとかその証拠を信じていな

いなどとは主張していない.

1点:相関関係はかならずしも職業とその変数の因果関係を伴うもので

はないと指摘しているが,他の変数の存在は明示的に指摘していない.

2点:偽相関をつくる他の変数が存在する可能性を明示的に指摘.

28人の被験者(204題)における一致率は82.4%

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Studies1a &1b : 方法(得点化)

実験評価問題0点:実験の妥当性に対してなんら恐れが示されない.

1点:実験に交絡があることに気づいているが,交絡の存在が

発見の率直な解釈を不可能にすることを指摘していない.

2点:実験の交絡が発見の解釈や結論を導くことを不可能にす

ることを指摘.

28人の被験者(204題)における一致率は91.8%

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Studies1a &1b : 結果1a

LLN推理

説得性,証拠の評価

目標強化>目標脅威

LLN推理の生起頻度

目標強化<目標脅威

推論や評定に問題形式の効果はみられなかった.

LLN推理の目標強化/目標脅威の違いは問題形式に帰属でき

ない.

生徒は,自分が期待している職業について好ましくない結論を疑うことが可能になるとき もLLN推理を使用.

好ましい証拠が提示されたとき,LLN推理をまれに使用し,

目標に関して不愉快な結論を避ける.

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Studies1a &1b : 結果1a

LLN推理と知的能力との関係

SILS(言語能力/帰納的能力)

M=26.5(range:15-35),M=14.27(range: 9-18)

言語能力:LLN推理と有意に相関(r=.30,p=.02),帰納的能力との関

連はなし.

得点のバイアス

評定バイアス:「目標強化」評定-「目標脅威」評定

• 得点差が大きいほどバイアスが大きい

• 能力との負の相関=能力の高い人は問題の認識においてあまり偏りがない.

LLN推理バイアス:「目標脅威」得点-「目標強化」得点

• 正の差が大きいほど目標バイアスを受けた推理であることを示す.

評定バイアスと推理バイアスは能力と関係していなかった

予想と不一致

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Studies1a &1b : 結果1b

ANCOVA推理

説得性,証拠の評価

目標強化>目標脅威

より複雑な推理の生起頻度

目標強化<目標脅威

実験評価スキル

結論の強さ,妥当性

目標強化の仮説研究>目標脅威

自分の信念と合致したデータは,信念を脅かすデータよりも容易に受け入れられている.

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Studies1a &1b : 結果1b

動機づけられた推理と知的能力との関係

SILS(言語能力/帰納的能力)

M=26.58(range:15-34),M=14.76(range: 8-20)

言語能力:実験評価推理と有意に相関(r=.32,p=.01)

実験評価推理:帰納的能力との関連はなし.

得点のバイアス

評定バイアスと推理バイアスは能力と関係していなかった

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Studies1a &1b : Summary & Discussion仮説A

個人的な目標は,人が目標に関する情報を評価したり判断する際に影響を及ぼすという予想

1aと1bによって支持された.

被験者の職業にたいする肯定的な見方と矛盾する証拠が提示されたとき,LLN推理,ANCOVA推理,実験評価スキルがより誘発.

ヒントや手がかりが与えられなければ,批判的思考のスキルはしようされないのでは.

逆に,目標を守るという動機があれば,被験者は洗練された推理を行うのでは.

LLN推理,ANCOVA推理,実験評価スキルの選択的使用

脅威となる証拠の提示:十分な証拠がないので目標に関する結論は導けないと主張.

目標強化問題:少数の標本を使い,好ましい結論を許容する.

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Studies1a &1b : Summary & Discussion

証拠の強さ,説得性,妥当性の評価(1b)

結論が目標を強化するとき>目標を脅かすとき

推理得点(1b)

目標を強化するとき<目標を脅かすとき

仮説B,C知的能力は推理バイアスと関連するという仮説は支持されなかった.

言語能力も帰納的能力も推理バイアスを予測しなかった.

高い知能の人でさえ,推理スキルを偏った方法で使用する.

知能は合理性をとらえていない.

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感想

疑問Critical reasoningとCritical thinkingの違い

批判的推理が批判的思考の構成要素という位置づけ

推理以外の構成要素等については不明.

被験者内計画で,目的変数を扱った実験修論のときは発見できなかったが,あった.しかし,8年も前・・・

メタ認知の位置づけの違い本研究:メタ認知が高いほど,方略のスイッチをしない(信念や目標に合致しない情報にも資源を分配するから).

私の考え:メタ認知が高いほど,方略のスイッチをする.• 「方略」のとらえ方の違い.