第7図 酢酸濃度とBDV変化率の関係 - Hitachi絶 縁 の 耐 性 865 二空...

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  • u.D.C.621.315.引7:る20.193.4

    気 絶 縁 塗 料 の 耐 薬 品 性ChemicalResistance of the ElectricInsulating Paint

    古 賀 弥* 友 部Wataru Koga Susumu Tomobe

    進**

    内 容 梗 概

    絶縁塗料の耐薬品性を知るため,第1に塗臆そのものを薬品によって劣化させた後の絶縁破壊電圧を

    測定し,その変化率によって順位を決定した。第2に塗院に対する薬品の透過性を測定し,本体の変化

    の少ないものでも透過性が人きく内部金属が侵される危険性のあるもののあることを指摘Lたノ。最後に

    以上の結果を総合して耐薬品塗装法を提案した。

    1.緒 言

    わが国における化学工~業の急速な発題に伴い,酸,ア

    ルカリなどの

    うになった。

    品に耐える電気機器が強く要望されるよ

    機てつがたし の生命をなす絶縁塗料の耐

    酸,耐アルカリ性などを究明することが重要な諌髄とな

    ってきた。

    絶縁 料,一般塗料を関わず,耐蓮ぷ性試験としては

    塗膜を試験 品に-一定時間浸漬した後で,硫膜の状態段

    化を肉眼観察し良とか不良とか判定するのが従来行われ

    てきた方法である。しかしこの方法でほ主観が入りやす

    く,しかも定量的な値が得られないので順位決定は困難

    である。まれに重量変化,厚み変化を測定する方法もみ

    られるが,付加,溶解,膨潤,崩旗などの反応が入り乱

    れるので解析が困難である。

    そもそも 膜の耐薬品性としてほ,二つの性能を考慮

    する必要がある。第1にほ,塗膜そのものの変化であ

    る。従来行われた外観変化などほこれに属する。第2に

    は, 摸そのものはあまり変化しないが,内部金属が位

    される現象,たとえばコイル 面の絶縁ワニスは全然

    化しないのにl畑≠の銅線がはされて育錆を生成し,極端

    な場合は断線するようなことである。この現象はその塗

    膜に対する薬品の捗透性とLて解釈できる。

    老らほ本研究を始めるに当り,.【二述の二点を同時に

    解明しなければ耐薬品性を究明できないと考え,それに

    対する研究力法を考察した。第1の塗摸そのものに対す

    る共晶の影響としてまず化学反応を考え,その組成上の

    化は鋭敏に電気的職能に現われるものとして絶縁破壊

    比(BDV)を測定した。このカ法は絶縁塗料の評価

    法にも通じるものと考えられる。第2の惨透速度に閲し

    てほ,多くの酸,アルカリによって容易に水 を発生す

    るアルミニウム板を基体とし,これに塗料を塗布,乾燥

    したものを薬液中に浸漬し,水 るまでの時間

    を測定し尺度とした。硝酸の場合はアルミニウムではガ

    スを発生しないのでブリキ板を使用した。

    2.薬品劣化による絶縁破壊電圧の変化

    2.1試験方法

    2.1.1試験月■の製作

    日東紡 株式会社製紙アルカリ脱油ガラス布(厚さ

    第1糞 便用ワニスの一般特性および試片の乾燥条件

    W

    W

    W

    W

    W

    25l O・90028■ 0.884

    250≦ 0.901

    2300: 0.907

    2800; 0.891

    フクルキッド ‡3(FT)

    アミナール 308

    W-

    10

    W - 1000

    BAD エナメル

    HS - 201

    ヒダフラン 302

    ⑳ 103

    ◎ 106

    1.007

    22.6

    14.4

    20.4

    24.5

    46.3

    51.9

    46.4

    41.9

    l20・1.43・8

    Lガーけ--Yi50・7

    …こ三3!芸喜:喜34.0 38.0

    0.040

    0.039

    0.047

    0.048

    0.037

    0.030

    0.039

    0.036

    日立製作所日立絶縁物工場 理博

    日立製作所日立絶縁物工場

    113

    118

    113

    119

    111

    120

    5

    5

    0

    5

    5

    3

    3

    3

    1

    ▲4

    1350C3.0

    室温 20

    2000C7分

    室温18

    良良良良良一良

    1300C 3〇 分

    130ロC 30 分1

    130qC 30 分

    1300C 30 分.

    1300C l時間■

    1300C 30 分:

    1300C l時間■

    8し-C l時間.

    1300C 30 分・

    2…∑:呂£時賢壷

    1…§……壬琵還し

    1300C 2時間

    1309C 2時間

    1300C 2時間

    1300C 2時間

    1300C 6時間

    130日C 2時間

    13〇OC 3時間

    80qC 5時間

    1300C 2時間

    800C 6時間

    2500C 2時間1300C 3時間

    809C 5時間

    800C 5時間

  • 864 昭和33年7月

    第2表 薬 液 濃 度

    度 (%)

    酸酸酸酸

    水酸化ナトリウム

    ~ア ン′ モ ニ

    食 塩

    ♂ 〝 ガ

    〔ご

    掛」}炭岬紬

    1_0

    2こ〉

    10

    10

    1

    iO

    5

    く財♂

    へご梯¥騨ゝq喩

    20

    3〔〉

    2〔)

    30

    2

    20

    10

    放J濃度 r鳥)

    第1図 塩酸濃度と重量変化率の関係

    0

    0

    5

    3

    5

    3

    50

    3

    8

    0

    2

    2

    第2図 塩酸濃度とBDV変化率の関係

    0・1mm)を十分乾燥し,4回塗りで 0.25mm(10ミ

    ル)のガラスクロスに化ヒげた。基イl-iほ所要寸法の約

    2情の大いさを俣川-=ノ,仕上り後に中央部から130

    ×180mm(JISLC-2103,絶縁破壊試験≠の標準、ト法)

    を切り取った。実

    び試片製作の乾

    に仙川したワニスの一般性能およ

    条什を第1表に示す。

    2.1.2 試験方法

    弟2表に示す薬液を3g ビーカーに採り,30DCに

    調節Lた恒温槽巾に入れて液の況度を300Cに保つ,こ

    のビーカーの中に試験片を入れ72時間放置する。処

    理時間中薬液濃度の変化を防ぐためビーカー上部ほポ

    表し甘]、闘矧鼎

    へ聖

    母ゼ髄融嘲

    第40巻 第7 号

    埠ul■リ′j貞 度(鋸

    第3図 硫酸濃度と重量変化率の関係

    tガ ガ 〃 ♂

    仏玖凛度「方)

    〟 ガ j♂

    第4図 硫酸濃度とBDV変化率の関係

    ■ ∴I-

    」リー月㈲

    アミナールガJ′rβ、ヲ

    l∴l

    凡トガ/

    第5図 硝酸濃度と重量変化率の関係

    汐 ~~~~~万

    第6図 硝酸濃度とBDV変化率の関係

    リエチレンフイルムで包み,できるだけ空気の流通を

    断した。72時間後,試験片を写真水洗用バットに

    とり,流水で1時間水洗後1000Cで1時間乾燥した。

    ただし1V---10,⑳103,⑱106の3種は600Cで1時

  • 絶 縁 の 耐 性865

    二空

    耳]、壌ゝへ司

    へ拾〕

    甘]†観相榊

    第7図 酢酸濃度とBDV変化率の関係

    ′他伽/濃度(%)

    第8図 水酸化ナトリウム濃度と重量変化率の関係

    (望祐]†髄≧句

    J J

    〟ムβ〟濃 皮(%)

    第9図 水酸化ナトリウム濃度とBDV変化率の関係

    間乾燥して皮膜の硬化を防いだ。乾 ずみの 験片ほ

    さらに塩化カルシウム入りデシケ一夕中に貯蔵し,2

    週間後に厚さ,垂簾,BDVを測定して処理前のこれ

    らの値と比較し,変化率を求めた。

    2.2 試験結果

    かくして得られた :量,BDVの変化 を第1~12図

    に示す。BDVは厚さを測定した簡処で測定い笹位博さ

    当りに換算した。結果は試験片2枚の平均値で,測定値

    中不確実なものはトムプソソ棄却法で検定したが,棄却

    すべき数値はほとんどなかった。なお浸漬前のワニスガ

    ラスクロスの矧吐を第3表に示す。

    へ択)

    掛]†観相酬

    Z♂ ガ ♂ Jク ガ ガ

    〟坊J肘濃度■r%J

    第10図 アン㌧モニヤ水の濃度と重量変化率の関係

    (ゞ)

    阿]T鮮竜喝

    ガ ~♂ β 〟

    〟仏β〟濃窟(%〉

    第11図 アンモニヤ水の濃度とBDV変化率の関係

    (軍)掛]-快さ竃

    J 〝 、、

    ル佑=監度.㍉1

    第12回 食塩水濃度とBDV変化率の関係

    第3表 浸潰前のワニスガラスクロスの特性

    処理 ワ ニ ス

    W

    W

    W

    W

    W

    25

    28

    250

    2300

    2800

    F T # 3

    アミナール308

    W - 10

    W - 1000

    BADコニナメル

    ‖ S - 201

    ヒタフラン 3〔〉2

    ㊧ 103

    ⑯ 106

    厚さ(mm)

    0.254

    0.258

    0.253

    0.258

    0.258

    0.247

    0.257

    0.253

    0.236

    0.236

    0.266

    0.264

    0.253

    0.250

    重 量(g)

    5.2297

    5.2506

    5.1912

    5.2288

    5.5940

    5.6381

    6.0795

    5.1228

    5.18()3

    5.0711

    6.3214

    6.4769

    5.4438

    6.0227

    B D V

    (kV/10mil)

    15.18

    12.94

    14.55

    16.24

    14.42

    12.08

    11.92

    13.00

    12.63

    9.03

    13.70

    17.10

    9.95

  • 866 昭和33年7月 日 立

    3・塗膜の薬品透過性

    3・1試験方法

    試験の目的が薬品の透過によって内部金属が侵される

    現象を判定することにあるので,要ほ 膜を透過する

    品の速度を知ればよいわけである。透過速度の測定法に

    は電流回路法(イオン伝導により溶液と金属間に回路を

    つくる)などもあり,時間法,絶縁抵抗法(1)などが考え

    られる○しかし筆者らほアルミニウム,錫などが容易に

    酸,アルカリと反応してガスを発生することに着目し,

    これらの金属板上に 膜をつくり,薬品に浸漬し,ガス

    が発生するまでの時間を測定した。

    3・1・1試験片の製作

    塩酸,硫酸,水酸化ナトリウム用にほ0.25mmア

    ルミニウム板・硝酸にはブリキ板を使用し,まず磨き

    粉および弁柄でよく磨いて表面の酸化物皮膜を除去

    し・ガス発生を容易にする。磨き終ったものほよく溶

    剤で洗いただちにワニスを塗布する。ワニスは2回

    りで0・01mmの塗膜を得るように粘度を調整してお

    く0これほ1回塗りでほピンホールの危険があり,結

    果にばらつきが多くなるのを防ぐためである。使用し

    たワニスおよび乾燥条件を弟4表に示す。

    このようにして両面に 0.01皿mずつの 膜をつけ

    た板を30×30mmに切り,弟13図のようにK-12

    コンパウンドで周囲を厚日にシールしてガラス板上に

    立てたものを 験片とした。

    3・1.2 試 験 法

    弟5表に示す薬液250ccを300ccビーカー中にと

    り,所定温度の恒温槽に入れる。液温が→定になって

    から 験片を入れ,塗膜面から水素そのはかのガスが

    発生するまでの時間を測定して透過速度・・・とした。測定

    中ほ表面をポリエチレンフィルムで包み濃度の変化を

    第4表

    ワ ニ ス の 種類

    W

    W

    W

    W

    W

    W

    25

    28

    230

    250

    2300

    2800

    フクルキッド■ # 3

    ア ミ ナー

    ル308

    W 【 10

    W - 1000

    BAD エナメ ル

    H S - 201

    ヒタフラン 302

    ヒタフラン 306

    ㊧ 103

    ⑱ 106

    ワニスの加熱処理時間

    第 1 回

    1300C - 30 分

    1300C Ⅶ 30 分

    1050C ¶ 30 分

    1300C - 30 分

    1300C ~ 30 分

    130qC - 2時間

    130ロC Ⅶ 30 分

    130ロC-1時間

    800C -1時間1300C - 30 分

    800C-1時間

    2000C-1時間

    1300C-1時間

    1300C→1時間

    800C-1時間

    800C-1時間

    2 回

    2時間-

    2時間-

    1時間

    1300C -- 2時間

    130勺C - 2時間

    1300C - 6時間

    1300C - 2時間

    1300C - 3時間

    80勺C - 5時間

    130ロC-・2時間

    800C - 5時間

    2500C - 2時間

    130ワC - 3時間

    1300C - 3時間

    800C h 5時間

    800C - 5時間

    水酸

    第40 第7号

    第13図 試 験 片

    第5表 薬酸醸酸

    ムウリ▼トナしL

    10

    20

    10

    1

    濃 度

    濃 度 (%)

    20

    30

    20

    2

    避けたしガスの発生状態ほ皮膜強度や共晶の種類によ

    って一様でなく,必ずしもいつせいにガスが発生する

    ものとは限らない。そのような場合でも 面に変色,

    斑点などを生じ,薬品の影響が明らかに表われるから

    判定を誤ることはない。

    この 験は比較的再現性があるが,なお万全を期し

    て同一条件で5回測定を行いその平均値を分単位で表

    わした。

    3.2 試験結果

    温度を一定(300C)にし各薬液の濃度を変えた場合の

    果を第14・、17図に,また薬液の濃度を一定にし温度

    を変えた場合の結果を弟18、20図にホす。

    へミミ距盤唱慣

    祁〟

    ♂ノ甘

    辟/漂 度〔%)

    第14図 塩酸が塗挨を透過する速度

    (min/0.01mm別皿)(濃度の影響)

  • 気 絶 線 塗 料 の 耐 薬

    ;卜∴、

    iト、、、-.-

    867

    (モl詰)距扁≡盟嘲

    (≡こ

    預蒜逼遍

    (ミミ

    誕仲n廻璧

    l∫ ‥一 十 β ガ 〟

    佑∫亀 濃度(%)

    第15図 硫酸が倒莫を透過する速度

    (min/0.01mm別m)(濃度の;i杉響)

    ♂ ガ 〟、

    朋鴨濃度(%)

    第16図 硝酸が塗膜を透過する速度

    (皿in/0.01mm丘1m)(濃度の影響)

    第17図 水酸化ナトリウムが塗膜を透過する速

    度(皿in/0.01Ⅱ川n f汁m)(濃度の影響)

    却■+∬■J財

    度 rr)

    (ミミ

    誕仲血廻禦

    第18図 塩酸が塗膜を透過する速度

    (min/0.01mm丘1m)

    へミさ

    臣仲皿讐禦

    (温度の影響)

    ∴ ・.

    ∴l

    度〔?)

    第19図 硫酸が塗膜を透過する速度

    (min/0.01mm fⅢ正

    (ミき

    唱L監讐禦

    (温度の影響)

    ~β J♂ 邸 〟 ♂♂

    温 度 (rJ

    第20図 水酸化ナトリウムが塗隠を透過する速

    度(min/0.01m皿五1m)(温度の影響)

  • 868 昭和33年7月 日 立 評

    4・試験結果の茸察

    4.1塗膜の薬品による劣化

    (1)塩酸による変化:ヒタフラン,W、-10などの

    例外を除いて,ほとんど重量増加を示している。若干

    の測定誤差ほあるが大体において酸濃

    し,20~30%の問で大きく

    とともに増大

    化している。

    BDVの変化ほ鋭敏に現われ,再現性もよい。変化

    の少ないものほフタルキッド,W-2800,W¶1000,

    アミナール,W-25,W-2300,W--28,ヒタフラ

    ンなどである。しかし,フタルキッドを除けばこれら

    のものも30%HCIになると急激に射ヒする。耐塩酸

    惟の掛こ悪いものはWqlO,BAD,HS-201であ

    る。シリコーンが重量変化,外観,BDVとも非常に

    劣化がはげしいことほ予想外であった。ヒタフランは

    外観は全然変化していないがBDVは大きく変化して

    いるから,20%以上のHClについては使用上十分注

    意する必要がある。W--10,BAD,103,106のよ

    のは,耐水性の不足も加わって大

    体よくない。

    (2)硫酸による変化:塩酸に比べ硫酸の影響ほ重量

    変化,BDVともに少ない。特に耐硫酸性のよいもの

    はヒタフラン,W-25,W-250,フタルキッド,ア

    ミナールなどで,惑いものはBAD,HS-201,W一一10,

    Ⅵトー1000などである。

    (3)硝酸による変化:硝酸は塩酸同様にかなり激し

    く作用する。濃度20%くらいならW-25,W-250,

    W一一1000,ブタルキッド,アミナール,W-28,

    HS-201,W-2800,W-2300,BADなどは使用

    可能であるが,30%になると急激に劣化しW¶2300,

    W【2800以外は使用に耐えない。ヒタフランは硝酸

    第6表 塗 料 の

    耐塩酸性

    BDV低下

    W 仙 25

    W 【 28

    W - 230

    W - 250

    W - 2300

    W 【 2800

    ブタルキγド #3

    ア ミ ナール 308

    W ~ 10

    W ¶ 1000

    BAD エナメ ル

    HS n 201

    ヒタフラ ン 302

    ヒタフラ ン 306

    ⑳ 103

    ⑳ 106

    O

    C一〇〇〇〇〇×

    ×

    ×

    耐透過性

    (⊃

    ■\

    〉く

    ×

    ×

    ×

    ×

    C)

    〔〕

    ×

    BDV低下

    ⊂)

    ×

    ⊂)

    ×

    ×

    第40巻 第7号

    のような酸化性のものにはきわめて弱い。

    (4)酢酸による変化:有機酸の代 として酢酸を

    んだが弟7図にみるように鉱酸に比べて影響は著しく

    少ない。しかし浸漬巾ほ

    ら,実

    膜が相当軟化しているか

    使f11に際してほ注意する必要がある。軟化の

    少ないものほHS、201,ヒタフラン,103で著Lいも

    のはW-10であった。

    (5)水酸化ナトリウムによる変化:予備突放によ

    り NaOHの影響が著しいことを知ったので低 度の

    ものを試薬とした。掛こ劣イヒの著しいものはW一一10,

    Wル1000,BAD,W-28,アミナール,フタルキ

    ッドなどで,優秀なものほ1V--25,ヒタフラン,

    Wt-2800,HS-201などである。103,106塗料は

    耐水性不良による低下だけでアルカリによる影響は少

    ない。

    しかし一般に耐アルカリ性ほ不良である。

    (6)アンモニヤ水による変化:一般にアンモニヤ

    水による劣化は少ないが牛封こ W-25,ヒタフラン,

    W--2300∴W一一2800,HS--201などほ影響が少ない。

    ただしフタルキッド,106ほ影響がやや大きい。

    (7)食塩水をこよる変化:酸,アルカリに比べれば薬

    品の作用としては微々たるもので,重量変化などでは

    比較できない。BDVでは若干の差があり,濃度10%

    前後に低下率最大のものがある。しかし一般にBAD,

    W-10など自然乾燥性のもの以外は使用可能である。

    W仙1000は自然乾燥性でも食塩水では影響されな

    い。

    4.2 塗膜の薬品透過性

    (1)塩酸:塩酸の透過性ほほかの酸やアルカリに比

    較して大きく,どの塗膜でも1時間以内に明瞭に判定

    できるほど水素を発生した。これほ塗膜自体の劣イヒの

    耐 薬

    耐透過性

    耐硝 酸性

    BDV低下芦耐透過性

    ○◎◎00

    ⊂〕

    耐水酸化ナトリウム性

    BDV低下

    耐透過性

    ×

    ・ヽ

    ×

    耐アンそ

    ニヤ性

    BDV低下

    ◎◎◎

    ×

    00△△◎◎一一一

  • 電 気 絶 縁 料 の 耐一薬

    品 性 869

    場合にもいい得ることであるが,BDVの変化と透

    過性ほ必ずしも同一傾向にはない。たとえばBDVの

    変化率が最も少なかったフタルキッドが透過性では非

    常に悪く出ている。試験の範囲で優秀なものほW一

    230,ヒタフラン 306,W-28などで,BDVの 化

    の大きかったHS-201はかなり良い結果を示してい

    る。

    (2)硫酸:硫酸の影響はBDVの変化においても

    著しくなかったが,透過性でも比較的ゆるやかであつ

    た。

    (3)硝酸:硝酸は塩酸につぐ透過性を示している。

    しかしほかの酸と異なり速いものとおそいものとがあ

    り,またある場合にほ

    度による差が大きい。BDV

    化の大きかったヒタフランは透過性の点でほ非常

    にすぐれ,そのほかW-230が好成績を示した。こ

    れ以外は大同小異で W-25,W-28,FT♯3が若干

    良好な程度である。

    (4)水酸化ナトリウム:この場合ほ鯵透だけでなく

    化学変化が認められ,Wl-10ほ容易に溶解した。そ

    のはかのものも溶解の傾向にあったが,透過の方がや

    や早く進むので辛うじて測定できた。掛こ成績の悪い

    ものほフタルキッド,柚性系ワニスで,良好なものは

    W-25,W¶-230,ヒタフラン,シリコーンなどであ

    る。

    以上の結果を総合して表にまとめると葬る表のように

    なる。

    5,耐薬品性塗装案

    以上の結果から,絶縁塗料の耐薬品性は緒言にも

    たように. 膜自体の変化と同時に薬品透過性の遮 を

    知る必要のあることが明らかとなった。たとえば,フタ

    ルキッドのごときは本体の変化ほ少ないが薬品透過は速

    い。このようなものほ内部まで含浸することは好ましく

    ない。しかし逆に本体の 化ほ少ないから最外層などに

    塗装すると,塗装の軟化,剥れなどを防止できて好都介

    である。このように 料の相性によって使い分けること

    が必要となる。もちろん本体の変化も少なく,透過性に

    もすぐれたものであれば問題はない。以上の点を考え,

    装法として次のような案を推奨する。

    5.1耐塩酸性塗装

    コイル含浸はサーモセットワニス,W 230,W-28

    などによって行い,外郡 ラン系を使用する

    ことがよい。しかしヒタフランほ崇色に近いから,ほか

    の色相を望む場斜こほW-1000をベヒクルとした仕上

    料を考腐 すればよい。W-1000は透過されやすいが

    本体の変化が少ないから 膜の軟化,剥れがなく,仕上

    塗料として好適と考えられる。

    5.2 耐硫酸性塗装

    硫酸の作川ほ比較的ゆるやかであり,大多数の

    で処理できる。最高の性能を期待するには W-230,

    W-2300 などで含浸し,仕上 料にヒタフランを使用

    すればよい。透過性実放でW【10,W-1000も好成績

    を示しているから,これらの採用も考えられる。

    5.3 耐硝酸性塗装

    この場合はW--230およびW-250の含浸が推奨さ

    れる。仕上げ塗料には透過性実験ではヒタフランが最高

    であったが,長時間接触すると侵されるからこのような

    酸化性酸の場合は避けるべきで,透過性ではやや劣るが

    W一一1000などが無難であろう。

    5.4 耐アルカリ性塗装

    アルカリに対してほ油性ワニス系では完全なものはな

    い。比較的良好なものとしては W】25,W-230およ

    びサーモセットワニスなどが考えられ,仕上塗料として

    は第一にヒタフラン,次に103,106 料である。

    5.5一般的耐薬品性塗装

    作用の異なる各種塗装法を一本にまとめることは困難

    であるが,耐酸,耐アルカリ絶縁法として若干性能ほ低

    下しても単独法が好ましい。その観点から共通点を探す

    と次のようになる。

    まずコイルワニスとしてほW-230がその日的に適

    合しており,仕上ワニスとしてはヒタフランである。た

    だし硝酸のような酸化性酸の場合および着色の必要な場

    合はW-1000が好ましい。

    6.結

    絶縁塗料の耐薬品性の考究には,

    膜本質の劣化と同

    時に薬品の透過性について知る必要を感じ,その両者に

    ついて比較実験を行った。その結果塗膜本質は変化しな

    い,すなわち外見上に変化ほなくても薬品の診透しやす

    いもの,あるいは反対に本体の変化ほ早いが診透のおそ

    いものなどがあることを明らかにした。そこでこれらの

    結果を総合して耐薬品 装法を提案した。

    しかし,以上の研究は現在の 料を使用した場合

    うる最高性能を求めての比較実験で,今後は本結果を基

    礎にし,新しい耐 t 料の開発に努力する考えであ

    る。

    終りに,本実験ほ日立製作所作業委員会の指示によつ

    て行ったもので,各委員の御指導を得たことを感謝す

    る。なお熱心に実験に協力された堀辺君にも

    たい。