アレルギーについて - kokusen.go.jp ·...

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「食べ物」を通して、健康から環境問題など社会問題に触れます。

2013.6国民生活

06

生活知識情報

サカモトキッチン・スタジオ主宰。料理研究家。相愛大学客員教授。農林水産技術会議委員。食育を30年以上前から提唱している。ほかに介護、防災、食の村おこしなど幅広い分野で問題解決に取り組む。

坂本 廣子 Sakamoto Hiroko

第 9 回

アレルギーについて

食物アレルギー

昨今は食物アレルギーを持つ子どもが多いた

め、子どもの「食育」活動をする際は、アレル

ギーを持つ子どもへ配慮し、安全に授業等を行

わなければなりません。子どものアレルギーは、

成長と共に減ることもありますが、一方で大人

になってからアレルギーを発症する場合もあり

ます。

2011年には、洗顔せっけんにより小麦アレル

ギーを発症する事例が明らかになりました。こ

れは、小麦を食べて発症したのではなく、アレ

ルギーの元になりやすい成分(アレルゲン)を含

有するせっけんを使用して発症した例です。ア

レルゲンが皮膚、眼や鼻の粘膜などに少量付着

し、繰り返し使っていると一部の人がそのアレ

ルゲン成分に対してアレルギーになってしまう

ことが考えられるようです。

せっけんに含まれているのは小麦そのもので

はなく、加水分解コムギという小麦由来のたん

ぱく質で、粘膜や皮膚から侵入し、からだがこの

成分を危険なものと判断し、小麦のアレルギー

が粘膜や皮膚等で成立したとしても全身でアレ

ルギー反応が起こり、一部の人が小麦を食べた

ときに反応を起こすようになったと考えられま

す。これはアレルギー体質でない人にも起こり

ました。食品そのものを食べなくても、せっけ

んなどの成分に対するアレルギーにより食物ア

レルギーを発症したという現象は、それまでは

知られていなかったことだといわれています*1。

アレルギーの対応方法

アレルギーになったときの対応策として、ア

レルゲンを摂取しないだけではなく、皮膚等か

らも入らないように注意しなくてはなりません。

例えば甲殻類にアレルギーがあれば、その台所

では、エビフライを揚げたり炒めたりしてはい

けません。空気中にその要素が出るからです。

揚げ物の油や、よく洗ったフライパンにも残っ

ている可能性があるので、同じものを使わない

ようにします。私たちの食育教室でも、卵を一

度も使ったことのないたこ焼き器や鉄板、ピー

ナツを一度も使っていないすり鉢やすりこぎを

必ず準備しています。もちろん、菜ばしに至る

までアレルゲンの付着を避けます。

市販の食品にアレルゲンが含まれているかを

知るには「食品表示」を見るしかありません。材

料に占める重量の多いものから順に表示され、

アレルゲンを含む食品を同じ工場で作っている

という表示があればより安心です。

一方で、表示があっても、見落とす場合もあ

ります。食べた後に表示を細かく見て「あら!」

となることもあります。ノリのふりかけに貝エ

キスが、お好み焼きソースにオイスターソース

が、ケチャップにパイナップルが、と思いがけ

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生活知識情報

ています(写真)。配給される食料の表示が読

めない子どもであっても、パッと見て分かる情

報を書き込んでおけば配給のときに配慮しても

らえるでしょう。命にかかわることですので、

小さなカードではなく、必ず目立つものにしま

しょう。

代替食で食体験を

アレルゲンになる食品を除去する際、特に気

をつけたいのは、子どもの成長に必要なタンパ

ク質を摂取するようにし、栄養不足を起こさな

いようにすることです。アレルゲンのタンパク

質の代わりに、他の食べられるタンパク質を意

識して入れるようにします。それもできる限り

形も色もそっくりに作るように心がけるといい

でしょう。例えば、原料に卵を使うマヨネーズ

は、卵の代わりに米粉を使って作れば、フェイ

クであってもマヨネーズの体験ができるので

す。食育の授業では、子どもによってどこまで

体験ができるかのレベルは異なりますが、でき

る限りあらゆる食体験ができるよう工夫をして

います。*1 �参照「リウマチ・アレルギー情報センター」

http://www.allergy.go.jp/

*2 �アレルギー反応により皮膚や消化器、呼吸器の症状などが複数同時にかつ急激に出現した状態。

*3 �財団法人日本学校保健会「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」

ない食品が入っていることがあるのです。そう

ならないためにはまず、買い物のときに、表示

をしっかり読んで購入することです。アレル

ギーに配慮した製品などもあるので、それを利

用してみんなと同じように食べられる体験を増

やしてあげましょう。

給食においては

学校給食においては、除去食や代替食をお願

いしなければなりません。

調布市では、給食の誤食事故で食物アレルギー

を持つ少女が死亡しました。学校に除去食を

作ってもらっていたのにもかかわらず、さまざ

まな要因が重なってアナフィラキシー*2を起こ

して命を落としたのです。アナフィラキシーを

起こした場合の救急対応としては、注射薬のエ

ピネフリン製剤をすぐに用いることで症状を緩

和することができます。注射できる人の範囲の

拡大などが行われた後*3に事故が起こったの

で、どうして起こってしまったのかと思ったの

ですが、実際に注射ができたのは処置すべき時

間の後だったと分かりました。周りが十分に注

意を払い迅速に応急手当することが大切です。

災害時のアレルギー対応

大災害のときも同じです。アレルギーを持つ

人を救うために、周りの人の意識を高めておく

ことが大事です。避難所などでは、まずアレル

ギーを持つ人に食べられるものを先に選ばせて

あげてほしいのです。そして、何でも食べられる

人が後から配給を受けるなどして、アレルギー

を持つ人の「命」にかかわる“特別扱い”が皆

の共通意識になってほしいと思っています。

また、防災用品のなかに「たまご食べられま

せん!」などと大きな文字で書かれた「アレル

ギー表示たすき」を入れておくことをお勧めし

災害時の「アレルギー表示たすき」