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途上国におけるICTの浸透 第2節
第2節 途上国におけるICTの浸透このようにICTは広く世界に浸透しつつあるが、その流れは、途上国でも広く見られる。途上国住民100人
あたりのインターネットユーザー数及び携帯電話契約数は2005年にはそれぞれ7.8人、22.9契約だったが、2014年には32.4人、90.2契約と大きく増加している(図表1-2-1-1、図表1-2-1-2)。
携帯電話及びスマートフォンの出荷台数の年平均成長率を見ると、ともに中国、インド等の伸びが相対的に目立つ(図表1-2-1-3)。また、携帯電話加入者数でみても同様の傾向が窺える(図表1-2-1-4)。
これは、SamsungやHuawei、ZTEといった低価格帯のスマホにも強みを持つグローバル企業に加え、中国のXiaomi(小米)、インドのMicromax、後述のアフリカのMi-Foneといった自らの地域を主たる市場とし、さらにはグローバル市場への展開を窺う企業が存在感を高めていること、また中古端末の流通も大きな要因である。
中国では、携帯電話加入者が12億を超え、人口普及率が約90%になっているが、スマートフォンの方がフィーチャーフォンよりも圧倒的に売れている。
中国調査会社易観智庫が発表した「2013年第4四半期(10-12月)中国携帯電話市
図表1-2-1-1 住民100人あたりのインターネットユーザー数
50.950.9
78.378.3
7.87.8
32.432.415.815.8
40.440.4
0102030405060708090100(人)
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014**推計
(年)
先進国 途上国 世界
(出典)ITU「Global numbers of individuals using the Internet, total and per 100 inhabitants, 2001-2014」
図表1-2-1-2 住民100人あたりの携帯電話契約数
020406080
100120140
(契約)
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014*
82.1 82.1
120.8 120.8
22.9 22.9
90.2 90.2
33.9 33.9
95.5 95.5
*推計(年)
先進国 途上国 世界
(出典)ITU「Global numbers of individuals using the Internet, total and per 100 inhabitants, 2001-2014」
図表1-2-1-3 各国・地域の携帯電話及びスマートフォン販売数の伸び
【年平均成長率 2008-2013(スマートフォン)】
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20中国中国
インドインド韓国韓国
その他のアジア太平洋諸国その他のアジア太平洋諸国その他の東ヨーロッパ諸国その他の東ヨーロッパ諸国
ロシアロシアブラジルブラジルメキシコメキシコ
その他のラテンアメリカ諸国その他のラテンアメリカ諸国その他の中東、アフリカ諸国その他の中東、アフリカ諸国
南アフリカ南アフリカカナダカナダ米国米国
フランスフランスドイツドイツ
イタリアイタリアその他の西ヨーロッパ諸国その他の西ヨーロッパ諸国
スペインスペイン英国英国日本日本
【年平均成長率 2008-2013(携帯電話全体)】
0 50 100 150 200 250 300 350 400中国
インドその他のアジア・太平洋諸国
ロシアその他の東ヨーロッパ諸国
ブラジルメキシコ
その他のラテンアメリカ諸国その他の中東とアフリカ諸国
カナダ米国
フランスドイツ
イタリアスペイン英国
その他の西ヨーロッパ諸国日本
(%) (%)※ここに述べられたGartnerのレポートは、Gartnerにより発行されたデータ、リサーチ・オピニオン又は視点を表すものです。Gartnerの各レポートは、出典に記載されたレポート発行
時点における見解であり、その内容は事前の予告なしに変更されることがあります(以下、同社出典の図表は同様)。(出典)Gartner「Market Share: Mobile Phones by Region and Country, 4Q13 and 2013, Anshul Gupta 他共著(2014/2/12)」より総務省作成
図表1-2-1-4 各国の携帯電話加入者数及び人口普及率
90.7%90.7%71.6%71.6%
99.3%99.3%126.9%126.9%
137.4%137.4%
198.0%198.0%
135.3%135.3%110.8%110.8%
73.2%73.2%
73.2%73.2%
137.4%137.4%
111.4%111.4%92.1%92.1%
75.0%75.0%
134.3%134.3%
118.2%118.2%
150.8%150.8%143.0%143.0%
136.5%136.5%
91.5%91.5%
0
50
100
150
200
250(%)
0
2
4
6
8
10
12
14
中国
インド米国
インドネシア
ブラジル
ロシア
ベトナム日本
パキスタン
ナイジェリア
ドイツ
フィリピン
メキシコ
バングラディッシュ
イラン
エジプト
イタリアタイ英国
トルコ
(億)
携帯電話加入者数 普及率
(出典)Telegeography 2013年12月を元に作成
地球的規模で浸透するICT
第1章
平成26年版 情報通信白書 5
第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
場監測報告」*1によれば、同期間中の携帯電話端末(密輸入品や模倣品を除く)の販売台数は1億683万台だった。うち、スマートフォンは9,763万台で、携帯電話の販売台数全体に占めるスマートフォンの割合は91.3%に達した(図表1-2-1-5)。
中国市場におけるメーカー別の携帯電話全体の出荷シェアを見てみると、Samsung(韓国)が1位であり、それ以外に外資系ではApple(米国)、Nokia(フィンランド)がランクインしているものの、シェアは5%以下に留まる*2。
一方で、Samsung(韓国)以外で上位に名前を連ねているのは中国資本のメーカーである。HuaweiやZTE等は中国以外の市場でも販売をしており、グローバル企業に成長しているが、これら以外にも国内で急速にシェアを拡大している新興企業が存在する(図表1-2-1-6)。
その一例として挙げられるXiaomiは、2010年4月に設立された企業で、2011年9月に端末を販売開始している。まだ同社の端末は市場に登場して3年経っていないが、自社サイトでの販売、SNSの活用でコストを抑える戦略をとっており、800(約12,800円)~2,000元(約32,000円)*3という低価格なスマートフォンでSamsungやAppleといったグローバルブランドの端末に対抗し、顧客を増やして販売を拡大してきている。
また、インドではSamsungに次ぐ出荷台数を誇る携帯電話メーカーMicromaxは、2000年にソフトウェア会社として設立され、インド全土10万以上の場所で販売されている。加えてiPhoneの「Siri」に対抗した音声エージェント「Aisha」を開発するなどソフトウェアの開発やR&Dにも注力している(図表1-2-1-7)。
同社の端末は、2013年において年間2,500万台が出荷、販売されているが、2014年には2倍の約5,000万台の出荷、販売を目指しており、周辺のスリランカ、ネパール、バングラデシュでも携帯電話売上トップ3に入っている。
一方で、途上国では、スマートフォンの利用に当たって、3GやLTEが普及していない地域が多くプリペイド方式が主流であるが、追加的な通信費用を抑えるため、Wi-Fiが無料または安価で利用可能な場所へ行き利用することが多い。このため、スマートフォンの普及に伴って、公共施設や公共交通、店舗等でWi-Fiの整備も進められている(図表1-2-1-8、図表1-2-1-9)。
*1 http://www.eguan.jp/2014/03/14/13q4mobilese.html*2 http://www.enfodesk.com/SMinisite/newinfo/articledetail-id-402769.html*3 1元=16円で算出
図表1-2-1-6 中国における2013年第4四半期での携帯電話のメーカー別出荷シェア
Samsung(韓国)16.8%
Samsung(韓国)16.8%
Lenovo(中国)11.2%
Huawei(中国)8.9%
Xiaomi(中国)5.8%
Coolpad(中国)8.7%
ZTE(中国)3.9%
OPPO(中国)3.5%
Nokia(フィンランド)
2.9%
金立(中国)3.3%
その他30.7%その他30.7%
Apple(米国)4.4%
(出典)易観智庫をもとに作成
図表1-2-1-5 中国におけるスマートフォン/フィーチャーフォンの販売台数推移
スマートフォン フィーチャーフォン
5,1004,660 4,180 3,600
1,4602,830 1,630 1,530 1,330 960 920
1,680 2,220 2,600 3,120
4,9203,820 5,690
7,530 7,7109,310 9,760
6,780 6,880 6,780 6,720 6,380 6,6507,320
9,060 9,04010,270
10,680
0
2,000
4,000
2011年Q2
2011年Q3
2011年Q4
2012年Q1
2012年Q2
2012年Q3
2012年Q4
2013年Q1
2013年Q2
2013年Q3
2013年Q4
6,000
8,000
10,000
12,000(万台)
(出典)易観智庫をもとに作成
図表1-2-1-7 2013年第4四半期のインド市場での携帯電話全体の出荷メーカー別シェア
Samsung(韓国)19%
Samsung(韓国)19%
Micromax(インド)13%
Karbonn(インド)10%
Nokia(フィンランド)12%
合計:6,783万台
Lava(インド)6%
その他40%
(出典)IDC発表資料をもとに作成
第1章
地球的規模で浸透するICT
平成26年版 情報通信白書6
途上国におけるICTの浸透 第2節
これら、スマートフォンやWi-Fiの普及を背景として、途上国でもスマートフォンで利用するSNSやメッセンジャーアプリの活用も進みつつあり、人々の生活の中の一部となりつつある*4(図表1-2-1-10)。
さらに、低開発地域を多く抱えるアフリカにおいても、携帯電話は普及を続けており、GSMAの推計*5によると、2015年時点で人口普及率は84.9%、加入者は9億人を超えると見込まれている(図表1-2-1-11、図表1-2-1-12)。
また、スマートフォンも急速に普及しており、2013年9月にInforma Telecoms and Mediaが発表した調査*6によると、2013年末時点でのアフリカでの携帯電話加入者のうち、約7%がスマートフォンであり、普及の要因として70~100ドル程度のローエンド端末の登場による低価格化が進んでいることもあげている。IDCの調査*7においてもアフリカのスマートフォン出荷台数は、2013年第2四半期には前年比21.5%増加し、携帯電話出荷台数の18%程度となる等、スマートフォンはこれからも大きく伸びる余地がある。
図表1-2-1-9 途上国におけるWi-Fi活用事例(ジャカルタ(インドネシア)のカフェ)
(出典)総務省「開発途上国におけるICT利活用の現況等に関する調査研究」(平成26年)
図表1-2-1-8 途上国におけるWi-Fi活用事例国
ケニア バス事業者と現地通信事業者Safaricomが提携して、乗り合いバス「Matatu」(マタトゥ)でWi-Fiの無料提供
インド デリー発の列車「Howrah Rajdhani Express」でWi-Fiサービスをトライアルで無料提供
インド カルナータカ州政府が州都バンガロールの2つのメインロードでWi-Fiの無料提供
タイAirports of Thailandと現地通信事業者Trueが提携して、1,400万ドルを投資してWi-Fiを導入、主要6空港で無料のWi-Fi提供
(出典)総務省「開発途上国におけるICT利活用の現況等に関する調査研究」(平成26年)
図表1-2-1-10 SNS利用者の国別人口普及率見込み2012 2013 2014 2015 2016 2017
ノルウェー 58.7% 63.3% 66.8% 69.2% 71.3% 73.1%
オランダ 59.0% 63.5% 65.6% 68.0% 69.7% 70.7%
スウェーデン 52.0% 56.4% 59.7% 61.9% 64.0% 65.7%
デンマーク 49.1% 53.4% 56.8% 59.8% 62.6% 64.4%
フィンランド 47.0% 51.3% 54.6% 57.5% 60.2% 62.5%
韓国 50.8% 54.4% 57.0% 59.0% 60.6% 62.0%
オーストラリア 45.9% 49.1% 52.3% 55.6% 58.9% 61.4%
米国 50.1% 51.7% 53.1% 54.4% 55.4% 56.3%
カナダ 49.3% 51.2% 53.0% 54.0% 55.0% 55.9%
英国 47.7% 50.2% 52.6% 53.9% 55.0% 55.6%
ロシア 38.1% 42.4% 46.0% 48.6% 50.8% 52.7%
アルゼンチン 37.0% 40.9% 44.5% 47.9% 49.4% 50.9%
ドイツ 36.7% 40.8% 43.7% 46.1% 48.1% 49.8%
メキシコ 25.6% 30.6% 35.2% 39.2% 42.9% 46.5%
スペイン 34.1% 37.1% 39.6% 41.7% 43.9% 45.4%
フランス 36.5% 38.5% 40.5% 42.5% 43.7% 44.9%
日本 35.4% 37.8% 40.1% 41.5% 42.9% 44.1%
ブラジル 30.9% 34.5% 37.7% 40.1% 42.5% 44.0%
インドネシア 21.0% 26.8% 31.3% 34.9% 38.6% 42.2%
イタリア 32.0% 34.4% 36.9% 38.1% 39.6% 40.4%
中国 22.9% 25.8% 28.1% 30.2% 32.3% 34.5%
インド 5.7% 7.7% 10.5% 12.7% 15.1% 17.2%
全世界 20.1% 22.7% 25.3% 27.4% 29.6% 31.5%
(出典)eMarketer
*4 GoogleやFacebook等が途上国で地域の通信事業者と連携し、無料のデータ通信を利用して、メールやSNSを活用できるサービスも展開しており、普及の一助となっている。
*5 http://www.gsma.com/publicpolicy/wp-content/uploads/2012/04/africamobileobservatory2011-1.pdf*6 http://mail.informatm.com/files/amf_informa_plc/project_719/Mobile_Broadband_in_Africa_final_presentation_NEW.pdf*7 http://idc-cema.com/eng/about-idc/press-center/54927-smartphone-uptake-gaining-pace-in-africa-as-idc-tips-shipments-to-double-
over-next-four-years
図表1-2-1-11 アフリカ携帯電話加入者数の推移と普及率
加入者数 普及率
1,700 2,600 3,700 5,3008,300 13,600
20,100 28,30037,900 45,800
55,20062,000 73,500
80,400 86,00090,600
2.1% 3.1% 4.4% 6.2% 9.5%15.3%
22.2%30.6%
40.2%
47.8%56.5%
62.6%72.6%
78.1%82.1% 84.9%
0
10
20
30
40
50
60
70
80
(%)90
(万人)
0
10,00020,00030,00040,00050,00060,00070,00080,00090,000100,000
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012F 2013F 2014F 2015F※Fは予想
(出典)GSMA
地球的規模で浸透するICT
第1章
平成26年版 情報通信白書 7
第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
アフリカ市場では、Samsungの他、HuaweiやZTEといった中国系グローバルメーカーがネットワーク基地局から端末、コンテンツまで提供しているが、一方で、アフリカ市場に特化した中国系企業や地元資本の企業も台頭しつつある。
例えば、Tecnoは2006年7月に香港で設立された携帯電話メーカーで2008年からアフリカをメインターゲットとしており、エチオピア以外でもナイジェリア、ケニア、ガーナなどで事業展開しており、アフリカ市場において、ローエンドからハイエンドまでの端末を供給しており、アフリカではよく見かけるブランドになっている。
また、2008年4月に「アフリカ初の携帯電話メーカー」として設立されたMi-Fone(マイフォン)はアフリカ15カ国に販売店を持ち、アフリカの市場特性に合わせて2Gのみに対応した端末や、電力事情の悪さに配慮してバッテリー持続が60日間という端末のほか、Android OS搭載のスマートフォンも開発し、2013年4月までにアフリカ全土で150万台の端末を販売している。同社は2017年までに5億台の携帯電話出荷を掲げている
(図表1-2-1-13)。
図表1-2-1-12 アフリカ各国の携帯電話普及状況
加入者 普及率
0
20
40
60
80
100
120
(%)140
0
20
ナイジェリア エジプト 南アフリカ モロッコ アルジェリア ケニア スーダン コンゴ民主共和国
ガーナ エチオピア
40
60
80
100
120
(百万)140
75.2%
118.2% 138.0%128.1% 106.5%
73.5%82.7%
36.9%
109.6%
29.5%
(出典)Telegeography 2013年12月を元に作成
図表1-2-1-13 代表的なアフリカ資本の携帯電話メーカーメーカー名 本社のある国 概要
1 Katron エジプト2013年5月にエジプト初のタブレット「Inar」が国家プロジェクトとして開発され、1964年設立の老舗国営企業Katron社によって1日に300台製造されている。すでにエジプトの学生らに配布され、2,000万台の出荷を見込んでおり、同端末は1,555EGP(約22,000円)で販売されている。今後はエジプト国内のみならず湾岸諸国への展開も検討している。
2 Evertek チュニジア2008年にチュニジアで設立され、2010年までにチュニジア市場で10%のシェアを獲得している。同国以外にもモロッコなど北アフリカやフランスで販売しており、1つの端末に2枚のSIMカードを挿入できるデュアルSIM対応携帯電話を多数販売している。また、「EVERPAD」というタブレットも販売している。
3 VMK コンゴ共和国コンゴ共和国のベンチャー企業で、2012年1月にAndroid OS搭載のタブレット「Way-C」が300ドルで発売された。「Way-C」はコンゴ共和国で設計され、組み立ては中国のメーカーが行っており、開発は2006年から着手され、同社が8,000万CFAフラン(約122,000ユーロ)投資。
4 Pliris Mobile ナイジェリアナイジェリアで2011年12月に設立され、Android OSを搭載したスマートフォン「Pliris BlazeX」を販売。同端末はナイジェリア初の「デュアルSIM対応」で、39,500NGN(約35,000円)とナイジェリアにおいては特にハイエンド端末に該当する。
5 Mi-Fone モーリシャス2008年4月に設立。アフリカ15カ国にストアがあり、2013年4月までにアフリカ全土で150万台の端末を販売している。またナイジェリアに3,000万ドルを投資して工場を建設することを明らかにしており、アフリカの市場特性に合わせて2Gのみに対応した端末も販売している。ローエンド端末は50ドル程度から販売されているほか、Android OS搭載のスマートフォンもリリースしており、約100~300ドルである。
6 SOLO ナイジェリア ナイジェリアでスマートフォンをキャリアショップ、オンラインストアで販売している。端末販売のほかに音楽配信なども行っている。
7 M-TECH ザンビア 2007年に設立されたザンビアの携帯電話メーカー。フィーチャーフォンの製造、販売を行っている。2009年3月に1,000万ドルを投資してルサカに携帯電話工場を設立。
(出典)総務省「開発途上国におけるICT利活用の現況等に関する調査研究」(平成26年)
第1章
地球的規模で浸透するICT
平成26年版 情報通信白書8