通院治療 休暇制度 がんになっても - mhlw.go.jp · 2018. 6. 2. · サービス業...

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  • サービス業

    利用者の休暇制度

    CASE18

    36 37

    通院治療を支える休暇制度でがんになっても前向きに働ける

    健康診断休暇、治療休暇制度

    万一に備える休暇制度

    ①がんの通院治療を支える特別休暇制度を導入②がんへの不安を和らげ、罹患していない社員も前向きに働ける

    ポイント

     東京都台東区に本社を置くティーペックは、1989年6月に創業して以来、健康相談サービス事業のパイオニアとして成長を遂げてきた。11期連続で増収増益を記録したことからも、健康に対するニーズの高まりが見て取れる。 健康を提供する企業だからこそ、提供元も健康でなければならないという企業理念も、ティーペックには根付いている。代表取締役社長である砂原健市さんに、そのあたりを伺った。

    ○ 設立:1989 年○ 事業内容:電話による健康相談ほか、医療関連サービスおよび EAP 関連サービス

    ○ 従業員数:正社員195名(2015年6月現在)

    ○ 年次有給休暇の取得率:70%○ 年間休日数:122 日○ URL:http://www.t-pec.co.jp/

    企業プロフィール  ただ、この健康診断の結果で、ひとつの問題と直面することになりました。制度を運用して間もなく、マネージャーとして活躍していた女性社員にがんが見つかったのです。適切な治療を行えば完治できる段階であり、安心したのですが、それまでがんに罹った社員に対する就労支援は特に設けていませんでした。そのマネージャーは手術が無事に成功して職場復帰を果たしましたが、再発を防止するためには、しばらく放射線治療や抗がん剤治療を継続しなくてはなりません。そのためにはたびたび仕事を休まざるを得ないわけですが、就業規則上は年次有給休暇を消化するしかなく、使い切ってしまった後は、治療のための欠勤を理由に賃金を減額しなくてはならない状況になってしまいます。それではいけないと考え、安心してがんと向き合ってもらえるよう、新たな休暇制度の設置が必要だと判断したのです。

    特別な休暇制度で通院治療を支え多くの社員に安心を与えた

     そうして生まれたのが、がんを対象とした治療休暇制度です。毎月2日まで取得することができる特別休暇で、法律で定められたものとは別の有給休暇扱いとしています。治療の状況に応じて半日単位で取得できるようにして、柔軟性も持たせました。 この特別な休暇制度は、がんに罹った女性マネー

    ジャーにさっそく活用してもらいました。同時に就労時間の時差出勤や職場の配置転換、メンタルヘルス対策なども導入し、仕事とがん治療の両立を力強く支援しています。運用にあたっては、がん罹患の事実を職場に情報開示しなければならないことから、正式な制度化によって利用しやすい環境にすること、また本人の希望に応じて一部管理職のみに情報を留めることも配慮しています。 現在、治療を終えた女性マネージャーは元気に仕事に励んでおり、その姿は周囲に明るい影響を与えています。 制度運用後、新たに5名の社員にがんが見つかりましたが、いずれも早期に治療できたことから通院が不要だったため、治療休暇制度の利用者はまだ1名に留まっています。しかし、彼女の活躍ぶりは制度の周知を促し、万一がんになってしまっても安心して治療と仕事を両立できるという、ひとつのモデルケースになりました。 「宝」である社員の健康にかかる費用は、コストではなく投資です。この治療休暇制度も、非常に大きなリターンをもたらしてくれると考えています。みんなが安心して前向きに働けることが幸せにつながり、ひいてはお客様にも充実したサービスを提供できるようになるのだと思います。

     2011年のことでした。課長職を務めるある女性社員に、がんが見つかったのです。当社にとって掛け替えのない戦力でしたし、その方は

    2人のお子さんを育てている世帯主でもあり、がん発見の一報は大きな衝撃を与えました。当社の社員のおよそ6割は女性で、女性特有のがんは好発年齢が低いため、現役社員が罹患する可能性は決して小さくないのです。この方を制度面からもサポートするため、早急に各種の支援策を取り入れ、さっそく活用してもらうことができました。治療休暇制度を使って放射線治療と抗がん剤治療を受けられ、

    仕事と治療のどちらも犠牲にすることなく続けられたことで、現在でも再発することなく元気に勤務されていらっしゃいます。病気は深刻な悪影響を及ぼしますが、それは身体ばかりではなく心も含まれます。特にがんともなれば目の前が真っ暗になり、6人に1人はうつの症状を起こしてしまうとも言われています。そうした状況の中、今回整備した新制度が「仕事を安心して続けられる」と精神的な側面でも支えられたのだとすれば、大きな役割を果たすことができたのだと考えています。

    (人事部部長 大神田直明さん)

    社員ががんに罹ったとき支援体制の不足に気づいた

     お客様に対して適切なサービスを提供するには、豊富な知識や情報を持つだけでなく、お客様に寄り添う気持ちが第一に必要となります。しかし、もし社員自身が大きな問題を抱えていれば、それは適わなくなるでしょう。社員が幸せでなければ、お客様を幸せにできないのです。そうした考えは「社員は宝だ」という言葉で表現しておりまして、実質的な取組みとして福利厚生の部分にも現れています。

     たとえば社員の健康増進の一貫として、禁煙支援を実施しました。成功手当を付与したり、私自らが先頭に立って周知徹底を促したりすることで、それまで4人に1人だった喫煙者は支援開始から2年1ヵ月でゼロになりました。定期的なストレスチェックや多彩なサークル活動などを通じて、こころの健康や社員間交流も深めています。 2009年からは、特別な休暇制度のひとつとして有給休暇扱いの健康診断休暇制度を設置しました。定期健康診断の受診日をゆっくり過ごせるよう配慮したもので、いまや受診率は100%を記録しています。

    お話を伺った砂原社長

    ティーペック株式会社 東京都